最新エアコンの除湿を知る・・・その1

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先日の提言11で説明したとおり除湿はこれからの主流です。しかし数年前から再熱除湿運転を採用しないメーカーが増えております。よって再熱除湿運転ではない最新の除湿運転を少し深く考えてみましょう。

最新の除湿運転を考える

今回は再熱除湿がないダイキンさんの最新除湿運転を少し説明します。

カタログどおりの部屋で使えば・・・

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ダイキンさんの2016年エアコンのカタログから抜粋

一昨年の機種から見るとよくなりました。以前は冷房運転で設定温度後20cc/hの除湿量だったのですが、新機種は110cc/hとあります。この数値と条件から考えると

  • 14帖=気積55.6m3→27.8m3の換気
  • 27.8m3の換気で外気70%を室内RH60%まで下げるための除湿量135cc/h
  • 上のことで外気29度RH70%は条件としてきついので110cc/h取れればOK

つまり14帖の部屋に14畳用のこのエアコンがあれば換気による潜熱負荷分となります。そして人の潜熱負荷分は全熱交換換気扇を使えば相殺されOKでしょう。

カタログ以外の使い方ではNG

最近の家は断熱性能があがり、特に日射遮蔽性能をあげた家(「緑の家」のような家)は、エアコン14畳1台があれば家まるごとを25~26度くらいを簡単に24時間維持します。従って14畳エアコン1台で済ませようとするわけですが、ここに大きな問題があります。メーカーさんは再熱でなくとも新しい除湿方式なら快適だ!との説明があります。しかしそれはメーカーさんが推奨する部屋の大きさでエアコンを使った時の事です。

家中空調の換気負荷は

  • 24時間換気の量を150m3/hとすると上条件の湿気流入量は730cc/h
  • つまり110cc分の6倍以上。仮に倍の負荷運転で220cc/hとれても3倍以上。

ですので新しい除湿方式ではRH60%を維持する事は大変難しい事になります。

エアコンでの除湿は必ず冷える

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ご存じ 湿り線図から空気を考える。 27度RH60%の空気の温度を下げるだけではSHFが0.55以下にはならない。つまり夜間の潜熱負荷が大きいときにはSHF0.3位が必要だが結露型除湿では無理。

上の条件(外気29度RH70%を室内27度RH60%まで下げる)でエアコンは何をしなければならないか?

  • 結露させて空気中から水分をとる。
  • 27度の露点温度は19度以下
  • 19度以下でないと除湿不可

エアコンでの除湿はデシカント除湿とは違い空気を冷えた部分に接触させて結露させる訳ですから必ず室内空気が冷えます。そのため室温を下げるので寒くて不快となります。これは最近の新しい除湿方法でも同じで、熱を加えなければ必ず室温が下がります。最近の除湿は冷たい吹き出し風に室内空気を混ぜたり、ショートサーキット方式で冷風が拡がる前に再び吸込むことで人に冷風を当てない工夫をしておりますが、部屋の室温が下がることはまちがいありません。真夏はSHFが0.4くらいにならないと夜間の室温維持でRH60%以下は難しいと思いますが、まず室内空気条件でSHFが再熱除湿以外で0.55以下になることはありません。よって普通のエアコンの除湿運転だけでは室温が下がる事になります。

エアコンでの除湿には加熱が必要

上の湿り線図からエアコンで室内のRH(相対湿度)を60%以下に維持するにはSHFが0.5以下にしなければなりませんが、冷やすだけ(結露除湿)では無理と科学的にわかります。ですのでエアコンメーカーのいう「寒くなりにくい除湿」という表現を鵜呑みにしてはいけません。からならず「加熱」が必要です。それは人の体温でも家電の消費電力でも、日射の加熱でも構いません。必ずある程度顕熱がないと再熱除湿以外のエアコン除湿では温度が下がります。そもそも空調とは温度と湿度の制御ができてこそですが、冷房除湿では湿度の制御は出来ません。この事から決して再熱除湿と冷房除湿は同次元の空調方式ではないと見るべきです。

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コメント

  1. 水野 より:

    浅間様

    ご教授ありがとうございます。

    拙宅に設置されたスティーベルの反転型の全熱交換型換気システムでは、冬の内外温度差が25℃位まで拡大すると換気風量「中」では冷たい気流を感じた為、換気風量「弱」に変更しました。
    実際の生活では、音も結構気になるので夏もリビングダイニングの換気風量は「弱」のままです。12dB(A)まで下がると殆ど何も聞こえないのでリビングダイニングは換気風量「弱」(騒音12dB(A))となっています。。。(二酸化炭素濃度は1000ppmを超えています。。。)

    実質的な全熱交換型換気システムによる水蒸気の流入ですが、

    外気 温度29℃ 相対湿度70% 容積絶対湿度20.1g/m3
    室内 温度26℃ 相対湿度60% 容積絶対湿度14.6g/m3

    換気量(実質潜熱交換効率 77%(カタログ値)×0.8=61.6%)45m3/h 

    (20.1g/m3-14.6g/m3)×45m3/h×(1-0.616)=95.04g/h

    1時間あたり95.04gの水蒸気の流入がある

    という理解で合っているでしょうか?

    実質的な潜熱交換効率がカタログ値より落ちる要因というのは何でしょうか?

    • Asama より:

      建築士は公でものを申すときには法令に添った内容しか話せません。
      よって換気量は、
      「寒いからとか音がうるさいから」
      と言った理由で法令で定められた風量を変えることはできません・・・としか言えません。水野様宅の法令で定められた風量は確認申請図面に記載があります。

      一般的にその計算方法で問題ないと思います。

      実質落ちる理由は・・・カタログ表記の変換効率であるJISの測定時の温湿度は固定されているので、現実的には非定常の変換効率になり概ね下がることを考えて10~20%下げて安全側にします。

      http://www.nakaden.com/shoppu/kankisen/d/8/pdf/495.pdf

      上は風量(給気と排気のバランスで局所換気量や屋外の外風圧できまる)が変わった時。

      下は屋内外の空気質(温度と湿度)によって変る事をしめしております。

      http://www.nakaden.com/shoppu/kankisen/d/8/pdf/496.pdf

      この他に有効換気率の記載があればその数値も考慮します。国内メーカーであればこのような資料が手に入りますが、海外メーカーの場合はないと思われます。
      しかし特性はほぼ同じだと考えられるのでそのように申し上げました。また近年(2014年)はJISの全熱交換型換気扇の効率の測定方法が変ったので、少し表記はよくなっております。

  2. 水野 より:

    浅間様

    我が家にダイキンの14畳用エアコンがあり、勉強になります。

    外気 温度29℃ 相対湿度70% 容積絶対湿度20.1g/m3
    室内 温度26℃ 相対湿度60% 容積絶対湿度14.6g/m3

    換気量(潜熱交換効率0%)45m3/h 

    とした場合、

    (20.1g/m3-14.6g/m3)×45m3/h=247.5g/h

    1時間あたり247.5gの水蒸気の流入があるという理解で合ってますでしょうか?

    上の条件で潜熱交換効率が77%になると1時間あたり何gの水蒸気の流入がある事になるでしょうか?

    人体から供給される水蒸気量は1時間あたり何gと仮定されたりするのでしょうか?

    • Asama より:

      >1時間あたり247.5gの水蒸気の流入があるという理解

      OKです。しかし45m3/hは一般的(法律上の0.5回/h)に少なすぎます。通常は120m3/hから160m3/hになります。

      >潜熱交換効率が77%になると1時間あたり何gの水蒸気の流入

      単純に23%の潜熱負荷になりますが、換気扇の有効換気量や理想値でなく実質値となると2割くらい効率が落ちると考えたほうが良いです。

      >人体から供給される水蒸気量は1時間あたり何gと仮定されたりするのでしょうか?

      一般的な数値はこのページにあります。
      http://www.nationalkankisen.com/catalog/2012/pdf/654.pdf

      私はその他を考えて4から5人家族で12L/日(換気による負荷を除く)とします。