「て・こあ」でのある一日 弐百六拾弐  
夏のしつらえ

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「て・こあ」はこちら面がほぼ真南である。それでも簾は効果的に日射を防ぐ。真ん中の3つの簾は7年目。両端は今年新調したもので上は昨年取付けたもの。

当事務所が管理している「て・こあ」では7月8日に簾を設置した。
築102年の建物の古い建物であるが、この緑の木々によって趣があり素敵に見える。いつも申し上げているが、この「緑」が建物を魅力的に見せる・・・木々に適うデザインはない。

何故木々に勝るデザインはないかというと・・・

日本の気候・環境では何も手入れ、メンテナンスをしないと雑草生え放題の荒れた土地に直ぐに変わる。上の「て・こあ」でも1~2週間に一回は草刈り、草取りをし、裏山は6年周期で杉を倒し、毎年竹を50本以上伐採する。お金も手間もかけ自然と戦い(あえて戦うと表現する)押さえ込み、手入れをしていることが、観ている人に伝わるから素敵に見えると思っている。もし周囲の環境を整えなかったらこの建物は雑草と雑木で死んでしまう。
数時間歩き人の手の入らない奥山に入り込み自然をみても驚異こそ感じるが、素敵とは思わない。橋があったり、石段があったりして人の仕事、営みが感じられるから大自然の中で素敵と思える心の余裕が生まれるのである。

さて、例年より少し遅い簾の設置であるが、いつも決まっているのは夏至を過ぎたら設置するということ。
この「て・こあ」はほぼ真南にむいて建っているので、夏至の頃は普通の庇(屋根の出)の長さでも日は窓から入ることは少ないが、夏至を過ぎると結構入るようになる。これは屋根が外壁から1.2m飛び出していてもお盆の頃には高度は下がり家中にはいる。ちょうどこれからその頃までが暑さのピークだから簾は真南の窓であっても必要になる。

100年ほど前の時計もごく普通に溶け込む空間。

気温はまだ高くないのでこの2階の黒の間でも、空調無しで過ごすことができる。最近ここで催し物があったので照明を増設した。

築103年の古い建物でも、この建物は豪商や豪農又はお金持ちの家ではなかったので、小屋組はどこかで何回か使われた再利用の梁で、しかも新潟県では細めである。実はそれが貴重で、築100年を超える建物は、お金をかけその建物自体に残す価値があって残った建物がほとんどであり、この建物は寺院という特殊な条件で人の想いで残った貴重な建物。この業界人からみると「て・こあ」は建物自体の価値はなくこの令和まで普通なら残ることはない。100年も残るのは人の想いが大きいことを証明しているから私にとって価値は大変高い。

私の推測であるが、決して当時は豊かな時代ではない中、宗教心によって集まったお布施や直接奉仕によって建築されているので質素そのものである。

一方この2階の床、壁と梁が真っ黒なのは・・・
大東亜戦争の時に、関東から疎開してきた人達がこの2階で生活していた時、煮炊きをするために木々をこの空間で焚いたその煤であるという。つまり、古民家の梁が黒いのは煤のせいであり、古いから黒くなったのではないところが普通の人によく誤解されている。戦時中にこの空間で赤子を産んだ人も多くいたそうで、多分亡くなった方もいただろう。耳を澄まし心を鎮めると当時の声が聞こえそうだ。そんな不思議な空間である。

簾が足りなかったのであと2つは次回設置となるが、ここまで2時間かけて設置している。この日は朝一番に自宅の西側に簾を6個つけて簾の設置の一日となった。

はて・・・この時期時折みるのであるが、何かの卵?

玄関の戸枠に少し気持ち悪い浮いた白い粒。これはカビ?卵?誰か知っている人がいるなら教えてほしい。

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