住宅の安易なリフォームやリノベーションに対し
・・・その4 床剛性

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このブログを読んでいらっしゃる方は、「緑の家」ではリフォーム・リノベーションがないと思われるだろう。

そう・・・そのとおりで、私は積極的にリフォーム・リノベーションを薦めていない。理由は簡単で、耐震性の確保がとても難しいから。断熱気密は大概問題ないが耐震性がNGなのだ。

「緑の家」は耐震等級3認定や相当であり、「緑の家」の最低基準が耐震等級2となっている。
この耐震等級2でさえそれを確保するのはとても難しいと常々感じている。

とここまではその1、その2その3同じ。その4では2階床の剛性(強さ)が耐震性NGの理由である事をお伝えする。

インフォームド・コンセント

先にお伝えするが、何が何でもリフォーム・リノベーションが反対である・・・ではない。というよりも実は大好きといえる。その2でも伝えたとおり、大事なことは

「情報公開」「情報開示」における説明である。医療でいうインフォームド・コンセントである。

この建物は現行法では耐震性0.7の充足率(検定比)であるが、このまま断熱改修またはキッチン取り換えだけを行いますか?と言い、耐震改修で耐震等級2にすると1000万かかかりますがやりますか?それとも耐震改修はしないで断熱改修のみ行いますか?と問うことである。ここで建築会社は1000万というとリフォームそのものをやめる可能性が高いので、500万くらいでできる安易な壁合板の補強だけの根拠のない耐震改修を勧める。確かに合板を貼れば現況より多少強くなるが根拠はない・・・これでは半分「騙し」ではないだろうか?

床剛性とは

床剛性とは字のごとく「床の強さ」のことである。段ボールの箱を想像してほしい。想像出来ない方の代わりにAMAZONの箱(笑)で説明する。

AMAZONさんも今年からようやく日本に税金を納め始めたようだ。

一番上は床・壁・天井共に強い箱。青矢印が地震力であるがそれを木のブロックに置き換えてみると歪みが全く無いことがわかる。一方天井(屋根)が弱いと青矢印から力がかかると歪む。更に床まで弱いと壁はあっけなく崩れる。箱は壁・天井・床が強いから成り立つ。家も同じで床の剛性がないと壁は歪み、崩れる。

耐力が1/4しかない弱い床

平成11年以前の木造住宅は、床に合板こそ使っている建物もあったが、梁の上に根太という4.5cm×6cmの木を渡してその上に12mm厚の合板を敷き込んで、床仕上げ材をもう一度貼る家が殆どである(これをA)。ところが平成12年以降から根太を省略して厚さ24mm~28mmの合板を貼る施工がゆっくりと増えて来た(これをB)。実はこの差が大きい。

Aの強さを数値で表すと1.37~1.96KN/mに対し、Bは3.53~7.84KN/mとなりその差は2.6倍から4倍にもなる。

更に30年前の家となると合板を一切使わないで根太の上の床仕上げを貼る家が大半を占めていた。この家の床の耐力は0となり火打ちという斜材のみのわずかな強さに頼るだけ。だから大地震時に崩壊しやすいのである。

合板を貼るには床を全て剥がす

リフォーム・リノベーションを考え、同時に耐震性も等級2を取得するときに必要な補強措置として床剛性を上げる事になる。床剛性を上げるには梁に直接厚い合板を貼り付けなければならない。つまり2階床を全て剥がし、且つ根太という木材も撤去し、更に床高が変わるので階段の見直し、つまり取り替えも視野に入れることになる。そんな大がかりな工事をしないと、古い家の耐震等級2以上は難しい。そこまでしてリフォーム・リノベーションを考えるか・・・ということ。

耐震等級3は床の強さが決め手

一般的な総2階建建物。これを耐震等級3で算定する。積雪は1mで地震地域係数Zは1.0としている。

先日のブログで「屋根を大きくすると耐震性が落ちる」と紹介したときのこの図を覚えていると思う。

実はこの図の中で鉛直面(耐力壁)のエラーだけでなくその下に何項目もエラーがある事がわかる。その一つに・・・水平面(床剛性)がNGと判定されている。

この検定比では最大1.32剛性が足りないと判断されている。つまり・・・

リフォーム・リノベーションを行いたい古い住宅で耐震性を上げるには、耐力壁を強く又は増やすだけでなく、床の剛性を壁と同じかそれ以上に強化補強しないとだめとの結果。これらを日常的業務で知っているため構造計算をする設計者は安易にリフォーム・リノベーションを薦める事ができないのである。

では再びオーブルさんは何が何でもリフォーム・リノベーションは反対なのか?

と問われると、何度も申し上げるが

リフォーム・リノベーションは大好きなのである。だからこそインフォームド・コンセントが必ず行われなければならない。

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コメント

  1. MOTO より:

    浅間さま

     謹賀新年

     今年はまめにコメントします。
    本年ももよろしくお願いします。

     私のリフォームに対するイメージといえば以下の通りです。

    昭和40 ~ 同50年代 = 外壁・設備更新、増改築
    昭和60・平成00年代 = 同上、断熱改修
    平成10 ~ 現在   = 同上、耐震改修

     感覚でいえば、兵庫県南部地震(H07・阪神淡路大震災)の映像を見て
    耐震化への意識が高まるも、大半は次第に関心が薄れて尻すぼみ。
    新潟県中越地震(H16)、新潟県中越沖地震(H19)を含め
    大きな地震は度々ありましたが、一般人では意識高い系の方々くらい。
    その後の東日本大震災(H23)は被害の大部分が津波によるものでスルー。
    熊本地震(H28)以降に相次ぐ地震で、再び関心が高まって来た気がします。

     床剛性の重要性は当ブログで度々ご指摘されています。
    その重要性に鑑み脳内住宅でも、床剛性確保の対策を考えています。

    https://arbre-d.sakura.ne.jp/blog/2013/11/08/post-0-730/

    上記「中野の家」に採用されたFRPグレーチングは、
    文中に「吹抜床」とあるので一般的な製品と思われます。

     脳内住宅では2階勾配天井と小屋裏収納へのアクセス対策として、
    床倍率の確保と1.4m高さ制限解除のため以下を採用予定です。

     ひかりゆか(AGC・参考設計価格120,000円/枚)

    一般製品も含め実売価格は「おいくら万円(NHKカネオくん風)」?

                       草々

    MOTO

    ※ 追記  スタッフMさま 

    上記URL:床下暖房の中野の家 完成見学会 2013/11/8(6年前)

    文中に誤記を発見しました。
    個人的に嫌いではありませんが、お伝えしておきます。

      ”「緑の家」は玄関と玄関ピーチを特に大事にします。”

    • スタッフM より:

      MOTO様
      スタッフMです。
      明けましておめでとうございます。
      本年もよろしくお願いいたします。

      誤記のご指摘ありがとうございます。
      修正させていただきました。