白山浦の家 耐力壁チェック①

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

日中も氷点下1度と寒い一日となった。足場は雪で滑るし結構危険な工事監理。

耐雪1mで耐震等級3、超高断熱Ua値0.18w/m2k(暫定)の白山浦の家で、ほぼ終日氷点下になった昨日、耐力壁チェックが行われた。

最近ではとても珍しい田の時プランのため、耐力壁が出来上がり囲まれると更に大柱を中心にした構造よくわかる。この梁が露出し室内に表われる・・・。

平屋ならではの大きな空間となる白山浦の家であるが、耐震等級3のため耐力壁は意外と多い。しかも今回の耐力壁は・・・合板による大壁構造を中心とした耐力壁となる。

内部に設置される真壁合板の耐力壁と、手前左側の大壁合板貼りの耐力壁。

耐力壁としては一般的な大壁の耐力壁(柱の外側に貼る耐力壁)と、「緑の家」がよく設計する真壁の耐力壁(柱内側に設置する耐力壁)がある。それぞれ一長一短があり、一般的には真壁の耐力壁の方が手間がかかり、大壁の耐力壁の方が施工に注意する点が多い。

真壁の耐力壁は、現場で間違えることが少ないので工事監理が楽であるが、施工には手間がかかる。耐力壁をつくる釘にしても縁からの離隔距離にほとんど余裕が無いので、丁寧に釘を打つことになる。一方大壁は柱の表面に取付けるので、離隔距離は2cmくらいの余裕が生まれる。しかし非耐力壁合板との釘が種類も本数も違うので間違えやすい。

3年前に一度大壁合板で耐力壁を造ったが、施工の間違いが多くこれでは監理も施工も大変ということで真壁の耐力壁としていたが、両者が大壁耐力壁になれて来たので再び大壁の耐力壁に戻して、施工の手間(特に充填GWの施工手間)を減らすことにした。

さて大壁の耐力壁で施工が間違えやすいのが下の写真のところ。

大壁耐力壁の場合は一見して簡単そうに見えるが、とても入り組んだ釘や施工方になる。

この写真中で耐力壁では無い「非耐力壁」と「耐力壁」が混じっている。非耐力壁は同じ合板を貼るにしても、故意に釘ピッチを緩くまた耐力の低い釘(N釘)を使い、地震の時にこの合板に応力がかからないようにわざと緩く造る。一方耐力壁は地震時にその力を負担するので、強く造り応力を基礎に伝える。これは私が決めたのでは無くそのようにマニュアルに記載がある。

「全ての壁を耐力壁にしたほうが強くなるのでは?」

とのご意見・・・たしかに素人目にはそう考えるが、それは違う。

木造軸組工法(柱と梁でつくる木造)はピン構造といわれる柱と梁は点で結ばれる架構方法である。ピン構造ではその柱と梁の結合部は最も大事な部分で、この部分が破壊されると構造は一瞬でバラバラに崩壊する。よって建物はこのピン部分より耐力壁が先に壊れるように設計する。そのため構造計算をして接合部のピンより耐力壁を弱く作る事を確認し、全ての耐力壁を計画する。だから耐力壁もある程度制限して全体の外壁より少なく設計している。特に今回は準防火地域のため窓の価格が一般の樹脂サッシの3倍ほどするので、いつもより窓の位置を集約しており数は少なめである(建て主さんのご希望)。開口部で無い外壁残り全てを耐力壁とすると、耐力壁が強くなりすぎてピン部分が先に壊れ建物が崩壊する。そう・・・耐力壁は多くても駄目なのである。このことを多くの木造施工従事者は知らないので、リフォーム・リノベーション時にいい加減に耐力壁増やすのである。それがわかっている設計者は、リフォーム・リノベーションの時にも全て構造計算する事を前提とするので、いい加減な耐力壁を増やしたり補強するリフォーム・リノベーションが出来ないのである。

さてもう一度上の写真のアップを見てほしい。

ピンク色の線が桁位置である。桁より50mm以上伸ばして合板を貼る。

さてこの写真中の5枚の合板があるが、その張り方の違いがわかるだろうか・・・

面材同士に隙間がある事も重要。桁を挟んで上下はめり込み込み用の逃げ寸法で6mm以上12mmくらいまで。左右は湿気による伸縮逃げで1mm程度が推奨される。

上の合板はA~Eとなるが、このうち耐力壁はBとEであり非耐力壁はA、C、Dとなる。

Eは構造用合板12mmで大壁貼りの耐力壁倍率として4を確保する張り方である。具体的にはCN65を外周部で@100以下で留めつける。一方非耐力壁A、C、Dでは合板は外壁下地なのでそれに対応すればよいのでN50@150mm程度で貼っている。 ただしDは梁(桁)の下地調整の役割になるのでどのように釘打ちされてもOK。上下の耐力壁と併せてわかりやすくしてCN65で 施工している。

このように同じ合板を貼っているように見えて実はそれぞれの役割は違い、その事を施工者に伝えることが意外と難しい。今回は構造用合板を面材としているが、これが建材合板であるダイライトやモイスでも同じ注意が必要。更にダイライトやモイスは、面材割れに注意することが追加される。玄のうやトンカチで打ち損じるとダイライトやモイスはいとも簡単にヒビがはいる。この点構造用合板はまず割れることがないし、実際に割れているのを見たことがない。

耐力壁面材をモイスにした時の釘のめり込み。1mmもめり込んだこの状態はNGとなる。

耐力壁面材をモイスにした時の面材のヒビ。これでは所定の耐力は発現せず、面材の張り替えしか無い。

このように耐力壁のチェックは基礎配筋チェックと同様に時間がかかるところだし、設計知識と施工経験が必要なところ。だからこそ法的に定められた「工事監理者」の浅間がチェックするのである。巷の住宅建築で、法的に根拠のある「工事監理者」がこのように釘一本一本のチェックを行っているだろうか?・・・と思う。

法的に根拠のある「工事監理者」とは↓

建築基準法上の工事監理者
工事監理者はとても重要な業務である。100m2以上の建物には、建て主さんが建築士の資格のある人を工事監理者として定め...

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする