意匠模倣で賠償命令・一部取り壊し

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日経ホームビルダー2021年3月号のタイトルから。住宅で似ているデザインが多いのは事実。

他媒体でも聞いていたがこの度日経ホームビルダー3月号で「デザイン模倣で賠償命令」との事例に感じたこと・・・。

本題の前に

昨日「春期の小屋裏内結露は防げないのか?」と題し、まだ屋根の上に雪が載っている時に春風が吹くと小屋裏内で結露すると紹介した。一般的に小屋裏がある家だけの印象を受けるが、勾配天井時に計画する屋根通気層部分も同様である。この屋根通気のときにセットで設置する棟換気が更に問題の時もある。多くの棟換気はガルバニューム鋼板が内部で露出しているところがあり、そこで集中した結露を生む恐れがある。「緑の家」ではこの事も含めガルバニューム製の棟換気(シングル葺OK)は8年前から耐雪住宅では設置しない。

春期の小屋裏内結露は防げないのか?の追記として・・・

さて本題に戻る。

この判決は昨年の改正意匠法前の訴訟。従って動産として意匠登録してあったデザインに抵触したことで裁判所が模倣だと認定し賠償命令がでたようだ。訴えられた方は「インスピレーションを受けた部分がある」と見て真似したことを認めているので、上告はなくこれで終結になると思われる。賠償額は85万で該当部分の取り壊しの判決、該当建物は既に改修されたが担当した弁護士の話だと、内装や建物外観全体になる現法の改正意匠法後であると、こんな少額ではすまないだろうとのこと。世界に一つの注文住宅ならまだ似ているだけで終ったかもしれないが、今回は商品として宣伝し複数で注文獲得し建築したようであるから完全にアウトだろう。

私は自分が良いと感じた他のデザインにをそのまま受け入れてしまう事を恐れる。そこでできる限り他の建物を無意識に模倣しないために、建築物は「見ない」ようしている。見る場合は既に意匠時効のような古い建物見学がほとんどである。

「ちらっ」とでも見れば無意識に残像がのこり、意匠が知らぬ間に似ることがある。それを防ぐには見ないことが一番。次に真似たら「真似た」と明言することである。真似られた側はそれで許可する事はないが、さも自分が考えたと表明していると強い怒りとなり、明言されれば気持ちは少し和らぐ。これは商い事だけでなく論文でも「参考・引用文献」明記が必要とされる。

とは言っても普通の人間では、一度も見たことのない形をゼロから作り出すことはまず不可能であることは認識している。作り出されるものは必ずどこかで一度見たもの、学んだものである事も事実であろう。だからこそ自身でなにかボーダーを引かなければならないと思っている。

私は研究・論文でも過去と同じことはNGと恩師から何度も言われているので、当然意匠でも真似る行為は嫌いである。仮に今回のように訴えられ、非があれば「緑の家」のオーナーさんにも負担が及ぶ。それは設計者として絶対避けなければならない。

過去にもスタッフにデザインをまかせる時も「どっかのパクリではないよね」と必ず念をおす。それでも「緑の家」がどこかのデザインを模倣したら私の責任であるから、スタッフとの常日頃の意思統一は重要だと思っている。東京オリンピックのエンブレムでもあったように、もし設計者=デザイナーであるならまねたことを隠すことは恥ずかしいことであるし、時には賠償となる今回の事例と法改正は賛同する。但し、小さい会社を大きい会社が圧力をかけるように乱発訴訟することは避けなければならない。真似たほうに恣意又は悪意(商品として付加価値をつけるなど)があるかを見極めてほしいと思う。

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