
今年の住宅の補助金は高額で160万というGX志向型住宅がある。しかしこのGX基準が・・・というより一次エネルギー算定に納得がいかない。
まずGX志向型住宅の定義は・・・
「ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有する脱炭素志向型住宅」の事である。
脱炭素志向型住宅で話すと想いもあり長いので割愛するが、問題はこのGX志向型住宅に合致する基準に一次エネルギー算定で35%以上の削減をしなければならない事。
新潟県は多雪地域に該当するので太陽光発電設置等の義務はないので断熱等級6以上で且つ一次エネルギー消費量の35%以上削減だけとなる。以前から申し上げているが、この一次エネルギー削減がどうも納得がいかない。
一次エネルギー算定とは省エネ法で定められた省令によって決められた技術基準。通常下のプログラムで計算される。

「緑の家」はご存じのとおりUa値0.16~0.29w/m2kと結構攻めた断熱性能を17年前から標準としているが、その性能の中でもAグレードという標準仕様ではUa値0.2以下になる。しかしこの性能を持ってしてもGX志向型住宅の基準である一次エネルギー削減率35%以上にギリギリである。


時にはUa値0.19w/m2kでもNGとなるときもある。このNGである大きな理由は冬季の日射熱取得不足である。そしてこの原因をつくっている仕様が、紫外線防止と日射熱侵入率を抑えたガラスを使っているからである。新潟県なら全く性能の同じ家でも長岡市なら0.65で、隣の小千谷市ならこ0.72で完全NG。ここに今回は意見を言いたい。

NGとなる理由の一つは「冬季」の日射熱取得不足であるが、この算定基準を採用するなら、住宅の隣棟間隔まで算定基準に組み込むべきである。簡単に申し上げると冬季は暖房エネルギーとして日射熱を室内に取り込めば、暖房エネルギーの削減となるためそのように計算がこのプログラムに組み込まれている。理屈ではその通りだが、しかし現実では・・・日本の多くの住宅は家と家の間隔(隣棟間隔)が広いとは言えず、冬季の仰角30度以下の低い日射では隣家の陰になってしまい、シミュレーションしたエネルギーが窓から入ってくることはない。

特に方位が重要で仮に道側が西や東だったら通常南側は隣家が迫ってくる側になる。そんなことは12年前に下の計算で承知していること。
計算などしなくても体感でもわかる。昨年竣工した名古屋の市街地に建て替えた「名古屋千種の家」のオーナーさんは、「建て替える前は南、東に窓はあっても日射が隣の家で遮られてとても寒い家だった」としきりに言っていた。冬季に晴天が大変多いあの名古屋市でもである。
更に言えば、仮に隣棟間隔が周囲6m以上ある冬季の日射が概ね遮られることなく計算通り入ってくる場合でも、カーテン等をして日射や視線を遮断すると計算通りではなくなり(下の表では35%も少なくなる)、遮熱カーテンなど使われるとその大部分は熱の有効利用できなくなるという現実。6mあっても人は隣家の視線が気になりカーテンをひいたままの事が現実。最近は共働きでレースのカーテンだけでなく夏用の遮熱効果のあるカーテンも冬期日中行っているご家庭もある。

さて私が思う問題の本質は、160万という多額補助金=税金がこの隣棟間隔や住まい方諸条件を無視した基準で、受けられたり受けられなくなったりすることである。しかも長期優良住宅取得時の補助金80万の倍で160万である。我々技術者から見ると、長期優良住宅認定の方が家としては一般的に優れているといえることがこのGX志向型住宅の最大の問題。
太陽光発電や家の断熱基準は根拠がしっかりしているが、一次エネルギー算定の窓の日射熱は、外部条件と生活スタイルで大きく変わることが明確である。にも拘わらずこのナラした基準で物差しをつくることに合理性は考えにくい。単なる評価なら良いが、160万の補助金がもらえるかもらえないかが、この窓の日射取得でも決まることが問題なのである。これがエアコンや給湯器なら常識的に使う範囲ならどの家でもほぼ同じ効率で問題はないが(買い替えで問題が生じる可能性はあるが)、冬季窓から入ってくる日射熱は住まい方に、また周囲環境で大いに変わるのでふさわしくないのでもう一次エネルギー算定から省くべき。エネルギーを効率よく使うことで推進されるコンパクトシティーが叫ばれる中、住宅の隣棟間隔が少なく家が多くなるのは通常の流れだと考える。
そんな意見を言いつつ「緑の家」ではGX志向型住宅を満足した補助金申請は今年に入って3棟申請中で、あと3棟も申請し計6件になるが、建て主さんのメリットになるなら、このように問題点を訴えながら頂けるものは頂くことにしている。