T邸のリフォーム 1

T邸は築40年以上経過したお宅です。窓は一部木製の開口部があり、時代を感じさせます。全体は120坪くらいある家で、とにかく広いお宅です。平成16年に起こった三条の水害で床上浸水という被害にあわれた。早急にどうしてもというところは、県内の南魚沼の大工さんから補修して頂いたそうです(三条の業者はパンク状態)。ですので1階のほとんどの床は新品でした。数ヵ月後「木耐協」と呼ばれる政府認可団体所属の業者が、営業にこられ「耐震診断」を行ったそうです。結果は耐震性が低い建物(倒壊の危険性あり)となったそうです。しかし、何となく気がすすまなかったので、最小限度の補修をすることにし、その改修をお願いしたそうです。
それから2年後の冬に当方にお電話がありました。内容は、「リフォームの相談」でした。当方をご紹介していただいた方は、2年くらい前に新築をお手伝いさせて頂いたTM様でした。T様とTM様は職場がご一緒ということでのご縁でした。

最初T様の家に伺ったとき、「とにかく寒くて大変。一ヶ月に暖房費が7万かかる」といわれました。確かに120坪もあればそのくらい掛かるだろうと思ったのですが、実は3部屋くらいを暖めるのにそのくらいかかるそうです。他の約10部屋は冬は使われない状態に近かったです。
確かにその当時建物は断熱という概念はないほうが普通で、木製の窓の隙間から外部が見えてました。120坪もあるということは、当時として大変立派な家です。品の良い和室がありますし、外部はモルタル仕上げで、結構お金が掛かっている建物です。
しかし、構造的には少しアンバランスで、基礎にもひびがあります。
T様の思いは、どうせリフォームするなら、自分たちが年取ってもそこに快適に長く住める家にしてほしい。月7万円も掛かる暖房費も何とかしてほしい。というご要望でしたので、迷わず耐震性全面改修とこ高気密高断熱仕様にするご提案、さらに断熱区画で必要なところを快適に暖める提案もしました。費用は3000万となりましたが、この120坪の家を将来の終の棲家にするには必要な金額でした。例えば120坪を新築したとき、50万×120=6000万 その半分で同じように暖かい、地震に強い家が手に入ることになります。たまたま省エネリフォームの補助金がを当事務所で見つけ、それを満額(330万)使うことができました。

そしてリフォームは始まりました。

すぐに問題発生。数奇屋風住宅でよく見かける屋根の形状ですが、母屋と呼ばれる構造材が腐ってました。母屋は↓の写真の横たわる丸太です。

築30年以上経つ数奇屋風の屋根。しかしこの納まりは耐久性から見て問題がある。

築30年以上経つ数奇屋風の屋根。しかしこの納まりは耐久性から見て問題がある。

数奇屋住宅でよく見かける屋根の部分です。横の木は母屋といい、上からの荷重を支える大事な材料です。よく見ると破風という木の部分からはみ出ています。これは耐久性のある建物を造るという観点からも、メンテナンスし易い構造から見ても問題ある納まりです。

耐久性やメンテナンスを重視し、上から順番に屋根が引っ込む利にかなった納まりの設計。 見た目だけではなく時には当たり前が大事である。

耐久性やメンテナンスを重視し、上から順番に屋根が引っ込む利にかなった納まりの設計。 見た目だけではなく時には当たり前が大事である。

数奇屋風の屋根。見栄え重視で耐久性やメンテナンス性は二の次。 腐った母屋を1本でも取り替えるには、屋根を取り外す必要がある。 更に耐久性を下げる原因が、丸太のの背割れ方向。下にこないように上端についている。 これが雨が木に染込みやすい。下の写真は小屋裏内から見た母屋の木。

数奇屋風の屋根。見栄え重視で耐久性やメンテナンス性は二の次。 腐った母屋を1本でも取り替えるには、屋根を取り外す必要がある。 更に耐久性を下げる原因が、丸太のの背割れ方向。下にこないように上端についている。 これが雨が木に染込みやすい。下の写真は小屋裏内から見た母屋の木。

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耐久性重視の屋根は破風より母屋が出ていない。水を切る順番から見れば当たりまえ。

耐久性重視の屋根は破風より母屋が出ていない。水を切る順番から見れば当たりまえ。

本来なら、母屋と破風板の納まりを加工して変えれば、一番確実な修繕となりますが、破風板が欠きこんであるので、全て取り替えになり、雨どいの取り外しが必要となります。ところがここでも問題が・・・。雨どいが古すぎて該当商品がなく、全て取り替えになってしまうとの事。これでは予算が大幅オーバーなので、この部分は母屋へ雨水が入らないように、板金処理しました。
また調査段階の最初からわかってましたが、この家の南外壁下には、基礎がありませんでした。つまり数奇屋風住宅でありがちの大きな開口部のため、耐力壁がなくなり、結果基礎も必要ないと前の設計者にみなされたのです。

建物外周が窓だらけ。しかも基礎がない。数奇屋風住宅にありがちな家の構造。決してコストを省いた建物ではなく、見えるところにお金はかけている。重要な基礎や耐震構造には気が廻らなかったらしい建物。

建物外周が窓だらけ。しかも基礎がない。数奇屋風住宅にありがちな家の構造。決してコストを省いた建物ではなく、見えるところにお金はかけている。重要な基礎や耐震構造には気が廻らなかったらしい建物。

窓下にしっかり基礎をつくり、窓一部を耐力壁に変更。サッシは全て樹脂サッシで高断熱仕様。外壁色は白からブラウンに。屋根は瓦で痛みが少ないため手をつけずに見合った耐震性を確保。

窓下にしっかり基礎をつくり、窓一部を耐力壁に変更。サッシは全て樹脂サッシで高断熱仕様。外壁色は白からブラウンに。屋根は瓦で痛みが少ないため手をつけずに見合った耐震性を確保。

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