緑の家の性能 ③耐久性

text   2009.07
加筆 2017.05

住まいの耐久性を考える要素には優先順位があります。
まず、一番修繕しにくい「基礎」、次に木構造、温熱環境(窓サッシを含む)、最後に屋根、外壁となります。つまり造る時の順序と逆になります。だから一番最初に考えなければならないのは基礎ということになります。

・基礎の耐久性
6-3基礎は鉄筋といわれる鋼の棒と、セメントと砂利を混ぜたコンクリートからできています。これは鋼だけで作ると強度は十分なのですが数年で錆びてしまい、コンクリートだけですと耐久性は長いのですが、もろく強度が出ないのでこの2つを組み合わせて作ります。

① 立ち上がり寸法について
新潟県の多くの住宅は立ち上がり寸法が60cm位しかなく、住宅性能表示で定められている多雪住宅地における基礎高標準の75cmさえクリヤーしておりません。この立ち上がり寸法が大きければ大きいほど構造耐力が高いと言えます。「緑の家」Bグレードまた、Aグレードではこの立ち上がり寸法がそれぞれ100cm、120cmある為、重い雪も支える構造になっております。更にAグレードではダブル配筋のべた基礎が標準です。

② コンクリート強度について
コンクリートは全て同じ強度ではありません。一般的に多く使われている設計強度は21N/m㎡というものですが、「緑の家」のBグレードはその約1.3倍の27(※30)N/m㎡が標準です。更にAグレードにおいてはその1.4倍の30N/m㎡を使用しております。この強度はただ強いだけではなく、耐用年数100年基礎のポイントである中性化劣化にとても有効です。中性化とはコンクリートの強アルカリ性が空気中の二酸化炭素によって中和され、アルカリ性が低下していく現象です。中性化がコンクリートの内部にまで進行すると、アルカリで守られていた内部の鉄筋が錆び始め、強度が急激に低下して鉄筋コンクリートの寿命を迎えることになります。一般の21N/m㎡の強度のコンクリートでは補修不要年数が30年と言われています。「緑の家」Bグレードでは27(※30)N/m㎡を標準としているので補修不要年数は約65年です。一方、「緑の家」Aグレードのコンクリート設計強度30N/m㎡では補修不要期間は約100年となります。
※2011年から27から30N/mm2に変更
③ 立ち上がり幅について
②と同様にコンクリート表面から鉄筋までの厚さ(かぶり厚)が多くなればコンクリートの中性化によって起こる内部の鉄筋へ影響を遅らせることができます。住宅金融支援機構の基準でもある一般的な基礎の幅は120mmですが、「緑の家」のAグレードの仕様では幅180mm(外周のみ。内部は150mm)、Bグレードの仕様でも幅150mm標準として、鉄筋までのかぶり厚を多く確保し基礎の耐久性を高めます。
④ 基礎の一体化(一回打ち込み)
基礎の大部分を占める材料はコンクリートです。コンクリートはご存知の通り、初めは液体でドロドロしています。よってどんな形にでも作ることができ、この性質を生かし一体成型することで高強度を得る構造ができます。しかし、今までの基礎工事はベースといわれる(図)部分を最初につくり、そのベースのコンクリートが固まってから立ち上がりをつくっておりました。これではコンクリートが一体成型ではなく、二つのブロック成型となり、欠点が継ぎ目に出やすい可能性があります。そこでAグレードでは特殊な金物を使いベースと立ち上がりを一発で打ち込みます。これで本当の一体成型のコンクリートができ、従来の欠点である継ぎ目の剥離や水の浸入による鉄筋の腐食を防止できます。

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⑤ ダブル配筋で余裕のある基礎 (Aグレードのみ)
6-2中越地震及び中越沖地震では、ごく一部の古い建物を除いては地盤の変質による不同沈下や、地盤の崩壊による被害と報告されています。比較的液状化が発生しにくいといわれた新潟内地平野部や砂質丘陵地においても液状化が発生し、等級2の建物が傾いた事例もあります。建物上部(基礎を含む木造部分)の建物上部の耐震性を相当高くしても地震時の不同沈下や液状化による傾きが発生すると、その建物は住まい手にとって全壊と同じです。
地震時の不同沈下防止が長期耐久性の信用を高めると共に簡単な補強でジャッキアップできる基礎構造を計画する方が現実的です。特に新築
において大半の住宅で地盤改良が行われている新潟県では、地震時の液状化等における地盤保証は一切なく、(免責事項)これは全国的でも同じ状況です。今後も普及価格で地盤保証できる地盤改良工法は望めません。写真は2年前に建築された厚さ22cmのダブル配筋(縦横鉄筋D13@150)の基礎スラブ。確かにこれだけを見ればオーバースペックのようですが、100年耐久住宅では必要な仕様であると考えます。

 

⑥ 半永久に防蟻防腐
木造躯体の劣化は腐朽とシロアリによるものがほとんど。雨漏りを除く腐朽は水分(湿気)の多い地面付近から進行し、被害の大きい土壌型シロアリも同様です。従来はこの地面に近い部分について薬剤や木の樹種、または軒の出や通気工法で防蟻防腐していましたが、緑の家では地面からの基礎高さを従来の約500mmから2倍の1000mm以上(Bグレードは881mm)にすることで物理的に防止します。この基礎高さに加えてクロス通気工法及び、窓上庇等の従来の耐久性を上げる工法を同時に行います。基本柱は120mm角として梁の幅も120mmとします(標準で外周部のみ)。また、熱橋による結露を完全に防ぐ為に外張り断熱工法とします。これらとダブル配筋のベタ基礎構造を組み合わせケミカルフリーで躯体の高耐久性を実現することができます。ケミカルフリーのメリットは今までの歴史が証明しているように・・・。一方人工的に造られた防腐防蟻材は現在安全と判断されていても遠い将来使用中止になる可能性があるのです。

・木構造の耐久性
木と木の相性はよく、木と金属はあまりなじみがよくありません。しかし法隆寺などでも重要な部分には和釘が使われているということをご存知ですか?よく「釘は一本も使っていないからよい建物だ」などと言われることがありますが、世界最古の木造で最も美しい法隆寺には太い釘がたくさん使われています。
当事務所の木造構造はほとんどがクレテック(テックワン)金物を使います。計算(実験)できちんと決まった数値が設定されている為、とても構造計算に向いている構造(金物)です。昔ながらの木の継手は腕のよい大工さんが作るととても強度があり、腕の悪い大工さんでは期待した強度が出ません。したがって現在の状況を考えると、安定して品質のよい建物を計画する時はクレテック金物は欠かせません。
特に、耐雪住宅ではその接合部が最も重要です。クレテック(テックワン)金物は一般の木造の接合部より1.5~2倍も強度があります。更にAグレードでは標準で120mm角の柱(4寸柱)を使い、骨太で余裕のある木の断面で家を造ります。
木材は主に集成材を使いますが、無垢材でも可能です。集成材は強度が無垢材の1.2~1.5倍あり、ひび割れが少ないのがよい点です。

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他社プレカット。昔ながらの継手。
写真はモデル加工で実際は大工さんの腕に左右される。
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クレテック金物継手。木への負担が少ない。
簡単な形状の加工と特殊金物との組み合わせ。

 

・温熱環境(窓サッシを含む)の耐久性
6-96-8 21世紀の最大の問題は地球温暖化とエネルギーの枯渇です。私たちが今までと同じようなコストで暖房や冷房の恩恵を受けたいと考えた時、家の断熱気密はますます重要になります。断熱気密性能は建物建設の初期に形成される為、断熱気密性能をアップさせるリフォームをするととてもコストがかかり、建替えるような状況になります。
緑の家Aグレードでは、数十年後再びQ値を簡単に50%アップさせる納まり(未来のエコに同調)が考えられています。
右の図のとおり、初期断熱性能は外張り断熱方法で計画します。これらの断熱材の性能は経年変化により年々微少ながら低くなっていきます。また将来のエネルギー問題から更なる断熱性能のアップを求められることは確実です。そこで将来、内壁と天井は室内側にセルローズファイバー等を充填し、床(基礎)はスラブ上と立ち上がりに断熱材を増し貼りすることで簡単にQ値0.8(0.7)w/㎡Kにアップさせられる構造となっています。

 

6-10更に、数十年後に開口部だけを簡単に取替え可能(取替えタイミングの同調)です。壁、天井、床の断熱性よりはるかに悪い(低い)断熱性能の開口部は最も影響のある部位で、開口部を高性能にする為には現在多大なコストがかかります。将来真空ガラスのような製品が安価に入手できるようになった時、外壁を壊すことなく取り替えられる計画です。この取替えにより旧Q値を0.7w/㎡Kにできます。また、開口部の劣化特性として順次取替えが必要になります。よって単体で取り替えられる構造はメンテナンスを適時に行うことができ、これからの標準となる長期住宅には必須の窓の仕組みです。