床下暖房と床下空調 

TEXT 2016年

基礎断熱工法の床下を使った冷暖房の内、汎用エアコンを使った暖房を床下エアコン暖房と定義してその実際をお伝えします。

次のように構成しております。

  • 最初に・・・諸刃の剣の基礎断熱(この本文)
  • 床下エアコン暖房の温度分布
  • 床下冷房は薦めない
  • 夏でも床下暖房

 

最初に・・・欠点がある基礎断熱の家

基礎断熱の家は北海道で始まったとされておりますが、広義としては関東地方のOMソーラーさんも基礎断熱と言えば基礎断熱工法です。しかし有名なクレームがあったので一般的な普及には至りませんでした。この話は「OM 床下 防蟻 訴訟」と検索すればわかります。そこでこのOMソーラさんの事は除いた基礎断熱工法とします。

平成10年に公に認められた基礎断熱

DSCF4276平成10年度版に急遽別紙で配布された住宅金融公庫仕様書(国のマニュアル)から名実ともに公に認められました。それまでは基礎断熱では金融公庫を使えなかったので、基礎断熱を採用しつつ、基礎には床下換気口(開閉式)を設けて凌いでおり、この仕様書が出たときには小躍りをしたことを覚えております。ですので19年経過した平成28年でも今だ事務所の本棚にあるわけです。きっとこの仕様書を持っているのは今高気密高断熱をしている会社でも当事務所くらいで、私のとって価値のある本です。

DSCF4279その中には既に「カビと結露の危険性」と基礎断熱の注意点がありますが、この時は実例が北海道多くあった事、床下暖房を到底していない事で「ある欠点」が記載されておりません。それが今まで建築業界内では噂されておりましたが、この平成27年、28年の建築学会で発表され明らかにされました。
その論文が↓

12362_2

12363

1236

12365

基礎断熱の欠点

欠点と欠陥は違いますのでご注意ください。欠点は何らかでカバー出来るものですし、欠陥はそれ自体に問題があるので根本的にその原因を改善する必要がある事です。そして基礎断熱工法には欠点がありました。

それは・・・基礎断熱された床下空間は、夏期に居室空間より概ね3℃以上温度が下がるのです。これは同じ湿度(絶対湿度)なら相対湿度(RHとする)が高くなる事を示唆しております。つまり北海道以外の梅雨のある温暖地では建築初期のコンクリートによる加湿時期と同じくらいに「カビと結露」の可能性が出て事になります。これが基礎断熱の欠点です。

976342

この測定は2016年の7月12日から14日までの期間になっておりますが、この傾向は8月上旬まで続きます。そしてこのグラフでグレー部分が基礎の一番温度が低い部分で結露の危険性がある期間です。スラブですから結露こそしませんが、RH(相対湿度)が90%以上という高湿状態が一ヶ月続き、この事でカビが生えます。

カビの発芽

カビは胞子で空気中を浮遊しており、条件が整うと着床し発芽して菌糸を延ばし肉眼で捉えられるくらい成長して「カビ」となります。この事は1990年代に起きたシックハウス症候群の時に化学薬品の防かびにかわる方法として文科省から研究、報告書が発信されました。その中からカビの発生の原因の抜粋が下の表です。1234598761

住宅内で一般的に見られるクモノスカビはRH(相対湿度)が90%で9日間を超えると、また乾性カビである黒コウジカビはRH(相対湿度)が80%で30日間続くと発芽します。特にRH(相対湿度)90%を超えるとたった3日で黒コウジカビは発芽して菌糸を延ばします。

床下は高湿(新潟県の夏期の平野部)

新潟県の平野部の通風中の基礎断熱床下内では、梅雨時から真夏に掛けて床下の環境はRH(相対湿度)が85%を連続して2週間を超えます。mrh_2つまり床下内ではカビの着床点に問題なければ、いつでもカビが発芽する事を示します。これは上でご紹介した論文結論と全く同じです。一方外気は、雨天時にRH(相対湿度)が100%に近くになるほど高湿なのですが、一方少し晴れ間が出るとRH(相対湿度)が65%以下になります。1日でこのRH(相対湿度)差が有ればカビの胞子が発芽しにくくなります。それと比較した場合は基礎断熱内の床下は大変カビが発芽しやすく悪い環境であることがわかります。北側の押し入れ床部分も2週間以上RH(相対湿度)80%を超えており、このことからでも押入れ内がかび臭くなることがわかります。

なぜ床下・押し入れは多湿なのか?

原因は簡単で、床下は地面からの影響を受け夏期はリビングより4から5℃温度が低いことがわかります。このため同じ湿気量でもRH(相対湿度)は高くなるのです。

m

家中空調している床下は低湿

m1上のグラフは夏期家中24時間空調して窓を開けていない「緑の家」と、主に通風で夏期を過ごしている次世代断熱基準(基礎断熱)のM邸の床下のRH(相対湿度)の比較です(測定位置はスラブから10mm上)。一目瞭然ですし、あたりまえですね。通風では明らかに床下のRH(相対湿度)が90%を超えております。これでは床下内でカビっぽくなります。これは特別な事では無く、普通に起こっている事実です。

m_2上のグラフは夏期家中24時間空調して窓を開けていない「緑の家」と、主に通風で夏期を過ごしている次世代断熱基準(基礎断熱)のM邸リビングの露点温度の比較です。露点温度とはその温度以下では結露する温度のことで、空気中の湿気の量と考えてもいい。数値が示すとおり「緑の家」のリビングの露点温度は14度℃以下に対し、同じ基礎断熱であるM邸は通風しているだけで露点温度は22度以下。この差が通風と24時間空調の差です。

結論としては温暖地で基礎断熱工法を採用したならば、夏期は通風で空調しないで過ごすと、カビの発芽によるカビ障害の欠点を持つが、その欠点を瑕疵要する方法として24時間空調が効果的であると言う事になります。

次の項目は・・・床下エアコン暖房の温度分布です。