緑の家の想いと概要

長く愛する住宅を造る為に 建築士として
text 2010年1月

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バージニア・リー・バートン作
「ちいさなおうち」

日本の人口が自然減となり国家として本格的な成熟期に入りました。そんな中、長期間住まいつづけられる家が求められ、長期優良住宅という名称という法律が2009年から施行運用されております。

「昔の民家はよかった。丈夫で100年位使えたし、いまも残っている民家は立派な構造だ」とおっしゃる方をよく耳にします。全くそのとおりです。しかしだから全てが昔と同じ構造や架構方法でよいかと問われると、それだけでは現代の家では不合格です。
今も現存する立派な古民家は、ある程度の財力がある人(地主)が作った邸宅がほとんどで、庶民が暮らしていた本当の民家はほぼ残っておりません。ほとんどの人が現在は残っていない取り壊された庶民の家(借家)に住んでいたのです。しかし社会の成熟期の今だから、庶民の手にする家こそ長く使われる事を求められております。

現在も高いコストを掛ければ、より有能な設計者、技術者、職人を集められ、後世に残るような建物とその維持管理ができるので古民家のような住宅を建てることは可能でしょう。しかしそれはほんの一握りの人にしかできません。実は高いコストを掛けなくとも、その家で人の愛情が育まれ引き継がれていけばその家は長期間存在すると私は考えていますし、そのようになるべきと考えてます。

この絵本にはそんな想いが感じられます。家への直接的愛情ではなく、家の中で育まれ引き継がれる「愛情」は、その家を長く維持するために最も必要な事です。この想いが家から発せられるようになり、それがその家の魅力となります。全ては人の「想い」で長く維持され引き継がれると考えてます。

さて、我々建築士にできる事はこの表紙にもありますが、庭を含め総合的にバランスをとる事です。目に見えない構造や温熱環境、維持管理しやすさの考え計画することです。

新築計画の最中は、どうしても家の内部(間取り、インテリア等)にだけ意識が集中しがちです。家は間取りと設備、仕上げ類だけではありません。私どもが基本設計するときには必ず外部とのつながりである道や緑(庭等周囲の木々や土地の環境)から考えます。
高いコストを掛けなくとも、小さな家であっても長い間残っていく建物が、緑と共にあることにお気づきでしょうか?有名な「トトロのいえ」もそうですし、近所にある100年経過した家のそうです。庭がしっかりある家が長く存在していることが多いのです。もの言わぬ緑を大事にする心は、周りの環境や人への気遣いも同じように大事にするでしょう。その気持ちが「愛情」なのかもしれません。
多少家が小さくとも、庭や畑、敷地に余裕があれば何とかなるものです。古民家を移築や再構築する方の全てが、庭があるところに建てます。都心の狭い庭が取れない土地に民家を造る人はいません。民家とは、それと一体のなった周囲の環境に同化するのことなのではないでしょうか。

都心のような高度土地利用必要なところは、個々に庭が無い集合住宅(借家含)がふさわしいでしょうし、事実住宅寿命が長い国でもそのような都市計画です。がしかし戸建て住宅が無理なく建てられるようなローカル地域では、庭が無ければやはりその家の寿命は長くなるとは思えません。それほど緑(庭や家の周囲の緑の環境)が重要と考えます。

緑の家の概要

● 緑の家は自然素材を多用します。
特に手足や脚の触れるところには無塗装の木を積極的に使用します。人間は五感で生活しており、その中でも触、匂、視 はとても重要で、その三つの感覚を満たしてくれる素材は無塗装の木が最適であるからです。なぜ無塗装で木を使うかはこちらをご覧ください。

● 緑の家は快適な生活を大事にします(超高断熱・高気密)。
これは家の温熱環境を住人がコントロールしやすい家造りのことです。寒い時にはほんの少しのエネルギーで快適な温度が保て、蒸し暑い日には1台のエアコンでカラッとできる家であり、窓を開ければ風が通りやすい家造りです。このような家の構造を自然素材だけでは作ることは難しいので、家の目に触れない内部には合成素材(気密防湿シート)も使います。この素材なしでは温度差が20度以上もある家の内外の環境に耐えられません。20度以上の温度差はちょうど冷蔵庫内と部屋の温度差と同じです。

● 緑の家は安全を何より一番に大事にします(耐震等級2以上・耐雪1m以上)。
どんなに自然素材が豊かに使われていても、また古い立派な古民家であっても、地震で家が倒壊してしまうのでは家とは呼べません。緑の家は何よりも人命に直結する耐震性を最優先しています。その為、全棟国の定めた詳細な安全確認方法である「許容応力度計算」による構造計算をして、誰が設計者で家の構造に責任を持つか明確にします。この耐震性の強さは、住宅性能表示の「耐震等級2」以上を基準として計画されております。

● 緑の家は耐久性や維持管理性を大事にします(高い基礎・広い床下)。
背の高い基礎には二つ理由があります。一つ目は薬剤に頼らない防腐防蟻を計画する為。二つ目は床下内を高くとり、メンテナンスを簡単にするためです。この独創的な構造は事務所設立以来、変化ありません。