2011.1.17作成
事務所設立以来14年間エアコン暖房をお勧めしてきた。またそのご縁で3年前に住宅に設置するエアコン選定に関する論文を書く機会に恵まれ、エアコンの事をもっとよく知ることができた。本当に感謝である。
最近山間部や雪深い地域でも暖房器具として認知され始めてきているが、やはり昔の経験上、ほんとに大丈夫なのかを心配される方もいると思うので、すこし当事務所のエアコン暖房の事を説明する。
エアコンのバイブル!まず基本はこのマニュアル
エアコンの機種選定のバイブル
国内で販売されるエアコンは全て下の規定で取り決めがされている。エアコンのカタログやエコポイントで馴染みのあるCOPやAPFも、このマニュアルで規定されている。またエアコンの能力特性もほぼこの規定の算定式で予想できる。
家庭用エアコンはこのマニュアル抜きでは語れないし、これを無視した勝手な思い込みは×である。
よってこれらのマニュアルは私が論文を書く時に大変参考にさせて頂いたのでボロボロで、多くの書き込みがされている(下写真にはその跡がある)。
現在はこのバージョンアップ版であるが、基本的な取り決めはこのバージョンでも同じ。興味がある方は購入しては如何だろうか?検索すれば購入ページに行き着くはず。
尚、一番左にあるJRAが全ての元になっているのでまずそちらをお勧めする。
COPとAPF、どっちが重要?
JRAのAPF算出規定
標準(定格)のCOPと中間時能力のCOP、低温時の能力COPの3つから式のよってAPFを算出。
たった3ポイントを測る事でAPFは算出される。
答えはCOP。←私的には・・・(違う評価の人もいらっしゃるでしょうが)
カタログに表記されるCOPは実測によって求められるが、APFはそのCOPによって計算で導かれる。だから私は元になったCOPをまず見る。でも決してAPFがいい加減な数値ではなく、APFはそのエアコンの特性を知る上で重要な数値。だからこそトップランナー-方式に採用されている。
ではなぜ「COPを見る」かというと、
最近の家は断熱性が向上して従来のエアコン定格算出の条件になった無断熱の性能の家に比べ5倍以上も断熱性能がある家も多い。と言うことは単純に6帖用エアコンであれば6帖×5倍=30帖までこのエアコン一台でも大丈夫と言うことになり、その帖数での特性を表したAPFはそのまま当てはまらないようになっている状況である。またAPFはその設置条件が東京。この地域では暖房負荷が新潟より著しく少ない傾向があり、負荷が大きいとエアコンの効率特性が変わる事が考えらる。
つまり条件が大きく変わると、ある条件を全て決めて算出されたAPFは目安にする事ができなくなるため、私にはCOPの方がわかりやすいのである。
設計者のようなエアコン特性と家の性能をある程度リンクする事ができる業種では、計算で算出したAPFより、その元になった実測値COPの方が理想的配置や台数、特に経済性を推測しやすいのである。
重要な「COP」の特性は決まっている!
この図はJRAから抜粋。これ以上は差し障りがあると思うので載せられない。下にCOP部分だけアップにした画像を載せると・・・
この図はインバータ付のエアコン(全メーカー)の特性を表す。X軸は外気温でY軸はそのCOP。性能は直線で表され、氷点下になっても急にCOPは下がらない。この特性があるからAPFがたった3点のCOPから算出できる。これは何度も行われた実測で確認されエアコン業界で共同で作られた。無論JIS規定もこれをそのまま使用している。細かい差異はあるがこれが住宅用エアコンの特性である。
さてエアコンは外気温が低くなるとその能力が下がることは、当HPの読者なら何となく知っていると思う。それは上のグラフでどのメーカーエアコンも同じように表される。所謂、冷媒が代替フロン類ヒートポンプの特性である。
まずCOPは2つの直線で表される。それは室外機に着霜した時と、着霜しない時の能力直線である。
このグラフでは2つの直線が重なる外気-1度から8度がある。これは外気温の他に湿度、負荷が関係し大変難しくなるので一般的な条件で外気温5.5で着霜すると決めてある。するとCOPの直線は黄色い線のような5.5度でカクッと下がるCOP直線となる。
さて注目してほしいのは、着霜したからといってエアコンは急に大きく能力が落ちる事はない。能力を計算すると無着霜よりも12%悪くなるだけ。更に外気温0度より低くなると、その後は-5度までは逆に下がり勾配が緩くなる。これはどのエアコン開発者も同じように言っている。
「外気温0度から5度の雪が降っているまたは降りそうなところがエアコンとしては一番苦手」と言うこと。この条件は霜が一番つきやすく能力低下が顕著とのこと。だから図のとおり下がり勾配が一番きつい=下がる。
逆に外気温がマイナス下では霜がつきにくくなるとのこと。つまり0度以下は外気が下がることでの能力落ち込みが少ない。
事実4年前の実測で、当自宅の厳寒期のエアコン特性はCOP3前後であり、冬期シーズン平均でCOP4を超えていた。
上式を計算するとわかるが、着霜時は着霜しないCOPの0.88となる。
仮に着霜が始まったらCOP5だったエアコンは4.4に、4だったら3.5にさがる。逆に12%しか下がらない。これはどのエアコンにも当てはまる特性。※
※最近は蓄熱利用タイプがありこれはどう計算するのだろう。またツインコンプレッサーの場合は別の計算式が用意されている。ツインは多分COPのトップが二つ来るのだろうか?
寒くなると(氷点下)エアコン暖房が心配なのか?
となるとどうして氷点下になるとエアコンが効きにくいと思うのだろう。
それは間違った設置や能力選定にある。
理由は2つ
1.気温が下がれば負荷が増える。負荷が増えるのに外気が低いためエアコンの能力が下がる。そのダブルパンチで着霜時間が早くなり除去時間が増え、除霜のためエアコンが止まる。=温風がでない時間が長い。
2.外気温が下がっている時の新潟県は、雪が沢山降っている。その雪で室外機が埋もれ効率が著しく下がる=能力低下。さらにその為着霜時間が早くなり止まる。
もうおわかりだろう。
1の事は当たり前。高気密高断熱で性能が高いからエアコン一台で暖房できると言って本当に一台しか設置していない工務店さん建設会社さんがいるが、これは殆どは誤り。暖房できる事と快適と言うことは違う。当事務所では負荷計算でエアコン1台でも可能な家の性能でも必ず数台ついている。この方がランニングコスト安くなる事以外に、一年で一回あるかないかの厳寒期でもエアコンが止まる回数が少なく快適過ごせる。その選定は必要な負荷に対しエアコン低温能力で3倍くらいが目安(長岡市 Sプラン時)。
例えば
外気-2度、室内22度 その差24度 長岡市
Q値1.9の100m2の家は 1.9*100*24度=4560W
エアコン低温能力4.4KW(6帖用定格2.2W)でしたら3台が目安
2.が最も重要。エアコンは大気から熱を奪い取る関係上、室外機の通気は最も大事な要素。エアコンの設置方法の注意と書かれたマニュアルでは、室外機の前面ふさがれるだけで2割も能力が落ちるとの注意書きもある。これは着氷による能力低下より大きく最大の低下原因となる。雪に埋もれない位置、場所とし、雪が室外機に積もらないようにする事が重要。また室外機に直接雪が積もると暖気に溶けた水が室外機に入り込み、氷壁を作る。すると前面をふさがれた状態となり場合によっては故障する事になる。
新潟県では氷点下と言うことは大雪警報が出るくらいの大雪の時。すると24時間で積雪が1mも降るところはざらにある。
つまり室外機が雪で埋もれて能力が極端に落ちる=エアコンが効かない と言うことになる。
まとめ
新潟県のエアコン暖房で重要な事(-5度までの地域)
1.能力、台数選定は家の負荷の3倍が目安※(エアコン2度能力で算定)
2.エアコン設置は雪が掛からずに埋もれない計画とする。
※・・・Sプランの-5度地域。SSプランなら-5度地域なら2倍が目安。
一年に7日もない厳寒期にあわせてエアコンを能力選定すると、結果冬期多く占める普通の寒い時期のCOPも上がる。これはエアコンが定格の半分くらいが一番良いCOPとなるため。エアコンの事をしっかり理解していないと、間違った設計で
大変なミスとなる。
今や家の設計者は設備もしっかり熟知していないといけない時代になった。 エアコン暖房ではゆとりの台数がランニングコストが下がりやすいし、厳寒期でも快適性を維持できる。
具体的な台数などはここのブログでもご紹介している。