新住協で販売しているQPEX(キューペックス)という非常に優れた安価なソフトがある。このソフトは北海道の室蘭工業大学の研究室で開発され、建設会社や設計事務所が、計画した家の熱損失係数Q値や暖房費をシミュレーションできる大変優れたソフト。しかしどんな優れたソフトでも使い方を間違えると建て主さんに間違った情報流すので注意が必要。
QPEX(キューペックス)とは?
Q1住宅を簡単に計画するために、室蘭工業大学の研究室が開発し、新住協(新木造住宅技術研究会)で運用管理をしているソフト。このソフトを使うと難しい入力しなくとも、
①熱損失係数Q値
②年間暖房用消費エネルギー
③年間暖房用CO2量
が計算できる。手軽に算出できる事はすばらしい。
Q1(キューワン)住宅とは?
Q1住宅とは、
北海道の室蘭工業大学の鎌田紀彦先生が提言された「暖房費が次世代省エネ基準の断熱性能で使用される暖房費の1/2(本州では1/3)に削減する事ができる家。
地球温暖化防止が強く叫ばれ始めた2007年頃に始まった、北海道を中心として新住協の新たな家造りと記憶しております。簡単に述べると断熱気密性を飛躍的に高め、南窓からの日射を積極的に暖房として使い、換気も熱交換型とした家です。
QPEX(キューペックス)あくまでも比較用
さて本題ですが、
QPEX(キューペックス)自体にに全く問題はありません。使う人によって問題が出る場合があるという事。これはどんなソフトでも同じですね。
問題とは・・・
QPEXで算出した年間暖房用消費エネルギーは入力ミスがなくても実際と違う事が多々ある。だからQPEXが出した年間暖房用消費エネルギーはQ1住宅の条件であるエネルギー削減の比較がメイン用途となる。
と言う事。なぜか?
QPEXの入力情報では、その計画した家の周囲の状況および生活習慣が入っていない事。でもこれはQPEXが悪いのではなく、使う人が考慮すべき条件だから。QPEXはあくまでもQ1住宅住宅を造る比較用ツールである。建て主に暖房費がこのくらいとはいえない。そこを間違えてとらえる会社がある。
まず、例えば実際の家を考えると
平屋6棟が配置された上のような北向き道路の分譲地がある場合、A棟の南側窓から入る冬の日射はQPEXで想定する日射エネルギーの約20%~30%位しか期待できない。これは、冬の日射の太陽高度が低いので、隣の家で日射を遮られてしまうから。
特別の条件ではなく、新潟で計画される敷地45~75坪では当たり前に起こる現象。だから一番太陽の日射がほしいときに実際は入らない家も多い。
また、西東の窓はもっと条件が悪い。北南より隣棟間隔は狭いのが普通。となると、ほぼ日が入らない窓が多くなるが、QPEXではあくまでも「野中の一軒家」で計算する。これはあたり前であり、市街地の周囲の建物状況は設計者(入力者)が考える事であるため。
次に、仮に南向き道路の分譲地で冬期の太陽も南窓から入る家でも、多くの家がレースのカーテンをひいて目線を遮る習慣がある。これは、隣地(家、人)からの視線を遮るためである。こちらの方が実は問題である。Q1住宅比較用のためでも、カーテンを閉められると比較条件が崩れる。つまり建物周囲状況により常にカーテンをひく習慣がある場合、南窓を多くしても消費エネルギーは思ったように減らないのである。
QPEXが期待する窓からの日射エネルギーをそのまま建て主に家の性能と伝えると、実際は日射が入らず、計算で算出された暖房用エネルギーの値にはならない。
そこを理解しているかどうか・・・。
QPEXでカーテン有りと無しを比較する
Q値 熱損失係数 | 暖房用消費エネルギー | 比率1 | 比率2 | その他 | |
---|---|---|---|---|---|
レースカーテン無 | Q=2.66 | 10,070KWh | 0.94 | 1 | 次世代省エネ基準 |
レースカーテン有 | Q=2.66 | 10,672KWh | 1 | 1 | 次世代省エネ基準 |
レースカーテン有り | Q=1.38 | 3,863KWh | 0.36 | 0.51 | 1/3にはならず |
レースカーテン無し | Q=1.38 | 3,209KWh | 0.30 | 0.51 | |
レースカーテン有り | Q= 1.1 | 2,358Kwh | 0.22 | 0.41 |
カーテン無し有り共に西東窓は隣家想定η=0.39
仮に106m2くらいの総2階建て住宅でシミュレーションして見ると・・・
上のような表のとおりである。
同じQ値の家でもレースカーテン有りと無しでは2割も違うエネルギー消費。また熱損失係数Q値を1.38まで高めた家では、Q1住宅を満たすのはカーテンがないと想定した家である。しかし実際はカーテン無しは特殊条件であるので、カーテン有り同士の比較でも検討をすると、カーテン有り同士を比較するとQ値をもう少し上げた方がQ1住宅の定義に合致する。仮にQ値1.1にするとカーテン有りでも問題なくエネルギーを1/4以下にできる。
比率1は「次世代省エネ基準でのエネルギー」に対するエネルギー消費比率
比率2は「次世代省エネ基準でのQ値」に対するQ値の比率