2010.2.12作成 02.18修正
12日作成時コンクリートの「呼び強度」と「耐久性基準強度」を間違えて表記しておりました。ご覧頂いた皆様にはお詫び申し上げます。
べた基礎や布基礎の違いは、今や建て主さんが最も気を使うところ一つ。しかし、長期間使用する家として国が認定する=長期優良住宅は、そんな基礎の形状はどちらでも良いと決まっている。しかしコンクリート強度は30N/mm2以上とが推奨されているのは知っているだろうか?
そのコンクリートの強度とはいったい何だろうか?
コンクリートの強度とは?
先に宣言すると、
コンクリート強度は高い方がよい!と言いきります!
ちなみに緑の家のSSプランの強度は30N/mm2。
ここで言うコンクリート強度とは、呼び強度コンクリートの強度のこと。っていったい何?となりますが、コンクリートは作りたてはご存じのようにドロドロしている。これが時間の経過とともに堅くなってよく目にするコンクリートとなる。コンクリートは数年程度は強度が上がりその後数十年間安定し、今度は少しずつ強度が下がる素材。
だからどの時期の強度かはっきりさせる必要がある。そこで建築で定義する強度とは、コンクリートが打ち込まれてから28日経過した時の強度のことで、この時の強度になるように調合された「コンクリートを呼び強度」※と呼ぶ。
※但しコンクリート呼び強度は統計的には94%の実現率で、確実に必要な強度である設計基準強度とは異なる。設計基準強度は呼び強度プラス3で考えることが日本建築学会の基準書では表記されている。
設計基準強度30N/mm2とはどのくらいの強さか?
これは1mm×1mmの面積で3kgの力に耐えられるということ。小さすぎてわかりませんから1m×1mに直すと3000トン。実際は安全率をみてこの1/3が許容圧縮強度になり、たった1m真四角で1000トンにも耐えられるので、高層ビルの柱が維持できる訳。有名なガンダムの体重が約40トンなので余裕で支えることができる(笑)。
コンクリート強度と耐久性の関係 重要!
コンクリートの呼び強度と鉄筋コンクリートの耐久性には下のような関係がある。
(N/mm2) |
推定呼び強度(N/mm2) | 大規模補修 不要予定期間(年) いわゆる耐久年 |
|
18以下(推定) | - | 12年前の古い公庫基準 | |
18(推定) | 21 | 35 | 4年前の古い公庫基準 (一般の施工会社) |
21(推定) | 24 | 50 | 住宅金融支援機構(国) フラット35 |
24 | 27 | 65 | 12年間採用した緑の家基準 |
27 | 30 | 80 | 緑の家 |
30 | 33 | 100 | |
33 | - | 100以上(推定) |
とても明快です。
実質、国が決めた良質住宅の「(財)住宅金融支援機構」の仕様は呼び強度で
24N/mm2以上(耐久設計基準強度21N/mm2以上と推測されるが表記無)。であるから良い家のコンクリート強度は呼び強度で最低24N/mm2以上といえる。
コンクリートはセメントと水と砂利(砂)で造る。セメントが砂利同士の接着剤となり水がその接着剤を硬化反応させる材料。水は反応の役割なので反応が終了し余分な水は必要なくなり、最終的にコンクリートから蒸発してしまう。
ここからわかるとおり、蒸発して無くなる水の後は微細な空隙となる。よって水が少なければ空隙も少なくなりコンクリートが緻密になる。だから混ぜる水の量を少なくすればコンクリート強度は上がる。この水を量を表すのに水とセメントの比率を使う。これを水セメント比といい、とても重要な指標となる。この水セメント比が下がれば「堅いコンクリート=強固緻密な組織」となる。緻密なコンクリートは中性化※が遅くなるので鉄筋コンクリートの耐久性が上がる訳。簡単でしょう!つまりコンクリート強度は高い方が耐久性がある。
※中性化・・・鉄筋コンクリートはコンクリートの強アルカリで鉄筋を錆から守っている。この強アルカリの性質が主に空気中の二酸化炭素の酸性によって長い年月の間に中性化されること。すると鉄筋はさびる→崩壊
長期優良住宅コンクリート強度
さてようやく本題ですが、
長期優良住宅の基準には耐久性基準強度を30N/mm2(呼び強度ではない)以上にしなければなりません。正確に表現すると水セメント比を50%又は45%以下にしなければならなく、これを強度で表現すると30N/mm2以上になります。
ところがこれはコンクリート造の時の基準で、厳密には木造住宅の基準ではない。
がしかし、木造住宅にもコンクリート造部分がある。そう基礎・・・。強制は無いけれど基礎の耐久性基準コンクリート強度も30N/mm2以上がよい事になる。なぜなら基礎は根本的に修繕するのが難しい箇所というのは、誰でも知っている。だから基礎をあらかじめ100年の耐久性のある30N/mm2以上に設定しておくことは設計者の良心。
そのコンクリート強度も求めれられる対応年数が延びるにつれて変化している。下の図は12年前(平成10年)の住宅金融公庫の基準(国)。 4年くらい前(平成18年)では21N/mm2になり、今は上のように24N/mm2以上。住宅金融支援機構に変わってからこの仕様書を見る人はすくなく、たぶん多くの建築士が今でも21N/mm2のまま取り決めている人が多い。住宅金融公庫又は住宅金融支援機構強度は「呼び強度」なのでご注意願いたい。常識的には呼び強度マイナス3が耐久性基準コンクリート強度になる。
温度補正についての考えはブログにあります。冬期だったら概ねプラス3N/mm2以上が基準で、工期が限られている場合はプラス6補正となる。
コンクリート強度のコストは?
さて、コストはほとんど掛からない。掛かるのは良い家を造ろうと思う気持ちと、技術的な事が理解でき、優先順位をつけられる能力。
呼び強度21N/mm2から30N/mm2へのコスト差額は、一件でたった数万円!※
流れにくいので打ち込みに多少気を使うけれど耐久性のためなら問題はない。
※緑の家は普通の家よりコンクリートを2倍使用しますので、一件で6万から9万違います。
大事な数値 スランプと水セメント比
コンクリート強度以外に重要な数値があります。
それは、スランプ値と水セメント比。水セメント比はコンクリート強度が上がれば水セメント比も良くなる(下がる)のであまり心配ない。が、スランプ値はチェックしたい。
スランプ値とは、高さ30cmの容器にコンクリートを詰め、すぐに逆さにして容器から出したときの崩れた高さのこと。この崩れた高さが少なければ堅いコンクリート。つまり強度が出やすい良いコンクリートとなる。
住宅金融支援機構では
スランプ値=18cm以内
オーブルデザインの緑の家
スランプ値=15cm(12cmの時もある)
こちらも是非チェックみて!
実際のコンクリート配合報告書
赤いところが重要な情報。呼び強度33N/mm2。スランプ12cm以下。水セメント比43%。
基礎に多少コストをかけることは、長期優良住宅の理念に添っており、良いことだと思う。基礎は簡単には直せないので、できる限り呼び強度30N/mm2以上でスランプ15cm以下としたい。