text 2006.11
見えないところが重要④は、今までと違いソフト的な事です。
最近の家→高気密高断熱=当たり前
とハウスメーカーや建設会社の営業マンは説明するでしょう?
しかし、なぜ高気密高断熱が必要か?と問うと実に様々な答えが返ってきます。
最も多いのが
快適だから・・・。
結露しないから・・・。(本当は結露しにくいからです)
次に多いのが
暖房費が安くなるから・・・。(前の暮らしと比較すると本当は違います)
冷房費が安くなるから・・・。( 条件によりますが 〃 )
しかし高気密高断熱住宅を15年前にしっかり学んだ方は、
「高気密高断熱は、暖房する家の必須条件からだよ。勿論庶民のための。」
と答えるでしょう。
そうです。この理解の違いが重要なのです。
家の寿命を縮め、健康被害をもたらす結露は、どうして発生するのでしょうか?ご想像のとおり、暖房している部屋で冷たくなる窓ガラスがあるからです。また暖房している部屋で冷やしたビール瓶にも、グラスにも発生します。これは暖房してる空間で冷たい部分があるからです。「私の家では暖房していない便所の窓でも発生するよ」とおっしゃる人がいるでしょう。これこそ重要な現象を認識しており素晴らしい観察力です。そうです。現在の家の中は、一部屋暖房していれば全て暖房空間として捉えることになるのです。もしこのとき、便所の窓が開いていたら結露は無かったでしょう。しかし窓を開ければ異常に寒く、外気と同じになるため、少しでも暖かくしたいと考え皆さんは窓を閉めます。すると暖房していない場所も暖房空間と同じ状態になります。何が同じ状態かというと、空気中の水蒸気の量なのです。
さて、ここから学べる事は、暖房をしている家の中で、冷たいところを造ってしまうと、そこに結露が集中する事なのです。昔習った理科の授業で、「暖かい空気はより多くの水蒸気を含むことが出来、冷たい空気は水蒸気を多く含めない」という事を思い出してください。これは自然の摂理なのです。このため暖房する家では、その全てを暖房しないかぎり結露が発生し、家を腐らせ、住人の健康を脅かすのです。従って暖房を望むなら家中暖房を前提に家造りを考えることになります。
そこで「家中暖房したら暖房費が大変」と思われる方がほとんど。そこで高気密高断熱の答えが出てきます。高気密高断熱とは、家中暖房した時に、暖房費を抑える技術であり、暖房費がいくら掛かっても良い人にはあまり必要無い技術。つまり暖房費が多く掛かっても問題ないと思われる大金持ちの人には、この技術は必要ありません。全室全館床暖房、結露で家がだめになったらリフォーム、又は建替え、買い増しすれば問題ない人たちだからです。例えば公共建築などがこれにあたり、暖房費はあまり気にしません。暖房費はできるだけ抑えく、快適過ごしたいと思う人は、高気密高断熱にすれば良く、高気密高断熱住宅は、庶民のための技術であるといえるのではないでしょうか。
さて、「高気密高断熱がなぜ必要かはわかった。次にどのくらいの断熱性と気密性があればよいか?」になると思いますが、これは上の内容を理解した人ならわかると思いますが、暖房費をいくらぐらいまでなら払えるか?に置き換えればよいのです。概略ですが、新潟県の平野部でエアコンによる家中暖房を24時間冬季におこなった場合、40坪くらいの「緑の家」の標準仕様では、月平均暖房費は1.5万~2万です。緑の家の標準断熱性Q値は2.0W/Km2、気密性は0.8cm2/m2以下。この1.5万~2万の暖房費が高いと思う方は、Q値を小さくすれば良いでしょう。(気密性は2.0cm2/m2以下であるとほとんど暖房費、快適性に変わりない)この数値を基準に、断熱性能、気密性能を決めれば望む暖房費の家が手に入り、どのくらいの高気密高断熱が必要か設定できます。勿論、住まい方で暖房費は変わります。実際、室温を18~20度と低めで生活されているかたは、1万~1.5万/月平均程度の方もいらっしゃいます。
暖房費は以前の我慢して暮らしていた暖房費よりあがる事は普通です。特に共同住宅等で暮らしてきた方は、暖房費は月々1万もかからないという人も聞いており、それから見ると1.5倍にもなります。しかし、今まで冬が寒くて嫌いだった人が、冬も好きになるくらいの居住環境を手に入れることができます。なんとすばらしい事か・・・と私は思います。
高気密高断熱は、断熱材を厚くし、隙間を塞ぐ事である程度誰にもできます。
しかし、なぜ高気密高断熱が必要にだったのかの理解が違うと、思わぬ欠陥につながります。
良くある間違った話が、
1.断熱は重要だけど気密はそう高くなくても良い。だから自然素材が良い。
2.暖かい家なので小さな暖房機1台でいいよ。
3.気密性が高いので、家の中で洗濯物を干してはいけない。
4.高断熱高気密性は、数値ではQ値2.7 、C値5以下であれば国が定めた次世代基準値以下なので大丈夫。
5.この輻射熱反射断熱材は、国はまだ認めておりませんが、非常に高い効果がある。
とかである。
1は詳しくはこことここで以前解説していますが、簡単に申し上げると、
気密性のない断熱は考えられません。よく走る車を引き合いに出しますが、冬でも断熱性のほとんどない車が車内を暖かく維持できるのは、気密性があるからです。窓を少しでも開けて走れば、寒くて大変でしょう。時速40kmは風速11m/Sに相当します。新潟県の真冬は風速10m/Sの風が吹く日が半分以上と言っても良いくらいですね。つまり家は時速40kmで走る車と同じ状況です。断熱材がほとんどない車でも窓さえ閉めれば温かいのです。その大事な気密性をいい加減で良いという事は、何も考えていない方です。
また自然素材だけで高断熱を造るんだ!!と言っている人も同じです。人間のエゴで地上では存在しない22度温度差(海上ではありえる)もある人工的な環境を造っている事を理解すればわかると思います。人工的な素材が1つ以上入れないと成り立ちません。例えば冷蔵庫などが温度差を人工的に造る身近な代表例ですが、これに置き換えるとわかりやすいです。夏は庫内温度が5度から7度、外が30度とすれば、「暖房している住居と屋外」と同じ環境です。誰もが想像できるとおり、このような温度差が22度もある状態では、木や紙、羊毛やなどの人工素材だけで外部と内部を効率よく遮断する事は不可能です。必ず人工素材(例えばビニール、発泡スチロール)が必要です。
2.はある意味そのとおりの場合があります。しかしその条件は厳しく、例えばFF式ストーブ1台の場合は通常7KWくらいの暖房能力があります。その能力からするとしっかりした高気密高断熱(緑の家のQ値2.0、C値1.0以下)であれば40坪くらいの家を外気温-2度の時に暖められる事ができます。が、それはワンルームのような仕切りの無い家のばあいに限定されます。いかに断熱性のが優れた家でもFFストーブが発生する熱を間仕切り壁やドアを越えて均等に配布する事は出来ず温度ムラが数度(3度から9度くらい)は起きます。つまり22度のリビングと15度くらいの個室が発生します。(これでも暖かいと思う人もいらっしゃいますが・・・)
私も15年くらい前には、FFストーブ1台で展示場を造った事があります。1台で暖房する事で、来た方には非常にインパクトを与えるためです。温度差も2度~3度にする事ができます。しかしこれは、吹き抜けのある家で且つ個室の戸を全部開けて暖房した場合で、実際生活すると戸を閉めて暮らしたい時もあります。すると温度差が3から9度ついてしまいます。居間が22度だったら個室は13度から18度です。そんな差だったら問題ないと思う人もいますが、人間は結構温度差に敏感です。3度以上温度差がつくと多く人が不快と感じます。
3.はここで解説しています。
4.は上の解説でわかるかと思うますが、国で定めた基準Q値2.7では、暖房費が緑の家の1.4倍になると予想されます。このときかかる暖房費は、新潟県の平野部でエアコンによる家中暖房を24時間冬季におこなった場合、40坪くらいのでは、月平均暖房費は2万~3万です。私には高いと感じられます。よって国の基準より更に性能を1.4倍くらい高めた「緑の家」の標準くらいはほしいと感じております。(エアコンではなく灯油70円/Lによる暖房の場合は、もっとかかる)
5.はここで解説しています。
このように当たり前のような技術でもその理解によって大きく変わります。見えない部分にこそ気を使う事が建築士としての役目です。
公的な基準では・・・
行政では・・・。(どの基準もそうですが、国の基準は最低基準を定めていると思ってください)
国では次世代省エネルギー基準を設け、建築主さんに案内している。(強制や義務ではなく、判断基準)新潟県の平野部ではⅣ地域に指定されQ値が2.7W/m2K以下、C値が5.0cm2/m2以下となっている。(山間部では、Q=2.4、C=5。いずれも以下)
写真はオーブルデザインの緑の家の施工中の写真。この建物は軒の出が無い。ダブル通気同縁や、気密シートなどがわかりやすい瞬間。
オーブルデザインの「緑の家」は人が触れるところや見えるところでは、自然素材を多用しますが、性能を維持する壁の内部は躊躇する事無く、最先端の人工素材を使います。