TEXT 浅間英樹
2005.02.14更新
新聞には住宅用宣伝チラシが数多く入ってきます。またインターネット上では様々な情報が飛び交い、建て主の方にはどの情報がいったい確かなのかと思う方も多いと思います。その中で最近目に付きどうも変だな?と思うことを取り上げたいと思います。
一つ目は「遮熱の家」と題された家のチラシです。
そこには今までの断熱方法はだめで、「遮熱」が良いとされております。
二つ目はインターネット上の情報で「住宅金融公庫の仕様は良くなく当社の方法ががよい」といっているサイトが数多くあります。具体的にはシロアリ関連の内容であったり、集成材の柱、梁のことだったりします。
このいずれの内容にも共通して言えることは、国で精査された「住宅金融公庫」の仕様を良くないように批判していることです。「遮熱の家」では、今までの断熱方法ではだめ。これからは「遮熱」。と謳っています。住宅金融公庫の断熱気密仕様はその分野の第一人者が監修したすばらしいものです。もし否定されるならちゃんとした根拠を示す必要があります。こういった同じようなことは過去にもあり、あの有名な本「地上最大のミステイク」でした。その本では内断熱(充填断熱のこと)は欠陥で外断熱が良いといったことがかかれておりました。今ではそんな話はそのまま鵜呑みする人はいません。外断熱も内断熱も一長一短があり、選ぶのはデザイン、機能、材料の好き嫌い、コストで決めることです。住宅金融公庫仕様書にも両方が紹介されています。しかし出版当時は、その内容があまりにも偏っているにもかかわらずベストセラーになり、新聞にも紹介されたほどです。建設業界は何かおかしいところがあります。
また、シロアリ関連のサイトでは、他社(例えば公庫仕様でシロアリに食害されやすい木とされにくい木を分けているが、あるサイトによるとあまり関係ないといってきっぱりと否定している)の批判はしますが、ではどうしたらよいかをはっきりと図面(具体化)化していないことがほとんどです。(批判だけするサイトが多いこと・・・)これは危ない、被害にあった、または欠陥の方法とまるで脅しのような写真や内容だけを載せ、ではどういったものが良いかは、設計者の仕事だからとか、それは自社のノウハウだからという理由でのせません。専門的知識の多い人ほど、トータル(家全体)な考えは自信がなく、ある部分だけを否定する。家の部材(工法)で絶対これが良いというのはなく、全てはバランスです。偏った理由で他社を批判すること自体へんな話です。当サイトでもいろいろ批判をしますが、必ず「だから当社はこうする」というものを図で示したり、公的機関の文献で説明したりします。こうした詳細の図面を公開するのは、その批判、対策に対し責任を持つことであるし、自信があることと、そしてそのくらいの情報公開は社会貢献と考えているからです。批判は誰でもできます。これは良くない。こうすると良いとのはっきりした図や公的書物説明があって初めて他方法を批判できるのではないかと思います。
次に、集成材を批判している住宅メーカーでは、集成材は剥がれる、接着剤に問題があると広告しますが、住宅金融公庫監修の第一人者よりも集成材の知識がある人がその批判する企業内にいらっしゃるとは思えませんし、ましてやJAS(日本農林規格)を上回る実験や研究をしているとは到底思えません。なのに堂々とそんな折込チラシを入れております。このチラシを建て主さんはご覧になり、信じてしまうことにも問題があります。自動車に置き換えると、国土交通省の基準では車は安全ではなく、自社の基準が良いと言っていることを消費者が信じているというような状況でしょうか?国土交通省の基準がおかしいと思う消費者は数少ないでしょうが、住宅になるとなぜか国土交通省(住宅金融公庫)の基準に問題あるということを信じてしまう消費者(建て主さん)が多いのです。どうして住宅だけこんなおかしな状況が世の中に作られたのでしょう。もちろん行政の基準もあとで考えると甘いということはありますが、それはごく稀です。その稀な事例で営利企業(生産者)の情報を信用し、国が定める基準を否定するのは、不思議でなりません。
さて、当事務所の造る建物「緑の家」は、住宅金融公庫の仕様に準じて作っており、その中で一部だけ性能強化をしている建物です。これからわかるとおり、当事務所では住宅金融公庫の仕様を信頼しております。なぜなら家は様々なパーツから構成される特性上、よほどの大手企業でない限り、一企業では全てを実験、研究する資金はありません。しかし建てぬしさんには、専門家として自信を持って家を薦めなくてはなりませんから、日本の国の中でその分野の第一人者を委員に選出して創った「住宅金融公庫の仕様」に準拠し、一部は強化することが自信を持ってお勧めできる唯一の方法ではないでしょうか?私は最近、建築学会の論文発表会を聴講、発表しますが、全ての研究が正しい発表を行ってはおりません。問題あるものほうが多いのではないかとも思います。だからその分野の第一人者が集まって論文を精査し、正しく研究されたものだけが、学会の論文集として掲載されます。なのに一企業の偏った実験結果又は発表論文でそれが正しいと思うことはとても大きな危険性があります。でも住宅に限ってはそれがまかり通る不思議な業界です。
最後にこのようないいかげんな実験や結果だけで提案する企業の見分け方ですが、是非2~3年前のパンフレット(ホームページ)を見せてもらいましょう?今とあまり仕様や構造が変わっていないパンフレットのところが良いメーカーです。(まるっきり変わっていないほうがもっと良いと思います)理由もなく大きく変わっているところや法律改定にあわせ仕様を変えているところは「使い捨て仕様」です。「使い捨て仕様」とはそのとき良ければ後はどうでも良いという考えで造られてます。法律改正の数年前にはすでに問題があることがわかっているのが普通ですから・・・。
建て主さんは、30年もその同じ家で住むことになるのに、数年で仕様や構造が変わって今度はこれが良いと家電製品や自動車みたいに言われたら、どんな気持ちになるでしょうか・・・。
著作権上の問題がある場合には、すぐに削除しお詫び申し上げますので、ご指摘ください。
でた~!
ころころ変わるチラシ。
今年のチラシは集成材の「×」から「?」に変わっている。来年は○かな?