業界が震撼! 浴室に換気扇(排気型)はいらない

   2013.11.27作成

4年前から「緑の家」では浴室に循環送風機を設置し始めている。(今までは希望者のみ)

またまた当事務所が凄い提言!40年間以上使われて来た風呂換気扇を完全否定する。

家を取り巻く環境は40年前と変わり、その変化に気づかない専門(建築士)であってはならないと言う事で、少し数年先を行く内容をコラムで紹介する。

風呂場と換気扇 
一戸建ての住宅でお風呂場に換気扇が付いたのは何時か?

1950年代は、内風呂(家の中の風呂)のある家は少なく、多く人は銭湯などに行っていた。1960年になると家の中に風呂が設置されはじめて、1970年には殆ど家でお風呂が設置されるようになったがこの時はまだ換気扇が設置されていない。建築基準法の歴史は詳しくないのでわからないが、昭和45年に換気設備の告示があるのでこの頃から、浴室にも換気扇が設置され始めたと思われる。但し法的には火を使わない浴室は居室でもないので
換気設備の基準(風量)は無い。

窓があるお風呂場に換気扇があるというのは極近年であり、ユニットバスが普及した1980年代以降になる。特に2003年のシックハウス法以降はお風呂に窓があっても換気扇は必ず設けているはずである。しかし法的にはその換気量などの基準はない。

ここでのキーワードは

「法的に換気量の基準がない」

換気と換気扇

地球上での換気とは、「ある空間内」において汚れた空気をその空間から排出して、より屋外に近い空気にすることである。しかし人に害を与える空気でなければ、より外気に近くなくとも外気とは温度湿度とも違っていて良い。したがってお風呂場を「ある空間」とすれば、直接屋外空気を取り入れる必要はないし、浴室の空気が汚れていなければ浴室の空気を屋外に排出し希釈する必要性もない。
ここでのキーワードは

「換気とは汚い空気を希釈すること」

浴室の空気は汚れているか?

浴室の空気は汚れているかと問われれば殆ど汚れていないと言える。多少人が吐き出す息によって二酸化炭素濃度が上がっているとくらいである。シャンプーの匂いや石けんの匂いが気になるというひともいるが、洗浄成分には殆ど香り成分はなく、あとからメーカーが良い香りになるように香り成分をたしたものである。よって石けん、シャンプーの香りが嫌な人は、無香料の石けんやシャンプーを使えばすむだけのこと。というより、嫌いな匂いのシャンプーを使えば、お風呂から上がったあとも自分の髪の匂いの方が気になる。よって好きな匂いを選んで使っているから、お風呂場の匂いは汚れではない。多分、過去に浴室に焚き釜があったころの名残で、浴室=空気が汚れていると思い込んでいるところがある。

ここでのキーワードは

「浴室の空気は綺麗」

なぜ換気扇を風呂場につけたか?

最初に換気扇が付いたお風呂はマンション、共同住宅などの窓がない風呂からだろう。元々日本の多くの地域では、夏の風呂は窓が無いと大変不快である。つまり暑すぎるのだ。だから一戸建て住宅では窓のない風呂は殆ど無く、必ず外壁に面したところに風呂があった。一方マンションは、窓がある風呂の方が珍しく、換気扇を設置する事で夏の熱気を緩和していた。換気扇を設置して見ると、窓がある風呂より乾燥が早い時もあり、換気扇の効果は認知され、同時に防犯上窓を開けることができなくなった都市部では、風呂に換気扇が付くことが標準となった。ここで換気扇設置の重要なキーワードは

風呂の換気とは「夏の暑さ軽減」

「乾燥のため」

風呂場に換気扇をつける目的は?

上ではっきりしたが、換気扇設置は暑さの軽減と風呂内を乾燥させるためである。その中で空調設備がある現代では、暑さ軽減の効果は少なくなり、唯一の目的は浴室を乾燥させカビ類が生えないようにする事である。

ここでのキーワードは

「乾燥の目的はカビ等を生えさせないようにする事」

湿気(水蒸気)と霧(微細な水滴)は全く別物

風呂場の浴槽の蓋を取ると真っ白な湯気が上がる。この目に見える白い湯気は結露した「霧」であり湿気ではない。湿気も同様にバスタブから発生しているが目には絶対見えない。ここを間違うと大変な事になる。湿気は空気中に溶けているので目には見えないのだ。もし見える人がいたならご一報願いたい。きっと世界七著名人になれる。
霧は結露した水の微細な粒だから再び湿気になるためには気化熱が必要となる。湿気になるため(気化する)ため、空気中の顕熱を奪い気化する。その気化熱を奪われた空気の温度は下がる。この原理は既におわかりだろう。湿気になった水滴は気化熱を空気の中から奪い取った水である。一方水滴は気化熱を持たないただの水である。

ここでのキーワード

「湿気と水滴は別物」

風呂場を乾かす事とは、水滴を湿気に変える事

風呂を乾かす事=壁や床の「水滴」に熱を与えて湿気に変えてやること。水滴は熱(=気化熱)が無ければいつまで経っても液体の水か氷のままである。
液体から気体に変わった湿気は、その空気から奪った気化熱を持っているので、
湿気を排出する事は、屋内の熱を捨てると言うこと。

ここでのキーワード

「乾かす事とは、気化熱が空気中から奪われること」

冬の換気とは室内の熱を捨てる事である。

もうおわかりのように、湿気は熱そのものである。だから換気で湿気を捨てると言うことは、熱を捨てる事と同じ。そこで冬期の家は熱を必要とするのであるから、わざわざ湿気を捨てる事は大変なエネルギーロスである。この湿気を排出しないで家に残す事で、冬期の湿度アップを狙ったのが「緑の家」の浴室サーキュレーション(循環)ファン、略してCFである。4年ほど前から換気扇に変わりCFを計画し、既に多くの実績を持つ。

ここでのキーワードは

「冬は湿気も熱として活用」

夏の換気扇の役目は・・・?

冬は理解できるが夏は換気扇がいるのでは?という気持ちがあるだろう。確かに換気扇の設置目的の一つが「暑さ軽減」である。
しかし思いおこしてみると、夏でも換気扇を回しながら入ることは最近はめずらしい。というのは、「緑の家」では、夏は全館空調にになるので、脱衣所も涼しくなる。だから浴室が多少暑くとも、その部屋から出れば涼しいとわかっているので、浴室の暑さはあまり気にならない。また・・・
拙宅は24時間空調の夏の家でもう20年以上、夏でもお風呂の入り口を開けて入ることはまず無い。戸を開けると寒いのである。27度で60%の空気(拙宅はこのくらい)が裸の濡れた人にあたると寒いのだ。だから開けっ放しでは入らない。そこで通常、換気扇を使うのは入浴後であることがわかる。入浴後になぜ換気扇を回すかといえば、それはやはり乾燥のためと言う事になる。無論、その乾燥させる目的は・・・カビと腐朽菌の対策である。

ここでのキーワードは

「浴室は早期乾燥状態を作る事が夏でも必須」

乾燥の理論

ではその大事な浴室の乾燥とは・・・
無塗装の木の部位を除くと、浴室の壁天井、床に付いた水分を湿気に変えて空気中に拡散させると言うこと。
ではどのような状態が乾燥を促進させるか?

①空気や壁、床、天井の温度が高いこと
②相対湿度が低いこと

となるが、必然的に空気の温度は室内空気か屋外空気となってそれ以外は普通選べない。また壁や天井、床の加熱は一般的ではない(「緑の家」では冬期の床の加熱はある)。よって②の相対湿度を低くすることに力が注がれる。その行為が送風と呼ばれ現在の標準となっている排気型換気扇である。送風が無ければ浴室の空気の温度は気化熱を奪われ、どんどん下がり、この事と気化した湿気のダブル効果で相対湿度は直ぐ上がる。だから大量の熱(空気)を送り込まないと、乾燥は直ぐ阻害され結露して又水に戻る事もある。送風こそ乾燥への条件である。

ここでのキーワードは
「乾燥は湿度を下げる大量送風が決めて」

カビの季節の梅雨ほど送風量大が効果的

以上乾燥の事がわかると、総風量が多いほど浴室の乾燥時間が短くなり、結果カビが生えやすい環境が短時間ですむ事になる。だから浴室を乾燥させたければ送風量を
多くすることしかないはず。従ってどんな性能の家でも50m3/h程度の送風より100m3/h以上の送風の方が早く乾燥することに異論はないはず。

ここでのキーワードは

「送風量アップこそが早期乾燥のきめて」

排気型換気扇では送風として役不足!!

早く乾燥させるためには大送風が唯一の手段であるあることは明白(浴室暖房を除く)。ここで送風とは浴室内の空気の入れ換えであり、その量は多いほど良いとさせるが現在では排気用換気扇のため、送風量を多くできない。量を多くすれば暖房時期や冷房時期では通常隣室である脱衣所から空気を取り入れるため、その部屋又は家全体が寒くなったり暑くなったりするためその排気型換気扇の総風量はせいぜい40~70m3/hである。
これでは乾燥には少ない・・・できればこの倍の120m3/hあればもっと早く浴室は乾く。

ここでのキーワード

「排気型では送風量を多くできない」

浴室に換気扇を止め循環送風機CFを!!

実は簡単に120m3/h以上の送風ができる方法がある。そう、「緑の家」でよく使う循環送風機Circulation fan(CF)である。このCFを設置されば全ての問題は片付き、そればかりではなく経済的にもよいのである。

冬にCFのほうが理に叶っている事は言うまでもないだろう。浴室で発生した全熱は家中にもたらされる。脱衣所が湿気っぽくなるのは過去の家中暖房していない家だけ。湿度も上がり新潟県であれば厳寒期に相対湿度50%を超える事も可能。

脱衣所側のCFの様子。電気業者さんは??と首をかしげる。常識でないCFの設置

理論で考える。排気用換気扇は過去の物!

さて一番重要な夏の空気を冷静に考えよう。

まず外気の平均気温 新潟市8月11日(2007年)温度29℃、湿度70%・・・A
一方室内の空気は 温度28度 湿度55% (「緑の家」)・・・B

一般的な風呂換気は熱交換換気ではないからBの空気を捨ててただけAの空気が入って来ると考えよう。

湿り線図ではAの空気エンタルピー 75KJ/kg
Bの空気 〃       60KJ/kg だから

この差15J/kgとなり、

早く乾かそうと換気量120m3/hにした場合、排気により家に暖かい外気が給気され2160KJ/hが流入する。
これを仮にCFに変えて行った場合は、CFの消費電力分の3w相当のたった10.8KJ/hしか加熱されない。※

排気換気扇の0.5%で済む計算。仮に排気量60m3/hでも1%の熱量で済む。

この60m3/hを24時間行った場合25800KJ=7.2KWhの熱量となる。凄い熱量流入である。

なんで・・・と思われた人も多いだろう。

※・・・他が熱交換型換気扇だから給気にプラス熱交換されて入るから良いのではと考える方もいるだろうが、120m3/hも給気が多くなりすぎバランス崩れ、熱交換率が下がり結局はある程度の熱が流入する事に変わりない。

さあ、冷静に考えよう。

さあ、興奮を抑えてもう一回冷静に考えよう。

循環送風機を使った場合、風呂の壁、床、天井の水分(湿気ではない)は、気化熱がないと湿気にならない。この気化熱を壁や天井や床または空気から奪い気化している。気化熱を奪われた壁、床、天井はその奪われた熱分が冷される。その後結局は空気が冷えるのであるが、一時的にはそう見える。

もうわかったと思うが、「緑の家」=高気密高断熱の家は閉じた空間であるから、浴室を乾燥させるということは、顕熱が潜熱に変わっただけで家の中の全熱量は変わらない。

ところが、排気型換気扇を使って乾燥させると2150KJ/h相当の熱が常に入って来ることになる。つまり熱負荷が増えるのだ。

そう、排気型換気扇は家を密閉する事や、エアコンのような湿気を除去する装置が無い時代の旧式な浴室乾燥の考え方法であり、「緑の家」を代表とする高気密高断熱住宅での夏の空調された家では必要無いというより、冷暖房の邪魔なだけである。

では入浴直後の湯気が立ち上る空気はどうだろうか?と言う人もいる。これでも多少は熱が増えるが大勢に影響は無い。
仮に浴室の温度は30度で湿度100%だったとしても、その全熱量は100KJ/kgで、室内空気との差40KJ/kg分の負荷となるが、浴室は通常密閉されて入浴するから、この40KJ/kgの空気が常に室内に漏れ行く訳ではない。大凡浴室5回分程度空気が入れ替わる負荷としかならないと思われるので、

40×6m3×1.2×5=1440KJ/24時間=60KJ/h・・・たった0.4kw/日である。

2160KJ>>60+10.8KJ・・・それでも貴方は室外へ従来どおりの換気しますか?

コロンブスの卵・・・CF(循環送風機)

「緑の家」の夏は、エアコンによる空調を行っているので、通常室温は28℃、湿度55%くらいである。この空気を大風量で浴室に大量に送る事で、排気型換気扇を使っているより短時間で乾く。
言われれば、また考えればそのとおりなはずであるが、昔から決まっていることに、疑問を持たない人にはできない発想。それが・・・
この浴室のCF(循環送風機)なのである。空調している冬夏の合計が9ヶ月にもなるこの日本だからの発想ではあるが、よく考えれば寝室内にバスタブもある欧州なども、昔からそうだったのではなか?確かに彼らの地域では日本のような蒸した夏はなく、且つ地下ボイラーだったので可能だったのだろう。

蛇足であるが・・・
「空調していない秋と春はやっぱり換気扇がいるのでは?」
と思う方もいらっしゃるだろうが、その時でもCF全開運転で問題ない。その季節は脱衣所や他の部屋の窓を開けても快適な季節。湿度も低いのでCFで浴室からの湿気が室内流入しても家、脱衣所に湿気がこもることはないとわかるはず・・・。鏡が一瞬曇るがそれは一時のこと。直ぐに湿気は拡散される。
それでも心配な人、脱衣所に大量の洗濯物を干す家は下の図のように排気用の換気扇も併用すれば良い(これは「緑の家」仕様)。
もうお風呂場に換気扇はいらない。但し、全館空調できる高性能住宅だけであるが。

皆さんも風呂換気扇をCFに変えて乾燥推進、
CF推進病・・・
一足先にお待ちしております。