2009.01.10更新
工事監理について真面目に考える!!
この写真はある工務店のつい最近の施工風景。時期は工事半ばで外壁下地が施工されているところ。よく見ると通気工法が通気「止め」工法になっているような・・・?この施工会社は、数年前は失敗のない住宅造りとチラシで宣伝していたはず。でも自分たちで工事監理(社内で工事監理者を指名すると)大体こんなものである。言葉では何とでもいえるが、馴れ合いになるのでだんだんいい加減になる。仕上がりはガルバニューム貼りなので、通常はプラスターボードがこの上に必要。と言うことは、この横に施工される木が通気胴ぶちとなる。しかしこの面だけでもごらんの箇所が通気止めになっている。このまま仕上げが貼られていた。簡単にいうと工事監理者不在ということ。外壁仕上げにたて溝があり、それらが有効に働くスパンドレル板金だけで防火が取れるダイライト下地のような場合は、PBが省略でき問題ない。しかし、この横胴ぶちで各所に隙間を意識的に設けているところを見ると、外壁自体の通気が有効に働かない方法だと思える。
① 通気工法は、防蟻防腐の要。
最近の住宅(20年前くらいから)は、外壁下に空気が流れる通気工法を採用している。通気工法は、雨で濡れた外壁を乾かし、室内から外壁内に流れ込んだ湿気を排出し、さらに暴風時の壁内外気圧差解消で、雨水が室内に滲み込むことを防ぐ。
また数年前から、シックハウス問題で、建物外壁下地に防腐防蟻剤を塗布することが嫌われるため、この防腐防蟻剤の塗布に近い効果がある通気工法が広く採用されている(ただし効果は防腐防蟻塗布より低いと性能評価される)。だから通気工法がしっかりと施工されていないということは、防腐防蟻措置がされていないことになる、これは建築基準法違反ともいえる(防腐防蟻剤がない場合)。
当事務所「緑の家」の施工風景。通気層胴ぶちが縦横に施工されていることがわかると思う。このしっかりした通気層が小屋裏換気の入り口となる。
② 通気工法はデリケート
通気工法はとてもデリケート。ちょっとした施工間違いで通気が阻害される。その部分を施工した人が気づかないと、どんどん覆われてしまう部分のひとつ。特に第三者の保険機関でチェックするのは、ある一日のある一瞬だけ。だから安全率の高い設計をしないといけない。形だけ優先し外壁が黒くなるようでは、内壁はもっとひどい被害がある。だから「緑の家」のダブル胴ぶち仕様のような安全率の高い仕様が理想的。
通気層がしっかりと通気されていないと、壁に藻やカビが生えやすくなる。
③ 軒の出のない片流れ屋根は危険
上と同じ施工会社の建物の写真。軒の出のない屋根のため、屋根の耐久性の要である小屋裏換気の入り口空気側が取れない。外壁の通気層を利用するのであれば、外壁の通気層がしっかりと取れていないとだめ!!このように軒の出のない建物は、軒裏換気口が取りにくいため、小屋裏の換気が不足する可能性が高い。特に片流れ屋根は、雨仕舞いが悪いため、軒裏換気口はないことが多い。さらに写真のように通気工法が取れていない建物は、壁の通気もないし、小屋裏の換気もまったくない可能性がある。軒の出のない建物は、要注意。
④ 不思議な仕組み
建築基準法では、一般の木造住宅でも「工事監理者」が必要。この工事監理者は、図面と施工が同じかをチェックする人。このチェックが法律によって定められている。「もし施工に問題があれば、この工事監理者も責任を負わなければならない。」と最高裁の判断もある位重要な業務。ところがこの工事監理者という者がいながら、最近は第三者管理(監理)をするという会社があり、関東、関西では多数の実績がある。
ここで文字が監理か管理かで大きく違う。監理であれば法律上の監理者となることが多い。管理であればただの管理である。ただの管理であれば、建て主さんのご了解は不要であるが、監理となればいわゆる「重要事項説明」の説明が必要。いつ誰がどのようにして「工事監理」を行うかを説明し、かかる費用までお伝えする必要がある。これを行わないと法律に抵触することになる。一方「管理」であれば、建て主さんの承諾も説明も要らない。勝手に施工会社の判断で行っていることも多い。だから逆にいえば、建て主さんに特にメリットないはず(施工会社さんの現場監督とあまりかわりない)。
昨今ではこの管理を大々的に「第三者監理」と言っているところもあるし、建物瑕疵保険のための検査を「第三者監理」と言っているところもある。そもそも法律ではきちっと工事監理者がいるのに、さらに「管理」が必要なこの仕組みが不思議。管理する人が何人も何人もいるのは、責任の分散でメリット少ないと思う。図面と施工現場が同じかどうかを見る業務なので、そこまで経費をかける意味は薄いはず。