高気密高断熱とダニ、カビの関係

2007.12.14更新 2014.01.16修正

この時期だから湿気、結露について真面目に考える!!

早いものでもう年の瀬。今年のコラム最後飾るのは、湿気と結露を真面目に考えると、「アトピーや喘息に対して高気密高断熱技術(家中暖房)はなくてはならないものと言う説明。その前に基本的な湿気と結露と空気の温度の関係をおさらい。

先日行われた見学会におこし頂いた方の中で3組に同じ事を申し上げた。それは、今室内と外ではどちらが湿気がありますか?という質問。外は気温が4度位で小雨が降っていた。

① 雨(雪)がふっている外が実は乾いているという事実。

「見学会の家の内部は室温22度、湿度約45%位だと思う。外は気温4度、湿度は100%(この湿度というは、「相対湿度」のことで、この湿度は温度によって変化する。)に近い。それなのに室内の方が湿気があるというこの人は変?」と言う顔を多くの人は私を見ていた。
冷静に考えれば皆さん分かったと思うが、突然外が乾いているよと言われても理解できない事が普通。なぜ外が乾いているのか?考える基本は、暖かい空気はより多くの湿気を溶かす事が可能と言う事。むかし理科の実験や料理実習の時に、「冷たい水では、お砂糖は少ししか溶けないのに、少し暖めるとたくさん溶ける」と同じ事が空気でも起こっている。下のグラフは「湿り線図」といい(図1)、ある温度の空気がどのくらいの湿気を含む事ができるかを示したもの。すると温度22度で湿度45%の空気は空気1kg中に7.5gの水を含む。そして気温4度で湿度100%の外気には5.2gの湿気を含むと言う事が分かる。つまり乾いていると感じる見学会の内部の方が1.4倍多く湿気を含む空気である。もうひとつ大事な事がわかる。温度22度で湿度45%の家の中の空気は、9.5度くらいで湿度100%となる。つまり10度を下回る部分があれば結露が始まる。例えば、暖房していない部屋の隅やガラス窓は限りなく外気に近い。つまり4度に近くなうであろう。するとここで結露するのである。

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図1 クリックで拡大

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 図2  冬の外気、室内湿度の実測データ クリックで拡大

② 冬は外が雨や雪であっても換気が多いほど家の中が乾く。

ハウスメーカーの営業マンや、高気密高断熱住宅に住んだ事のない建設会社の人ほど、冬は「家の中に洗濯物を干さないでください。」と言うだろう。しかしこれは大間違い。普通は「冬ほど家の中で洗濯物を干してください。するとちょうど良い湿度になります」と言う事になる。
仮に家の中で水蒸気発生源がない場合は、外気4度湿度100%であるとすると、室内22度の家の中は湿度30%となる。(上の図で確認)これでは乾き過ぎ。そこで人間や洗濯物、料理などからでる湿気でちょうど良い湿度45%から60%位にしている。また法律が数年前に改正され、24時間換気が原則0.5回/時間(家の中の空気が一時間で0.5回入れ変わる事)義務付けられた。すると基礎断熱や吹き抜けのある家は、家の空気の量が多いにも関わらずやはり換気回数も0.5回/時間となるため、換気量が必然的に増える。換気量が増えると乾いた空気がより多く室内に入ってくるので乾燥気味になる。そこでより多くの湿気を家の中で発生させなければ渇き気味となる。
但し例外がある。と言ってもこれは絶対行ってはいけなのであるが・・・。石油やガスを使う開放型ストーブ(所謂ファンヒーター)を家の中で燃焼させると、灯油1Lが燃焼すれば、水蒸気が1L発生する。これは洗濯物が乾いてでる湿気より多い。通常5人家族で洗濯物を含めた一日発生する水蒸気の量は11Lくらい。しかし開放型ストーブを使いっぱなしにすればこれと同じくらいの水蒸気が、家の中にばら撒かれる。これでは湿度が上がり結露する可能性が高い。しかし現代の気密性が高い家で使ってはいけないストーブを使うという想定自体間違いである。

③ 空気中の湿気は家中同じに分布なる。

空気中の湿気は、肉眼では見えない。お風呂やお湯沸かした時に見える煙のようなようものは、空気中の湿気が空気中で結露したものであって通常湿気とは別物。湿気の大きさは非常に小さい粒で、木材やビニールクロスなども簡単に通過する。唯一湿気をほとんどに通さない物質(薄くても)は金属だけである。そこでスナック菓子等の梱包袋は裏に金属コーティングされている。下の図は湿気の粒の大きさとビニールクロスなどの素材の構成する隙間を比べたものであるが、いかに湿気の粒が小さいか分かる。(防湿目的で開発された住宅用気密シートで厚さ0.2mmくらいあると湿気を非常に通しにくくなる)スキーやアウトドア用品でおなじみの「ゴアテックス」という生地は、水は通さないが、湿気は通す素材として有名であるが、湿気は水の粒子よりはるかに小さいのでこれが可能になる。(人間の皮膚もこれと同じかな?)因み湿気の粒子大きさは0.4nmですからにウイルスの大きさが200nm ~ 50nmの更に1/500位ですから見えるはずもないですね。

こんな大きさ関係であるから、湿気は家の外皮内では一様に分布する事にある。(図3)外皮(外壁)は防水性の高い材料が多く層も厚いため、通過するまで多少時間がかかる。そのため外皮以外の空間に散らばるスピードと、外皮(外壁)を通過する時間が違うので、湿気は家中同じように分布する。(

図 3

各部屋の温度が違っていても空気中の湿気はほぼ同じ。扉があっても壁があっても関係ない。
また外より室内の方が湿気の密度が高い(絶対湿度が高い)ことが見て取れる。

図 4

上図は湿気の粒子と木材やビニールクロスを構成する粒子の大きさ比較。いかに小さいかがわかる

図 5

こんな図をよく目にする。(透湿防水シート協会HPから)
要は湿気の粒は水の粒に比べはるかに小さい。

④ アトピーや喘息の人ほど高気密高断熱が絶対必要。その理由

図 7

カビやダニは湿度は70%を越えると急に増殖する。逆にビールスは湿度40%以下で増殖する。2014修正

ある自然重視の家情報のHPなどには、「高気密高断熱や新建材がアトピーや喘息の原因となる。換気が少ない家は健康に良くない」と書かれている。換気が少ない家は良くないが、高気密高断熱住宅が悪いと言うのは全くの逆。この↓の話を聞けば分かる。高気密は高断熱住宅は現代の暖房すると言う生活習慣になくてはならない工法である。まず下の図8~10をご覧頂きたい。冬の北陸での家の状況である。条件は3つ

A 一般的に多い新築住宅で中気密中断熱(次世代断熱基準くらい)で部分暖房  図8

B 「緑の家」のSプラン高気密高断熱住宅で全室暖房した場合。(次世代断熱基準の1.4倍) 図9

C 「緑の家」のSプラン高気密高断熱住宅で部分暖房した場合。(次世代断熱基準の1.4倍) 図10

図8  Q値2.7W/m2℃ C値5cm2/m2位の家で部分暖房 (次世代断熱基準程度) ( )の赤字数字は湿度

上の①と②、③を読んで頂ければお分かりのとおり、同じ空気であっても温度によって湿度は変化する。つまり温度分布のある家の暖房方式ではカビやダニの繁殖域である相対湿度65%以上になる部分が多い。図8に示すとおり、特に赤ちゃんのいる低い区域や部屋の隅部分は相対湿度85%、布団をしまう押入れなどは95%から100%となる。だからカビやダニが発生しやすく、押入れでは布団が湿っぽいのである。こういう科学的なことが度外視されているので、新潟の冬は湿っぽい印象がある。これでは居間以外で洗濯物も乾きにくいであろう。これは部屋が湿気を吸い込む自然素材だろうが人工素材だろうが変わりない科学的な話。(図1にあるとおり)
これでなぜ新潟県の冬の家の中が湿っぽいぽいかわかるよね。つまり家に温度ムラがありそれが湿度を高めていたと言う話。

図9 Q値1.9W/m2℃ C値0.5cm2/m2位の家で家中暖房(外断熱) ( )の赤字数字は湿度

次に「緑の家」の高気密高断熱住宅で全室暖房した場合(次世代断熱基準の1.4倍)。すると劇的な変化があることが分かる。どの部分においても湿度65%を超えることはなく、カビやダニの繁殖に適したところにならない。これは建築学会の2007度の実測論文にも同様の記載がある。(図2において実測済み)

図10 Q値1.9W/m2℃ C値0.5cm2/m2位の家で部分暖房 ( )の赤字数字は湿度

次に「緑の家」の高気密高断熱住宅でも部分暖房した場合(家中暖房をせず一部の空間のみ暖房した場合ばあい)。居住域では湿度65%を超えるところは少ない。しかし押入れや暖房している部屋から遠いところ(押し入れ等)では湿度85%になるところが確認できる。これでは布団にいるダニの増殖を進めるようなもの。いかに全室暖房が基本的に重要かわかると思う。高気密高断熱は全室暖房した時に燃費を抑える技術であり、家中暖房したときに燃費が多くかかる次世代基準くらいでは不十分と言う事。全室暖房を何とか維持できる断熱性能が「緑の家」Sクラスである。(2014年加筆→)今後のエネルギー高騰を考えるとSSプランの家がお勧め。

勿論「昔の住まい方みたいに暖房しないよ」と言う人は高気密高断熱は必要無いが、昔のような自然素材は好きだけれども、暖房生活も欠かせない(経済的)と言う方は、家中暖房可能な高気密高断熱技術が必要で、(2014年加筆→)今後の事を考えるとSSプランの家!!