既存住宅の耐震、断熱リフォーム その②

2007.10.31

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数年前に「木耐協」の加盟店によって施工された意味のない補強。この金物は筋かいに周辺にあると効果があるが、その前に筋かいがしっかりと施工せれているかが前提。

これらの写真は、オーブルデザインが手がけている「断熱・耐震リフォーム」中にいろいろ発覚した事実である。この住宅は以前「日本木造住宅耐震補強事業者組合」=(所謂、木耐協)の組合員による耐震補強がされた住宅である。この団体が行う耐震調査は、多くの自治体で補助金が支給されている。また、この団体は、国土交通省認可法人とあり、いかにも正しい施工が行われる気がする。しかしこの写真を見る限り、鵜呑みにはできない。アンカーボルトの代わりとなるべき金物が、全く意味のないところに施されていたり、「大引き」と呼ばれる構造材ではない部材に補強金物をこれでもかと設置されている。建て主に話を伺うと、「水害後でもあり、耐震調査自体は無料で行われた。耐震診断士による調査結果は、「全体的に大崩壊の危険がある。」「床下は湿気があり改善の必要がある。ホールダウンや火打ちなどで補強しましょう。小屋裏は金物が全体的に不足している。小屋組みの耐震補強を実施しましょう」とあり、1階や2階の耐力壁について書面によるコメントはない。つまり補修費用がかかる壁の補強はなかなか実施してもらえない事がわかっているので、費用が比較的安価で、実施しやすい床下や小屋裏の補強を薦めているのである。しかし、我々は実際この目で中越地震や中越沖地震を見ている。家が大崩壊するのは、①地盤が崩壊した時②1階の耐力壁が弱い時 と学んでいる。書店に行くと多くの「中越沖地震の写真集」が販売されている。そこにある倒壊した家の多くが、2階又は屋根は形があるのに1階がペッシャとつぶれている。基礎内部が弱いからとか小屋が弱いから崩壊したとい事はほとんどない。にもかかかわれず、壁の耐震補強を薦めは積極的に行われず、費用の安価な床下補強を薦める。その実態がこの写真のとおり、補強する必要性がないところまで補強し、その実施写真を見せ、妥当な工事費を請求する。ほとんどインチキに近い。ただこの家の担当者は、何回か「今回の補強でほとんど耐震性はアップしませんが、行わないよりいいでしょう」と伝えていたと聞いている。これも微妙な事で、意味がないなら薦めなければ良い。それよりも、早く正規の耐震改修をと言ってくれたほうが誠意がある。当事務所は、耐震性を満たしていない住宅のリフォームは、まずそれを満たす事が前提でお手伝いする。なぜならば、一度リフォームをお受けしたとたん、その家の耐震性の責任は、建築士である「浅間」が請け負うから。私が設計の責任を持った建物で地震によって人命が失われたとしたら、私の仕事は全て否定されるから。また人間としても、凶器となる家を造るわけには行かない。これは信念であり、医師の心得を述べた「ヒポクラテスの誓いのようなものである。

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既存の「火打ち」がしっかりとあるのに、更に補強することがこの箇所に必要か?

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床下には通常柱はない。1階の床を支える部材の根太と大引きがあるだけ。ところがあるTV番組では床下に専門家が入り、本来柱など存在しないのに「束」を「柱」と言ってそれが継がれているので欠陥だと言っているニセ専門家がいる。この写真も同じ理由だろうか?大引きを過剰とも言える金物で補強している。通常大引きは構造材ではない。大引きが土台から外れても通常家は崩壊しない。

 

この「木耐協」が行った耐震補強の中で唯一良かったのは、床下地盤面への防湿シート敷きこみであろう。これは効果が発揮されており、現在床下は乾いている状況。下の写真は、あまりにびっくりしたのでご紹介。筋かいが全く意味のないところに設置されており、その改修ため、小屋裏にまで耐力壁をつなげるべく、改修しているところ。

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以前の増築で改良され、意味のない筋かいがある壁上の写真。通常筋かいの上部は、構造体である「梁」、「桁」などがなければならない。これを造った人はどんな思いだったのだろう。(これは「木耐協」の行った改修ではありません。他の施工業者による増築リフォーム工事です)

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オーブルデザインの耐震補強の例。金物が打ち込めるところは入れ、その上から合板を貼ることが基本。勿論この筋かい下部に基礎がない場合は、「造る」。