既存住宅の耐震、断熱リフォーム その①

2007.09.22

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築30年以上経つ数奇屋風の端正な住居

地球温暖化問題がが小学校の授業でゴミ問題とともに時間を割いて行われる。木造住宅の建設はそれ自体は地球温暖化対策として有効。それは構造材である木を保護し腐朽によって土に返ることを遅くする事で、二酸化炭素を炭素として固定化するから。だから家を長持ちさせることは重要。しかし家の多くは、築30年を待たずして廃棄される。この家も建て主は、改築(壊して建替え)かリフォームか迷った。その理由は2つ。ひとつは寒い事。二つ目は耐震性が無い事が不満であった。
 寒いことは致命的。少しくらい我慢の生活が望ましいと訴える自然愛好グループや団体があるけれど、その団体のオフィス等は、しっかりと暖房している。実際暖房器具の無い修行寺の僧侶が訴えるのは良いけれど、暖房機のある部屋に生活する人は、声を大にして「少しの我慢」などとはいえない。そういった「少し我慢しろ」の信念のある人は、気づいていない。家は自分だけものではないことを・・・。このような寒い民家を手放す人は、その家の2世。つまり子孫である。家は引き継がれなければ解体処分される。だから家は、ある程度万人が満足で来る最低限度性能を備える事が、社会の貢献であり財産となることを・・・。寒さは人間のDNAに刻まれた恐怖なのである。だからできるだけ緩和する事がのぞましい。普通、断熱改修は難しくは無いけれど、今回は違う。なぜか?それは、この家が総床面積が120坪もある超大型住宅。このまま家中24時間暖房したなら、そのランニングコストを大きくなり、また無駄な暖房エネルギーを使う事になる。そこで昨年三条M邸で行った断熱区画という方法で解決することにした。
次に耐震性がないというのは、この家が建築した当時の建築基準法が耐震性の低い昭和56年以前に建築された建物であるから。実際外壁を壊してみると、筋かいがあるのだが、補強金物は無い。柱の下の引き抜き金物も無く、確かに震度7クラスが襲ってきた時、倒壊は免れないだろう。こちらも住んでいる人には致命的。なぜなら家の最大の役目は、外敵から身を守ること。地震も決して例外ではない。

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外壁を剥がしたところ。筋かいはあるが補強金物が無いため、
圧縮力のみ耐力が期待される。

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衝撃的な写真だが、筋かいの唯一の金物を切断して木耐協が取り付けた引き抜き金物。本来木耐協は地震に強くなるように補強する事が仕事であるが、なんと逆に弱くしているような気がする。そもそも引き抜き金物は、筋かいが地震力を受けて、柱を持ち上げようとする力に対抗する金物であるが、この位置および筋かい補強金物が切断されているので、柱を引き抜こうとする大きな力は発生しないはず。本末転倒である。

この住宅は、3年ほど前に、耐震補強診断を受け、その改修高コストから気持ち程度耐震補強を受けたという。しかし簡易とはいえ耐震補強したはずなのだが、逆に耐震性が落ちてしまったと思われるのが上の写真。木耐協といえば国内最大の全国組織で、公的機関まで介入する由緒正しい共同組合なのに、やはり最後は技術者個人の力量で決まる典型的な例である。こんな耐震診断の料金の半分程度を補助する自治体が多いのはなぜ??

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切断された「かすがい」という補強金物。錆びてはいるがないよりましと思う。