2007.07.21
写真は柏崎市内の郊外に近い市街地のはずれに建つ古い倒壊した住宅。
震災の次の日。まだ交通が混雑する前に市内に入り、直ぐに震災地から離れる。
中越大震災後、次のとおり報告をこのコラムに掲載した。これは今回の中越沖地震でも変わっていない。全く同じ傾向である。
下にそのときのコラムを転記すると、
ここからがH16年中越大震災の直後のコラムです。
Q1 どんな建物が倒壊したか?
A.一言でいえば古い※建物で、耐震性が考慮されていないもの。
例えば1階が車庫などで、耐力壁がないもの。
完全に倒壊した建物のとなりで、最近立てられた建物は、
外見上は全く問題はありませんでした。
(※古いとは昭和56年以前で、且つ築20年以上は経過した建物)
Q2 どんな建物に大きな被害があったか?
A.地盤の悪いところ、又はがけ地に建築された建物に大きな被害が出ました。
報道されているように、長岡高町団地は盛土と削り地でできた地盤があり、
盛土の方に大きな被害が出ました。そこには大手プレハブメーカーの家が
数多く建設されており、建物自身は何も問題ないのですが、大地が傾いた
ため基礎も傾いたり、基礎が割れたりして、心理上修繕不可能な感じです。
皮肉なもので、こういった盛土部分は、見晴らしの良いところが多く、
当時の販売価格も高め。従って、少し土地にお金がかけられる人が
購入されたようです。それが逆にあだとなりとても残念な思いと感じます。
(自邸もがけ地です。専門職なので大きな地震がきたら
問題とわかって購入しているので良いのですが、高町の人たちはそんなこと
とは、全く思ってもいないし、説明もなかったと思います)
特に販売当時16年~12年前は、地盤調査は一般的ではなかったことに
被害を大きくした理由の一つであるかも知れません。
Q3 最近流行りの免震住宅はどうか?
A. 大きな地震が襲った地域では、地面が割れ、又は傾いて、
大きな被害が出たこと考えると、大地震時に免震で修繕不可能な被害は
防げるかと言えば、新潟県内の平野部では効果は少ないといえます。
免震構造で家は無事でしょうが、地面が傾けば(割れれば)、
心理的に修繕は難しいと考えます。
中高層ビルのように、岩盤まで杭を打ち、
基礎(地面が傾かないようにしてからの免震構造は、
効果が大変あると思いますが、住宅等の一般基礎、べた基礎等、
地盤改良程度の上での免震構造は、
「大きなお金をかけた程の効果は薄い」と考えるのが
率直な感想です。家をしっかり造れば、倒壊等で生命が危機に
さらされないため、お金をかけるなら地震保険の方が、
復興時の大きな力になるような気がします。
(更に付け加えると、ライフラインが止まった時に家だけが全くの健全でも、
しばらくは住むことはできないでしょうし・・・)
推進メーカーのホームページにも、軟弱地盤や液状化の恐れのある
地域は、お勧めしないとありますが、県内では殆ど軟弱地盤に相当するので
難しいでしょう。(勧めているメーカーもありますが・・・??)
しかし、中規模の地震では、県内でも家具が倒れにくい、
食器、窓ガラスが散らばらない事や、
恐怖が軽減される等の効果があることは事実です。
Q4 地震時の地盤の良し悪しはどうやって見るの?
A. 判断は「難しい」の一言です。
地盤を考える時に通常状態時と地震時の
非通常時の地盤に分けられると思います。通常時の
地盤の良し悪しは、最近の地盤調査でわかります。
この通常時には、べた基礎は一般的に有効に働きますが、
地盤改良は地震時でも少なからず、べた基礎より有利と感じました。
これは2年前に建築した長岡のお宅での目視で感じたことです。
このお宅は2.5mの雪に耐えるように柱状の地盤改良が深く施されて
いるせいか、地面が建物を縁どるように、周囲の亀裂ができ、
建物の外側は1~2センチほど落ちこんで(建物が盛り上がった?)
いるようでした。これは建物とその直下の地面がが一体となり
地震に抵抗していたと思います。(軽びんな内装のずれのみでした)
とここまでが中越大震災の直後のコラムです。
加えて今回申し上げるとすると
被害を最小限度にするため、食器棚やコップ棚は造り付け家具がよく、
扉が地震時に開かないものがお勧めです。これは災害現場では、電気、水が
止まります。このときの状況において後片付けをできるだけ抑えると、精神的に
楽になります。割れて危険になるガラス、陶器類が無ければ、電気、水が無くても
後片付けは比較的に楽です。是非造り付け家具を計画してみては如何でしょうか?
ちなみに「緑の家」は造り付け食器棚がほぼ100%計画されております。
さらにその扉は引き戸か飛び出し防止開き戸です。
柏崎は特に地盤が軟弱だとは言われていないにもかかわらず、今回の地震で
ほとんどの市街地が地面の亀裂、液状化が発生しております。新潟県はほとんどの
地域でまず軟弱地盤である事を認識する必要があります。また、大手メーカーで
地震力を吸収する家(制震住宅)も宣伝されておりますが、家自体が問題で家の価値
が下がるような被害が出るよりも、地盤(地面)が問題ありで家が傾く方が多いとわかります。
まず地盤、次に傾いた時にも簡単に戻せるダブル配筋の強いべた基礎は、
改めてよい方法だと実感しました。
(ダブル配筋の強いべた基礎は2年前のS様のご提案です。ありがとうございます。)
また、柱状改良などの地盤改良も液状化による不同沈下には多少抵抗します。
これは中越地震でもQ4のとおり観察されましたし、今回の地震でも同様です。(但し、
地盤改良は中規模以上の地震が発生したその後の全てにおいて、不動沈下による被害はどのメーカーでも免責です。)
多分「緑の家」はべた基礎が標準でしたが、布基礎+地盤改良も加えたいと思います。
左の小さい建物はコンクリートで全く無傷。ところが地盤が傾きそれで建物も傾く。
上の建物周囲にある地割れと、液状化により隆起した浄化槽。
鉄筋コンクリート造の7階建マンション。建物自体には被害がないが
地盤が不同沈下し傾いてしまった感じである。