2010.4.29作成
自然素材の流行で、梁が露出している空間造りを多く見るようになった。しかし平成12年の法律改正後から指摘しているように、法律の仕様規定である梁と梁を緊結する金物を付けていない家が多い。これは問題である。
建築基準法施工令47条では?
令第47条
1 構造耐力上主要な部分※である継手又は仕口は、ボルト締、かすがい打、込み栓打その他国土交通大臣が定める構造方法によりその部分の存在応力を伝えるように緊結しなければならない。・・・以下略
※具体的には基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋交いや方づえ、火打材等)、床版、屋根版、横架材(梁や桁)を指す。
具体的な金物設置例が下のように「許容応力度設計書」に記されている。
このように最低仕様が羽子板ボルトで、これは梁の端部全てに設置されなければならない。通常このような金物がないと法律違反の恐れがあり、最悪地震時に梁が抜ける恐れさえある。
梁の緊結金物とはは?
平成12年の改正建築基準法から、それまでは曖昧だった木造住宅での緊結方法と場所が明らかにされた。従ってその定められた部位に金物を使わないと法律違反と言う事にもなりかねない。
木造住宅で軸組工法では、柱と梁で骨格を構成する。その為柱と梁の接合は構造上大変重要な部位となる。そこで従来大工さんの技量に頼っていたこの接合部を一般的なプレカットの使う場合の仕口には補強金物が指定されている。
間違っている梁緊結とは?
<https://arbre-d.sakura.ne.jp/main/wp-content/uploads/2016/11/_SDI20081.jpg” />
この写真は他社の施工中の家。一見しっかりしたように見える構造でも、梁の緊結金物がない。
通常は梁は羽子板ボルトと呼ばれる金物で緊結される。→羽子板ボルトが良くわかるサイトはこちら
この部分は通常見えなくなり完成したら判別不能。しかし室内露出梁は完成後でもよくわかるので、写真や見学会で確認をしてみよう。きっと多くの建物で金物が無い法律違反が見つかる。
オーブルデザインの緑の家では・・・
オーブルデザインの「緑の家」では、どの家でも梁の露出が必ずある。これは私のデザインポリシーで、「構造は美しいもの」であるから、できるだけ露出がするようにしている。そこで梁は美しいのだが、上の写真のような緊結金物は美しくない。できれば、見えない方が良いに決まっている。そこで15年前に金物が表に出ない「クレテック金物」と出会った。その合理性と構造根拠及び露出しない金物に私は直ぐに飛びついたことは言うまでもない。よって事務所設立以来、ほぼ90%の家で「クレテック金物」を使用している。コストは普通の金物の倍以上であるが、この美しさにはかなわないので今でも標準で使っている。
クレテック金物が使えない構造では、一番上の写真のように、金物がしっかりあり構造優先である。
下のような写真をみて、「形だけ」まねてもそれは法律違反になる可能性があり、ひいては構造的に問題がある事になる。どんな時でも構造が最優先されなければならない。
見学会で金物が無かったら直ぐ聞いてみよう!
見た目は金物がない方が良いに決まっている。だからといって構造的根拠のないまま、金物を省略することはできない。
見学会で金物のない梁を見つけたら聞いてみよう。
「この部分に金物は要らないのですか?」
きっとこう言うだろう。
「大丈夫です。しっかりと昔ながらに大工が加工しています。」
だから・・・それでは構造的根拠がないので法律違反。
構造的根拠とは・・・
「この部分は地震時に10KNの引っ張りが発生します。しかし渡りあごで且つ糊代寸法を充分に見てあるので10KN以上の引っ張り耐力が確保されています」
と数値で確認することである。これができなければ、何も言わずに金物を付けるしかない!!
それが法律を守り、ひいては住人の命を守ることになる。