「耐震偽造!建築士の関与する違法建築について」 ③ 

2006 06 26追加更新

いま耐震偽装話題の建築基準法には、上のような考えがあるが、実際の市場では下の流れが圧倒的に多い。チェックが働きにくいのは一目瞭然。

どうすれば違法建築が少なくなるか?

私が独立して事務所を開く前は、中堅の建設会社の設計部門にいた。そこで学んだことは、
「設計者」と「工事監理者」は独立した立場でないと、本当に建て主の立場で家を造る事ができないということ。施工会社というところは、施工で利益をあげるので施工する部門が強いのだ。

私の経験談の一例。
設計者:「すみません。この建物は、試験の結果、所定の気密性能が出ていないので手直して下さい。」
現場監督:「わかりました。修繕します」
数日後
営業:「明日引き渡しです」
設計者:「手直し終わりましたか?」
現場監督「どうやっても直りません。どこを直せばよいのか教えて下さい」
設計者:「それを調べるのが現場でしょう・・・」
営業:「とりあえず、お引渡ししましょう」
設計者:「それはちょっと・・・」
現場監督:「見てもわからないので、とりあえず引渡しを・・・」
設計者:「部長、店長に聞いてみます。」
店長:「困った・・・、仕方ないか?明日引き渡さないと、引越しがあるし」
部長:「・・・」
設計者:「建て主さんにはなんと言うのですか?」
部長:「・・・」

その数日後
部長:「所定の性能が出ない物件がありますがどうしましょうか?」
取締役:「どうしてでなっかったか報告とその改善を・・・」

で終わりました。本当はきちっと約束を守りたいのに・・・
営業さんは、言葉巧みに建て主さんに引き渡してしまいました。
私は上司にそれ以上言えません。それは力関係があり、私はこの上司の
いる会社から賃金をもらっているからです。お金の流れは力関係を決めます。
家造りで重要な設計者は建て主さんのためでなく、給料をもらえる会社の言うことを
聞くのです。だからもし将来設計者でいるなら、独立した立場でいようと思いました。
(名誉のために申し上げます。どの企業にもすばらしいところと、
眉をしかめるところがあります。この企業のすばらしいところは、
今の「緑の家」の仕様の基礎を研究、完成させて頂いたところです。
色々な新しい事を試みを許可してくれるトップの姿勢には、
いまも感謝しております。)

そう!!この話の中に、工事監理者がでてこない。
法律上は工事監理者はいるのに、実際にはその責任を果たす人は
いないのである。工事監理者として、役所に申請している人は
なんと違う支店の建築士。
カタログには、社内の徹底検査と書かれているが、別に社内検査がなくとも
法律上の工事監理者が検査すればよいのであるが、その記載がない。
会社としては、工事監理者の名前をひたすら隠したい。
記載された工事監理者になった建築士も、あまりかかわりたくないため
紹介されたくないのだ。工事監理者は、設計と同じで個人で責任を負う。
後で設計図と同じでないことがわかった時、施工会社とは別に
責任を負うのだ。それを会社としても、この名前だけの工事監理者に
はっきりと知らせてはいけないので、あいまいにする。
今回の耐震偽造とあまりにも似ている話。
前にもこのコラムで訴えているが、工事監理者は、良い家の「要」である。

建築基準法第5条の4には、左のように「建て主」が「工事監理者」を決めなければならないと規定されている。皆さんは工事監理者をご自分で決めた記憶が有りますか?
記憶があれば右の内容が記載され、押印された書面を受け取ってますよね。