超高気密にデメリットはあるのか?

 2010.2.08作成

ネットには様々な家の情報がある。最近は超高気密住宅を勧めているが、高気密はいいけれど超高気密は必要ない!という表現を超えてデメリットがあるとまで言っているサイトがある。本当にデメリットがあるのだろうか?

必ず行う中間気密測定の風景。中間目標値は値SSプランで0.3cm2/m2以下(2010.02時点)。

「超高気密」にデメリットがあるのか?

先に宣言すると、
デメリットはない!と言いきります!

様々なネット情報では「高気密はいいけれど超高気密まではいらないし、そこまで性能を上げるとデメリットがある」と説明してサイトがある。でもその事を書いている全てが超高気密住宅に住んだことがない人の言い分だ。
私は0.9cm2/m2以下の超高気密住宅に近い家に20年近く住むけれど、もっと気密が高い方が良かったといつも思って暮らしている。デメリットを感じたことは一度もない。

超高気密に対しご批判や意見はあると思うが、それは実際「住む」かそれ相応の科学的根拠が必要であり、特に専門家(建築関連)は感情で必要ないと言ってはいけない。

まずはどうして家に気密が必要か?の原点から

まず住宅に気密がどうして必要か原点に戻ろう。
お寺や神社の建物では気密が必要ないと誰もが思う。では家や店舗はどうだろう。何となくあった方が 暖かいと思うだろう。
そう、この二者の違いは暖房するか、しないか、の違いである。赤道直下の家に気密が必要ないように暖房しないところでは気密は不必要。また神社も主の神様は寒がらないから暖房が必要ないので建物には気密がいらない。

つまり気密は暖房するために必要もの。だから沖縄などを除く日本の住まいでは必ず必要!   すると・・・
「昔の家は気密などなかったのに問題なかったのでは・・・。」というとんちんかんな質問する人がいる。
「ではその時代に車が走っていたり、電気や石油、・・・エアコンがあった?」
文明は進化し、現代は99%の人が「暖房」を好み「暖房生活」をする。それを直視しないで「昔はなかったから必要ない」という人は、電気も使っ ていない生活に戻ればよい。当時は暖房などあり得ない時代だから採暖(いろり、火鉢)だけ。
全てはバランスで成り立つ世の中。今は暖房を必要としている文化なので高気密住宅は絶対の必要条件。それを理解しようとしない人は、自己趣味で寒い家を造れば良いと思う。

 

高気密と超高気密の違い

さてようやく本題ですが、
「高気密はいいけれど超高気密まではいらないよ」
についてですが、高気密住宅に20年も住んでいる私がきっぱり「もっと気密が高い方がよい」と感じているこの事実。

ま ず高気密住宅はどのくらいの気密レベル?
日本の法律では高気密性能はC値(隙間相当面積)で表されれる。このC値が新潟県では5cm2/m2以下。 東北以北では2cm2/m2以下が高気密住宅。

で・・・、超高気密の性能は現時点で法律上定義はないが、このC値が0.5cm2/m2付近※(0.3と言いたいが)であれば概ね業界の納得の数値ではないだろうか?
※緑の家SSプランの気密性はC値0.9以下となっているが、過去実測平均値0.4以下。

数値だけをみると超高気密住宅は高気密住宅の10倍ほど性能が高いが、実際は家に開いている穴の大きさが少し小さくなっただけ。高気密住宅は実際どのくらいの穴が家に開いているか?

30坪位家では、
高気密住宅→500cm2の穴(5cm×100cmの穴)・・・窓を5cm開けた大きさ
超高気密住宅→50cm2の穴(0.5cm×100cmの穴)・・・窓を気持ちだけ開けた

たったこんなこんな差しかないのであるが、仮にこの状態の家があったとしよう。さて天候が吹雪だと想像してみる。
5cm開けた窓からはどんどん吹雪が吹き込んで来る。一方 0.5cmという気持ちだけ開けた窓はほとんど影響されない。寒い日ほどこんなに違いがでるし、実際もそう。

新潟県では吹雪はよくあること。吹雪いてなくとも10m/sの季節風が吹 くことなどよくある事(統計によると1月は3日に1日吹く)。だから超気密住宅の家の方が快適で暖房ロス(漏気)がない。

超高気密住宅は窒息するか?結露は?

さて、高気密反論者からは「窒息するのでは?」という事をよ く聞く。なんて非科学的な事を言うのだろうといつも思う。
あなたの乗っている愛車はこの超高気密住宅より気密性があるのをご存じだろうか?その車で仮眠をとっても死にはしない(そんなことがそんなことが実際に起きる車は販売中止だろう)。超高気密と言ってもそんなもの。潜水艦や宇宙船、飛行機のような、気圧維持できる密閉性があるものからみれば、ザルのような気密性。
だから就寝中停電で換気扇が止まっても死なない。
もし住んでから超高気密性がいらないと思えば、一カ所の窓を5cmだけ開ければそれで気密性のない家になる。後から自分の都合で低気密住宅にすることは1秒でできる。
しかし「気密性のない建物」はどうやっても気密性がある建物にはならない。

よく気密にすると結露しやすくなると言っている人もいる。間違いではないけれど、だったら自動車も結露しやすいから「気密性」はいらないということになる。
まず気密の目的は何か?が重要で自動車の場合も快適性。なぜならオープンカーには全く気密性は存在しない。オープンカーに乗ったことのある人ならわかるけれど、もちろん結露も皆無。でも寒いし風切り音は相当なもの。だから快適性の向上という目的が一番で気密性を上げ、その事による解決できる他の現象は(結露)もうデメリットと言わない。自動車の結露も基本的には「計画換気」で解決できる。

さてそんな超気密性にするためにはコストはほとんど掛からない。掛かるのは、気密性に対する正確な知識と熱意とスキルだけ。

超高気密住宅を簡単に低気密住宅へ

もし超高気密性がいらないと思えば窓を5cmだけ開ければそれで気密性のない家に1秒で変わる。とても簡単!しかし気密性のない建物はどうやっても気密性がある建物にならない。
つまり住んでいる人が性能を自在に変えられない家が気密性のない家ということ。

さて、どっちを選びます?

超高気密住宅だから無駄な換気扇が必要か?

これもよく誤解される事。今の住宅は普通に造ってもいわゆる高気密性となり、C値は5cm2/m2程度になる(国の調査から)。この程度の気密性でも換気扇は必要となり法律でも厳守項目となった事実がある。

それはC値5程度の気密性の家でも、
1.風がない日
2.家の中と外に温度差がほとんどない場合
は仮に窓が開いていても全く換気されない。家の中の空気が動かないのである。空気の移動には必ず「力」が必要。
するとある人は、
「風が全くない日はない」
と言うだろう。確かに風が全くない日はないが、これは郊外でのこと。家が密集する都市部では郊外で風速が感じられても建物の「混み」で無風になるのである。だから法律で換気扇の設置義務が定められたのである。超高気密だから換気扇が必要というわけではない。普通の家でも電気と同じようにすでに必要な家の快適設備である。

念のためつけ加えると、
では、昔は換気扇がなくとも問題なかったのでは?
と言われる方が必ずいるが、
だ・か・ら (-_-) ・・昔は暖房を必要としなかったため・・・」と同じ事を繰り返して言っているのにどうしてもそういう人は理解してくれない。ここが不思議なところ。だから気密は「そこそこがよい」などという間違った認識となる。そもそも「そこそこ」ってどのくらいで、気密測定して確かめた事があるのかと言いたい。

世界基準の気密性能とは

最後に一戸建て住宅の世界基準の気密性はどうなっているか?
地球温暖化防止問題もあり、現在気密性はいずれも超高気密に向かっている。下の表中「ハッシブハウス」が欧州で標準化される気密性である。なんと日本の15倍の気密基準である。 ※緑の家SSプランの規定気密はC値0.9以下となっているが、過去実測平均値0.4以下。

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欧州で今後標準となる気密性性能の家「パッシブハウス」はC値0.3cm2/m2。 日本の法律上の高気密住宅の1/10以下。

 

最後にコストはどうか?

高気密から超高気密性にするためにはコストはほとんどかからない(20万位)。気密部材はポリエチレンフィルムとダクトの電磁ダンパー追加のみ。これを気を使って張るだけ。だからコストより重要なのは、気密性に対する高い知識、熱意とスキルだけ。

このフィルムの耐久性は、50年程先行して気密施工を行っている欧州で、すでに一世紀弱は問題ないと言われている。(JIS A 6930品 耐劣化防止剤)。