外貼り断熱工法は火災に弱いか?

2009.12.01作成 12.03訂正

「緑の家」は外貼り断熱工法と充填断熱工法の両方を行います。最近外貼り断熱工法に使用される断熱材が火災時に多きな被害を及ぼすのではないかという論調が多く聞こえてきます。そこで2009年時点のオーブルデザインの見解です。

外貼り断熱工法は火災に弱いか?

今年発生した中国北京のTVCCという30階建ての建物が2時間30分で全焼した報道や、米国ラスベガスのホテル火災など、最近の外断熱工法が原因で被害が大きくなった火災があり、外断熱は欠陥なのかという疑念が生じている人も多いでしょう。そこで少し掘り下げて住宅ではどうかをオーブルデザインの見解で説明します。
まず最初にどんな断熱方法があるか理解しないと比較できませんので下の図をご覧ください。現在新潟の住宅で行われている断熱方法です。
これからわかるとおり、断熱の方法は5種類になります。

内断熱、外断熱はコンクリート住宅に多く、木造ではほとんどない。木造住宅は充填断熱や外貼り断熱がおおく、超断熱では充填断熱+外貼り断熱併用となる事がほとんど。

 

実は緑の家ではこの5種類の断熱方法を全て使っています。
驚きでしょう?各部位によって一番ふさわしい断熱方法を選んでます。

内断熱とは・・・
構造体の内側で断熱材を施工する方法です。主にRC建物や住宅であれば基礎のようなRC部分の断熱方法です。

外断熱とは・・・
構造体の外側に連続して密着させた断熱材を施工する方法です。主にRC建物や鉄骨建物の断熱で、外貼り断熱と区別するため熱容量が大きい建築物のことです。

充填断熱とは・・・
構造体が軸組みの場合は、柱の間に空隙が生まれるのでそこに断熱材を充填する方法です。2×4工法や軸組み木造建築などで一般的に行われる方法です。これを内断熱と呼ぶ方がいますが、上の内断熱とは異なる性質があるので充填断熱と呼び、区別します。

外貼り断熱とは・・・
柱又は2×4工法の合板の外側に断熱材を貼り付ける方法です。外断熱とは同じ施工もありますが、外断熱が一般的に熱容量の大きい耐火建築物の外側に施される断熱方法とし、それ以外の建築物の外側にはる断熱方法を外張り断熱として区別します。ここポイントです。つまり新潟県の住宅のほとんどが外貼り断熱です。

図は緑の家の断面図です。各部分によって断熱方法を分けております。 基礎はRCで作られており、外断熱と内断熱の混在となってます。

報道では、「外断熱の建物が、火災時に問題があります」との事で、外貼り断熱工法の木造住宅ではありません。木造住宅と比較すると、外断熱の建物は大規模建築であり、そのため不特定多数の人が使用します。よって火災安全性は、住宅より著しく厳しく制限があります。それなのに、火災被害が大きくなったのはなぜ?と言う理由で今回のような火災時安全性について大きく取りあげられたのでしょう。

まず充填断熱に使われる素材は、繊維系断熱材のグラスウールやロックウールが多く、これ自体不燃材と呼ばれる材料です。不燃材とは火を付けても容易に燃えないばかりか、変形などもない材料です。
一方外貼りで使われる断熱材は、石油由来の材料がほとんどです。またその材料は難燃処理材が行われ、火を近づけると燃えるまで時間がかかり、変形も急激に起こらない材料です。しかし一定時間を過ぎると燃え始め、変形し溶融します。

ですので火に対し

充填断熱(GW、RW)>外貼り断熱(石油由来ボード)

になります。

火に対しこれで結論が出ましたが、火災時の危険性ではないことにご注目ください。

なぜ外貼り断熱が住宅でも多くつかわれているのでしょう。ここに外貼り断熱と外断熱を分けた意味が出てきます。
住宅は古くから「木造」がほとんどで、且つ敷地に余裕のない市街地に建築することが多かったのです。ですので昔から大火とよばるれ類炎が大きな問題でした。

そのため市街地に建つ木造住宅の外壁と屋根は燃えにくい防火構造にするという法律ができました。一方ビルのような大きな建物は、RCで造られていましたので、容易に燃えることはありませんでした。このような構造が燃えにくい建築物を「耐火建築物」と言います。この耐火建築物は、外壁に木造住宅のような防火構造はありません。ここが木造の外壁とは違います(違う耐火制限があります)。

最近ビル火災で「外断熱が火災を大きくした」との報道がありますが、これはそのとおりだと考えます。ここで重要なことは、「外断熱」であって「外貼り断熱」ではないことです。

元々住宅は特定の人しかいない建物のなので、火災の安全性に対しての考え方は
「火災が発生したら避難する時間が稼げる構造」
であり、燃えない構造を要求するするものではありません。逆を言えば、避難ができれば燃え落ちても仕方ないと言うものです。
これはそもそも、一旦火災が起きれば、小火でも決して綺麗ではない水を大量に放水されるため、その家はほとんど使い物にならないくらいのダメージを受けます。そのため一度火災が起きたとき、その家の価値はなくなります。外j壁の防火構造で類炎がなければそれでよしと言う考えだと思います。

さて、避難する時間ですが、多分内部火災なら10分間は燃え落ちるようなことがない構造であり、類炎なら20分間まで外部の火が内部に移らない構造程度で良いはずです。

そもそも住宅火災は、火で亡くなる方より煙に巻かれて亡くなる人がほとんどで、この解決策として火災報知機の設置が一番有効です。これは数年前の法律で義務化されてます。

また最近は、PB(プラスターボード)という極めて火災に有効な素材で作られています。このため壁内部まで炎が伝わるまでに相当の時間がかかります。また天井もこのPBで造られれば同様です。このPBを破って壁内部まで火が入る頃は、とても人間が生きていることは不可能な煙と温度になっています。

ですので、壁の中に燃えにくい断熱材があるかどうかは、火災時の危険性にほとんど影響ありません。これは外壁下の外貼り断熱にも言えることで、防火に有効な外壁が火からある程度時間を稼いでくれるので、外壁の内側の断熱材が燃えやすくても一向に構わないという解釈もできます。無論、燃えにくい素材が一番よいですが、放水の水をかぶっり、水まみれになったGW(グラスウール)やRW(ロックウール)では、どちらにしてももう使い物になりません。それでも燃えにくい方がよいと言う方は、外壁を気にするより、窓(↓写真)や軒裏を気にしたほうが類炎に対し効果があります。窓ガラスが割れ、無防備な軒裏から小屋裏に火が入るリスクのほうが高いからです。

したがって

火災時危険性及び火災後の復旧性で判定すると

充填断熱(GW、RW)=外貼り断熱(石油由来ボード)

です。特に変わりません。実家の火災の経験がある拙者だからわかることです。

ですのでオーブルデザインの緑の家では、
ある程度の難燃性があれば、そこだけを重要視して選ぶことはありません。
いろいろな断熱材の良さを生かし使います。

類炎に見舞われた建物。出火建物はこの手前にあったがすでに壊されており、そのため写真が取れた。これからわかるとおり、外壁は焼けてはいるが、まだ形を維持している。しかし、窓ガラスは全て割れ、火はここから中に燃え移ったようだ。ガラスの類炎強化が先とわかる証拠の写真。窓がなけれ良い。

 

因みにオーブルデザインが外貼り断熱材として選んでいるのは、
高性能フェノールフォーム(ネオマフォーム)であり、
充填用断熱材は高性能GW断熱材セルローズファーバーです。