あなたの家の工事監理者はだれですか?

TEXT 1999.4

1998年10月に、次のような判決が大阪地裁でされた。

「新築住宅の瑕疵により慰謝料を含む請求金額のほぼ全額が認められた事例」

この判決は、工事監理や施工の瑕疵によって、工事請負代金+弁護士費用+慰謝料のほぼ全額支払いが認められたのだ。
ここで注目すべきことは、今までほとんどの住宅で行なわれてきた、「工事監理者の名前貸し注1について、明確に責任追及されたことだ。あなたの家の法律上の工事監理者は誰か?顔を知っていますか?わからないようでしたら少々問題ですよ。

  • 注1 工事監理者の名前貸し・・・延べ面積が100平方メートルを超える木造建物を建築する場合、必ず一級又は二級建築士でなければ設計及び工事監理をしてはならない。ところが、施工会社の大小問わず、通常工事監理者は、名前だけが確認申請書に掲げられており、実際は現場監督がその実務全てを行っている。工事監理者が一度も、現場に行っていない事が大半ではないだろうか?とても不思議な常識がある建築業界だ。

Text 00.07.06

 判決理由抜粋

建築基準法五条の二及び建築士法三条の三第一項は、延べ面積が100平方メートルを超える木造建物を建築する場合、必ず一級又は二級建築士でなければ設計及び工事監理をしてはならず、これらに違反した工事をしてはならない旨規定している。これは、延べ面積が100平方メートルを超える新築木造建物の安全性を確保するために設けられた強行規定であるから、一級又は二級建築士は、建物の設計及び工事監理をする意思もないのに設計者・工事監理者として届け出ることは許されないのであって、右建物の設計者・工事監理者として届け出た以上は、その業務を誠実に遂行すべき義務を負っているというべきである(建築士法一八条一項参照)。
そこで本件についてみるに、本件建物の延べ面積は105.98平方メートルであるから、一級又は二級建築士でなければ、その設計及び工事監理をしてはならず、二級建築士であるYは、本件建物の設計者及び工事監理者として届け出た以上、その業務を誠実に行うべき義務を負っていたというべきである。しかるに、Yは、本件建物の設計及び工事監理を怠り、この結果、本件ブロック擁壁や本件建物には、多数の瑕疵が生じた。したがって、Yは、過失によって右瑕疵を生じさせたというべきである。