FAQ

2003 02月に頂いたメールです。皆様の殆どの方が疑問と思われるので全文載せます。

青字はご質問者、黒字は浅間英樹です。
ご質問者は、現在海外在住のためメールによる質疑となりました。
所々取り消し線   がありますが、これは原文を訂正したところです。

○×様

メールありがとうございました。
早速ですが、

>> この質問内容を掲示板に記載いただいても全く問題ありません。少々、ご質問内
>> 容が長くなること、内容的に批判めいている印象
>> を与えるかもしれないことを考慮し、メールを送らせていただきました。
>> まず、高断熱高気密住宅の目的は、HPでご指摘のように家中暖房のランニング
>> コストを抑えること、であり、そのために理のかなった
>> 方法だと理解いたしました。そのうえで、次のような懸念も生じます。つまり、
>> 健康への影響です。健康への影響があるのなら、
>> ランニングコストがたとえば、年に10万円アップしても構わない、という人も
>> いるでしょうし、その場合には、高気密は必ずしも目指さなく
>> てよい、という選択肢もあり得ると思います。また、ランニングコストと初期投
>> 資を含めたトータルコストの視点も必要だと考えます。
>> そこで、具体的に次の点についてお伺いさせてください。
>>

まず最初に、その住宅に住む居住者が、暖房を必要と思わないなら、
また、夏季の酷暑地域で冷房を必要としない用途、環境であるなら
高気密高断熱住宅の必要性は薄いと思います。
(温暖地域で、周りに緑のあるところに建つ住居のように)

人が街に集まって住むようになってから、風が入りにくくなり
また、ネクタイを締めて仕事をするようになってから
冷房の必要がでてきた状況と違って、
寒ければどんな住み方でも必要と思う暖房は、
現在の地球環境の見地から見ても必要ではないかと
思います。もし最初の居住人が、暖房を必要としないと
考えても、次の居住人は必要とする可能性は大きいです。
私もその一人で、子供のころの住まいは、広く
木材も豊富に使われていましたが、
冬、台所で台布巾が凍ってしまような家は、
自分で住む家にはふさわしくないと
20代で高気密高断熱住居を造りました。また40代になれば考えも
変わるかもしれませんが、子供を設け家を持とうと思う
世代年にはそうは思わなかったのです。
その時に暖房ができにくい家だから建替えるとなると、
その家(木)という社会的資産が失われることにになります。
たとえば、現在古民家移転改築を手がけて降りますが、
古民家を手放す理由を聞くと、
「恐ろしいくらい寒い。設備が古い。」
という返答が殆どです。
構造はまだまだ50年は持つと思っても、根本から
直さなければ、暖房に適した構造に変えることは
できません。もったいないことです。
また余談ですが、古民家の屋根はかやぶきで、
これは断熱材としては超高断熱の屋根となっており、
夏は快適性を生み出します。
(かやは水を多く含み、その気化熱でも冷やされるため)

地球の自然(木材)は、年々失われ、
ますます住居を長持ちさせなければならないと
考えられる状況において、
暖房を無視した家造りをするという考えは
建築を通して社会的貢献をしていくものとして、
後ろ向きであると考えております。
建築士として、まずお勧めする家の構造が、
高気密高断熱という理由がここにあります。

仮に今は暖房を必要としない住まいでも、
年老いて人の手助けを必要となった時、あるいは
自分の子供、孫が住んだ時には、
その居住者が暖房することを望んでも
それがしにくい家であると、居住者には
苦痛です。
私の父は「アルツハイマー型痴呆症」で
3年前に他界しましたが、
その時にわかったことは、手助けする人が快適な
方が、精神的に安定して接しられるということです。
痴呆症の人は、どこが暖かくてどこが寒いのか
ときにわからなくなります。
暖房の部屋(リビング)の戸を開け放して、徘徊することは
良くあり、手助けをする方が、寒い思いをすることは
精神衛生上よくありません。
なぜなら、厚着は痴呆症の人にはつらく、
用便する時に、とても時間がかかりるためです。
入院中でも同じ事がいえます。
この時家中が、老人施設のように、全て暖房できる空間で
あったなら良いのにと心から思いました。
今後ますます個人住宅で高齢者が過ごされる事が多くなると
思います。この時、床段差だけのバリアフリーではなく、
空間(暖房)のバリアフリーが必要と改めて考えるように
なりました。

高気密高断熱住宅は、窓を開ければ、ただの断熱
住宅であり、暖房の必要のない居住者のときには、
窓を開けて過ごせば低気密住宅で、暖房の必要な居住者の場合は、
窓を閉めて暮らすことで、全室暖房が簡単にできます。
居住者がご自分で選べる住居です。ところが、高気密住宅に
していなければ、簡単に全室暖房は
できにくいのです。これは力任せで暖房した場合、
暖房に必要なベーパーバリア(防湿シート)が設置されて
いない構造では、内部結露の可能性が飛躍的に高くなり
、通気工法をもってしても、安全とはいないからです。
ベーパーバリア=気密シートですから、正しく
べーパーバリアを施工すると、高気密住宅になります。
したがって、暖房することと、高気密構造は
ペアであり、どちらかをするということは
理にかなっていないのです。
但し、暖房空間で湿気をだす物質(人間も含め)がなければ
内部結露の可能性はありませんが・・・。

高気密にしていれば、低気密で暮らすことも簡単ですが、
低気密住宅を高気密住宅に暮らすことはできません。
高気密施工の費用は50万もかからないでしょうから・・・。

よく自然系?住宅サイトで、高気密高断熱がご批判されますが、
よく私が申し上げるのは、「家は社会的財産で、自分だけのもの
と思うと、理屈がとおらない。長い目をもって考える事が必要」
と申し上げております。
自然系住居の住まう人が、冷暖房効率が良く、内部結露を防ぐ施工
(高気密高断熱)を否定し、ていながら、日本では殆ど必要性がない、
燃費の悪い四輪駆動車、又は大型車に乗るのは
何か間違っているような気がします。
自分さえ良ければと言う事が現れています。
資源をだから大事に使う
工夫をする事が、今一番現実的で、大事なことではないかと
考えます。
長くなりましたが、

>> 1. 気密材の安全性・耐久性について
>>
>> 気密性を上げることは、即ち、発泡系の気密材を充填することだと理解していま
>> すが、それだと健康面に不安が残ると思われますがいかがでしょうか。
>>

当方の気密材(ベーパーバリア)は、JISで規定された
ポリエチレンフィルム0.2mmであり、発泡系気密材ではありません。
発泡系気密材はどうしても必要と思われる小部分の補助として
使いますが、メインではありません。
一応、HPにも記載がありますが、
発泡系断熱材で気密をとるやり方はお勧めしておりません。
家は常に動いております。その動きについて行けるのが、
ポリエチレンフィルムのような柔らかい素材です。
15年位前、高断熱ではあるが、気密材を施工しなかった
北海道の住宅の多くが、内部結露被害に遭いました。
暖房という人工的空間のつくるのに、なぜ人工素材が否定
(省略)される事の方が、おかしな話です。
換気も含めて自然だけがいいなら、中途半端な暖房はしない方が
理にかなっています。社寺仏閣のように。
長寿命国で有名な日本ですが、
長寿命の人は、温暖な地域に多いです。(沖縄、九州など)
沖縄の住居の80%以上が、コンクリート住居です。
寒くないことが健康面では一役買っている可能性は
ありますが、私はそういう研究をしておりませんので
強くいえません。でも弱者にとって、家中が
温和な環境であることは、良いのではないでしょうか?

>> また、テープやシートの耐用年数が気密性の耐用年数になるので、50年住宅、
>> 100年住宅という観点からすると、気密性のメンテナンスは>
>> どのように取り組んでおられるのでしょうか。低コストでテープやシートの取替
>> えは可能なのでしょうか。何年に一回、どのくらいの予算で
>>
>> メンテナンスが必要でしょうか。
>>

ポリエチレンフィルムをベーパーバリアとして使った住宅は、
北欧で既に30年を超えて降ります。この住居をリフォーム時に見ると、
暖房機後ろの熱劣化(現在のJISでは考慮されている)以外には
殆ど劣化している報告はなく、この状況であれば50年は問題なく
耐久性はあると考えれております。
従って50年以内ではメンテナンスは必要ないと考えます。
自邸も12年経過しておりますが、ポリエチレンフィルムの
劣化はもちろんまだみれません。(小屋裏で潮風が
あたる厳しい状況ですが)
50年後については、データがないので、何ともいえません。

>>
>>
>> 2. 断熱材の安全性・耐久性について
>>
>> 断熱材についても同様の不安が残ります。内断熱は通気工法と併用すれば内部結
>> 露はある程度までは防げるのかもしれませんが、断熱材が水分吸収
>>
>> する可能性は否定できないと思われます。外断熱は発泡系は健康への不安が残り
>> ます。また、こちらもメンテナンスは必要かと思います。

上で申し上げたとおり、
充填断熱(内断熱)でもポリエチレンフィルムでべーパーバリヤー
を考えますので、理屈の上では、通気層がなくても内部結露をしません。
これは断熱先進国全ての常識ですが、外断熱が良いなどという
本が多く出版されてから誤解を招くことになりました。
内部結露の正しい情報は、詳しくこの本に書かれております。
http://www.ibec.or.jp/tosyo/book07.html
この本は既に10年以上前に、建設省監修で書かれて降り、
いつどのような状況で結露が起こるかを、数値で
考えています。
このように、通気層はいらないことになりますが、
現場で施工することですから、ポリエチレンフィルムを
潜水艦のように施工できるはずもありませんので、釘貫通、ミス時の
安全率を高め、暴風雨時の気圧差をなくすことで雨水浸入防止
効果の面から、通気層には2重下地工法を施すほど
当事務所では重要視しております。

>>
>> 断熱材の健康への影響はいかがお考えですか。また、メンテナンスについては、
>> どのくらいの頻度でいくらくらいの予算が必要でしょうか。
>>
>>

普通は外気が一番綺麗です。
しかし、暖房する空間では、外気を制限することになります。
そこで、室内を考えたばあい、
ポリエチレンフィムルより内側にある材料は、
室内空間に影響を与える材料だと認識しております。
ポリエチレンフィルムより外側にある断熱材は、
室内空間に影響与える可能性は低いので、
さほど重要視しておりません。従って断熱材に微量の
化学物質が添加されていても(自然系といわれる
羊毛断熱材の防虫剤添加、古紙の断熱材にはホウ酸が添加)
問題ないとおもいます。
また人によっては、土壁が良いと言われますが、
土壁は年月が経つとかびが生え、その匂いは独特です。
民家に行くとこの匂いが必ずしますが、そのカビの方が
はるかに体に影響があるような気がします。
現在人は常に多くの人工化合物質で囲まれて暮らして降ります。
これを皆無というわけにはいきませんので、
当事務所の材料の選定基準は、その材料が古くから
同じ状態で使われていたか?となります。
たとえば、壁の下地プラスターボードは既に40年くらいの
実績がありますし、その上のエマルジョンペイントも
35年以上の実績があります。
床はヒノキの縁甲板無塗装で、50年以上の実績があり、
扉、枠などは杉材で地元の建具屋が手作りする製法で、
古来の方法です。
接着剤はできる限り控えることは勿論ですが・・・。

>>
>> 3. 木の呼吸について
>>
>> よく聞くのが木は呼吸しているので、極度に乾燥させるのはよくない、というこ
>> とです。だから、高気密は木によくないし、基礎断熱も木によくないということ
>> です。
>>

極度の乾燥はよくありません。
木も人間と同じ地球上で育った生物ですので、
人間が住みにくい極度乾燥では、良くないでしょう。
暖房していて居住者が快適と思うくらいの
温湿度でであれば、木にも問題ないでしょう。
多くの木の家具が室内に人と同居しているように・・・。

さて、基礎断熱が絶対良いとは思いませんが、
このおっしゃられる方のように、普段自分の周りに木の家具が、
ちゃんと健康的に生きているのに気がつかず、
基礎断熱した空間の中にある木だけ、おかしくなる
という理屈や、家具の木は全く何でもないことを
感じないまま、家に使う木だけがおかしくなる
ということが全く理解できません。
確かによくある家具は塗装されておりますが、
塗装されていない家具も、私の家では普通に
いっしょに仲良く暮らしております。
どのお宅にもある和室の障子戸も無塗装の木ですが、
暖房された部屋で仲良くくらしていると思います。
この木がおかしくなっていますでしょうか?

多くの人が勘違いされ、正しいことを伝えると、
「高気密で暖房した部屋と、
低気密で同じように暖房した部屋では、
相対湿度は明らかに低気密で暖房した部屋の方が
低いということです。」
外気温が低い時期は、雨が降っている状態(湿度100%)でも
暖房した部屋の「絶対湿度」より明らかに低く、
外部の絶対湿度の低い空気が、暖房した部屋に入る可能性が多い
低気密住宅では、相対湿度が下がります。
これは暖かい空気の方がより多くの水蒸気を空気中に
もてるという事実があるためです。
相対湿度と絶対湿度を調べると、わかります。
従って、同じ暖房した場合は、低気密住宅のほうが
相対湿度は下がり、木の含水率は、相対湿度の影響をより多く
受けます。

> この点は(も?)私はよく理解していませんので的外れの可能性も高いです。し
>> かし、この観点からすると基礎断熱して床下を乾燥させるよりも、通風性をよくした
>> 方がよいということにならないでしょうか。木の呼吸への高気密、基礎断熱の悪
>> 影響について、どのようにお考えですか。
>>

床断熱、基礎断熱どちらでも良いのではないでしょうか?
新潟県は、雪が多く降る地域があり、そこに建つ住居は
高床式住居と呼ばれます。
この場合は、1階部分はコンクリートで作り、
冬季車庫として使われます。この場合は、
床断熱です。1階は2m以上あることも多く、
床下にシロアリや不朽菌が住みにくい環境です。
またメンテナンスも良好です。
基礎形態は、地域、住まい方に応じて、決めればよく、
固執する事はありません。

また、基礎断熱した場合は、基礎下は室内空間として考える方が
理屈に合っておりす。
古来の住居のように、基礎断熱をやめて床断熱にすれば、
開放的な自然状態の床下空間となります。
床断熱は、あの桂離宮も床板の直ぐ下に籾殻をいれ断熱していた
事実があるのでので良い選択です。
(畳や木だけで寒かったことを物語って降ります)
この場合にも、床高を1m以上あげ
人が床下をメンテナンスできるようにする事が肝心ですが・・・。
また、床下の地面に防湿シートを引き込まない自然状態ですと、
一日に30L以上も水蒸気放出されるという実験結果があります。
防湿対策しない場合、床高と通風はとても重要です。

高気密高断熱の悪影響は、それだけを見ても思いつきません。
住まいは、トータルで考え、地域環境ばかりではなく
文化も考慮する時があります。
暖房しない文化地域の人に、高気密高断熱住宅を
薦めてもおかしな話ですし、
高気密高断熱住宅で仮に暖房しなくても
問題はありません。
窓をちょっと開ければ、普通家と同じ通風が選れますし、
暑くなりがちな夏は、別の対策が必要です。(日よけ等)
たとえば、夏涼しい軽井沢に、高気密高断熱住宅を
建てることで悪影響があることはないでしょう。

>> 4. トータルコストについて
>>
>> 高断熱・高気密は家中暖房のランニングコストを確かに抑えるかもしれません
>> が、それによって生じる施工費、上記のメンテナンス費、そして24時間換気による
>>
>> ランニングコストを考えた場合、一体どのくらい得なのかがよく分かりません。
>> 私の知人で数百万円かけてソーラー発電を取り入れたものの、ランニングコスト削減
>>
>> 分は月2万円程度であり、トータルでペイするには30年以上かかると嘆いてい
>> ました。高断熱高気密住宅の場合、初期投資+メンテナンス費用が何年くらいて
>>
>> ペイするとお考えですか(その場合には、暖房費節約分に機械換気のランニング
>> コスト上昇分を加味する必要あり)。
>>

暖房は、寒い時期に暖かい空間を確保するのですから、
自然に対するエゴでしょう。
しかし、殆どの人がそれを望んでいるわけですので、
その暖房に適した正しい「施工」は高気密高断熱施工です。
もし、ベーパーパリアをつくらない施工は、
内部結露の可能性が高くなり、耐久性、健康性(カビによる)
に悪い影響があると予測できます。
ですから、暖房する家には必要な施工ですので、
これにコストがかかっても仕方のないものと考えております。
社寺仏閣は、木と土を使った自然素材の代表建築ですが、
人間には全く住みにくいものです。
それは、暖房できにくい空間であるためだからで、
自然素材だけでは、カバーできません。
また、換気も同様で、寒い時期に暖かい空間を確保し人工環境を
つくるのですから、換気も人工が自然の成り行きです。

太陽光発電は、当初からペイすることは難しいと
殆どの関係者では承知していると思います。ですから国が
多額の助成金(数年前は150万もただで払っていた)を払ってまで
推し進めなければ、普及はしなかったのです。
もし設置される時にこの事実を曲がって聞いたなら、
その薦めた業者を消費者保護法で訴えることもできます。

ランニングコストは、お住まいになる環境(地域)、
また、生活方法、設備で違います。
私どもでお手伝いしてきた経験上からは、(暖房、換気含む)
以前の住まいが一戸建てなら、同じ金額+αぐらいで
家中24時間暖房は可能です。
集合住宅ですと、以前のお住まいのコストより
1.5倍以下までに納まる事が多いようです。
集合住宅から移転でかかる理由として、
集合住宅は床面積が小さいので、コストが多くないため、
また、気密性は意図しなくても高気密レベルになっており、
断熱性も上下左右に住居があるので、悪くないからです。

イニシャルコストですが
もし、暖房をするのだとしたら、気密材、断熱材は
必ず必要なコストです。構造で置き換えると、
大事な壁を無くすといくら下がる?
というような事になり、金額は算定できるけれど
家としては成り立ちにくい質問です。
しかしこれでは、お答えになりませんので
熱損失係数:Q値で考えると、
Q値2.0以下とQ値4くらいの家の差額は、おおよそ坪4~5万程度、
とお考え下さい。
Q値4くらいの家は断熱材は壁で50mm以下、
天井100mm 床50mm
窓シングルアルミサッシ
Q値2以下は 壁で100mm
天井200mm以上、床100mm以上
窓樹脂サッシペアガラス、気密層あり
断熱材=16kgGW

>> 以上、大変、素人的な質問で恐縮ですが、これらの点が素人には重大な関心事に
>> なるとも思います。もちろん、誤解や間違いもあると思いますし、正確な理解を
>>
>> 得るためにもよろしくご回答のほどお願い申し上げます。
>>

このようなご質問は大変ありがたいものです。
普段、あたりまえのこととして考えていることが、建築主さんには
あたりまえではないからです。そんな事をおざなりにし、
説明できずに多くに誤解を招いているのは、私の力不足によるものです。

ここまでの長文大変失礼致しました。
又誤字脱字あることも合わせてお許しください。

有限会社オーブル

この一週間後の届いたメールのやり取りです。

○×様

メールありがとうございました。
早速ですが、

>> 1.断熱材の隙間について
>>
>> 先日のご回答では、ベーパーバリアをきちんと張っていれば理屈上は内部結露は
>> 生じないとのことでした。よく充填断熱が批判されるのは、充填断熱で特にウー
>> ル系の断熱材は、隙間なく施工することが難しいということです。

そうですね。
但し、このような柔軟性のある充填断熱材は、良いこともあります。
詳しくは、この本をお読みください。「外断熱が危ない!」西方里見著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4767802555/qid%3D1076621566/250-0759304-8506661

>> その隙間から湿気が混入して結露になるということです。しかし、ベーパーバリアをきちんと
>> 隙間なく貼っていれば問題なし、ということでよろしいのでしょうか?隙間があ
>> れば、仮に壁内に湿気が混入しなくても、その部分の温度が下がり、今度は表面
>> 結露になるような気もいたします。この点いかがでしょうか。また、隙間問題に
>> はどのようにご対処されていますか?

断熱材と隙間。ベーパーバリアの隙間は内部結露を引き起こしますが、
断熱材の若干の隙間は、内部結露を引き起こす可能性は低いでしょう。
自邸は、グラス ウール24kg相当の充填断熱です。当時、大工さんの始めての
施工なので筋かい部分に隙間が5cmほどありました。当時は「まあいいか」
と思ったのですが、気になって5年経ってから
その部分の壁を壊し中を見ると、全く問題はありませんでした。
勿論表面結露も全くありません。
建築は安全率が高く考えられております。また実験、実績は
何事にも返られない事実です。
私の自邸は高気密高断熱住宅の実験住宅として12年経って降ります。
その中での結論です。
また、「充填断熱材だと隙間をつくりやすいからいやだ」といっている
施工会社に、外断熱でも吹き付け断熱でも正しい施工はできないでしょう。
気密、断熱の細かい納まりは、施工方法に関係なく必ず存在します。
納まりで、充填断熱を否定するのは、自分に施工技術、監理能力がないと
言っているようなものです。

>>
>> また、ここは私の理解不足ですが、室内からの湿気はベーパーバリアで防げたと
>> して、屋外からくる湿気はどう防ぐのでしょうか?つまり、夏の冷房時の逆転結
>> 露の問題です。おそらく、通気層を外気壁側につくり、通気層の断熱材側に防水
>> シートを貼るのだと思われますが、通気層の外壁側に最初からベーパーバリアを
>> 貼っておけば、仮に通気層なしでも問題なしとも思われますが、なぜそうしない
>> のかが素人の素朴な疑問です。貴社ではどう対応されているのでしょうか。

これも既に実験済みです。
新潟大学には、赤林先生という住宅の室内環境分野で、
有名な方がいらっしゃいます。この方と10年位前に既に実験しております。
また、自邸は7月から9月までの2ヶ月間ずっと冷房運転で
過ごしましたが、壁の中は、逆転結露による問題はありませんでした。
ある学者の論文では、夏の一時、壁の中の湿度は100%になるが、
木がバッファーとなり、問題にはいたらないと発表され、
その後同じような論文が多く発表されたため、
現在の関係者の意識としては、充填断熱だから逆転結露があり、
ふさわしくないとは思っておりません。
詳しい説明もできますが、長くなるので
先ほどの本を購入されお読みになることをお勧めします。

>> 2.ベーパーバリアの耐久性について
>>
>>
>>
>> 先日、気密シートの耐久性には問題なしとのご回答があったのですが、調べて見
>> ると、ポリエチレンシートに接着する接着剤がまだ開発されておらず、粘着剤で
>> 張り合わされていること、そして、その耐久性は良くて5年程度ということが分
>> かりました。ひどい現場だとタッカー留めをしているようですが、これはシート
>> にわざわざ穴を開けているわけだから、問題外だと思われます。先日のご回答で
>> は、北欧ですでに30年の実績があるとのことでしたが、粘着剤の耐久性がどの
>> ようにクリアされているのかが素人としては疑問が残ります。この点、いかがで
>> しょうか?
>>

何でお調べになったかわかりませんが、
とにかく、調べる時は、国もしくはそれに近い団体の監修したもので
調べてください。ネットではだめです。また
最近は「書籍」であってもその内容はいいかげんであるものが多く、
特に「史上最大のミステイク」等の外断熱優位本の内容は問題です。
この本の内容は、自分で実験したものは殆どなく、
人の論文や、一部だけを誇張してかかれており、
特に、結露の式は、定常状態という条件でかかれており
自然状態では存在しない式で結露すると断言しております。
勿論、学会では相手にされません。
さてベーパーバリアがタッカ-止め論外ということは
どのような根拠でおっしゃっているのでしょう。
当事務所の設計では「論外のタッカ-止め」です。

タッカ-でたくさんとめても、PBの釘をm2あたり50本打とうとも
気密性能は0.6cm2/m2以下にはなります。
このような微細な穴は安全率の範囲内です。
もしこれを否定するのであれば、
外断熱の断熱材を貫通する釘穴も問題です。
R2000という高気密高断熱仕様では、世界意的に有名な
マニュアルがあります。そのなかでもべーパーバリアの仮止めは
ありますし、金融公庫仕様もそのように規定しております。
とにかく金融公庫の仕様は、歴史的に見ても大きな間違いは
ないくらい精査された仕様です。
国に近い団体が決める仕様ですから、その仕様を決めるにあたって
その分野において、日本での第一人者が執筆されております。
この公庫の仕様を否定するのは、それ相応の裏付けが必要で、
「人が言っていたから」とか、「この本に違うことが書かれていたから」
というのは、あまりにもかなしい建設会社の主張です。

さてその公庫によると、
ベーパーバリア(気密シート)は下地のあるところで、重ねて
連続させることが基本とあり、接着剤(粘着材)には頼っておりません。
やむ得ない部分のみ粘着材(ブチルテープ等)、発泡ウレタン等で
補助します。高気密高断熱初期のころ、一部でこのテープでたよる
施工方法がありました。熱膨張の違いで、問題が起こる事が指摘され、
現在ではありませんし、勿論当事務所の仕様にもありません。
自邸のブチルテープは12年経過しても初期のころと同じ状態です。
5年の2倍以上は経過しておりますが。

>> 3.外断熱の隙間対策
>>
>>
>>
>> 貴社では、外断熱を施工される場合には、どのような隙間対策をとられています
>> か。外断熱の場合だと、隙間対策をきちんとやらないと、水分が外から進入する
>> ことになります。また、長釘を打ち付けるという状態が大丈夫かなという心配、
>> 断熱材が地中に埋まることによるシロアリ対策などが気になります。貴社が外断
>> 熱を施工される場合には、どのようにご対応されているのでしょうか。

>>

隙間とはどういった隙間でしょうか?
断熱材の隙間?気密シートの隙間?それとも経年変化による隙間?
水分とは湿気のことでしょうか?それとも雨でしょうか?
それによりご返答は変わります。
公庫では断熱材は地中に埋めない方法を行わないと京都地域ではだめです。
(とにかく公庫の「木造住宅工事共通仕様書」を銀行又は公庫で
購入され該当部分をお読みください。少なくとも大きな間違いは
ありません)

>> 4.新しい断熱材について
>>
>>
>>
>> PET系のパーフェクトバリアは比較的安全性が高いと指摘されますが、この材
>> 料はどのようにご評価されていますか。それと、現場吹き付けの断熱材、アイネ
>> シンは北米で20年の実績があり、気密シート等は一切不要、安全性も非常に高
>> いと聞きました。それならば、気密シートの問題点は、克服されます(公庫融資
>> ならそれでも気密シートは必要でしょうが)。このアイネシンは貴社で採用され
>> ているのでしょうか。またどのようにご評価されていますか。

これはしりません。
でもどうして気密シートを嫌がるのですか?
その現場吹き付け断熱材の方が、石油化学製品の代表ですし、
日本での実績も少ないと思います。安価で安全性が高く実績のあるポリエチレン
フィルムを嫌がる理由があればお教えください。

> 5.土壁について
>>
>>
>>
>> 土壁についても、採用を検討しております。土や藁縄にカビが混入していないか
>> チェックすること、下塗り乾燥期間を十分に取ることは注意が必要だと思ってい
>> ます。先日のご回答のなかで、土壁はカビが生えやすいとのご指摘がありまし
>> た。それは、カビが最初から混入している質の悪い土を使っていたり、乾燥期間
>> を十分にとらないことが原因のように思われます。むしろ、吸湿放湿機能がある
>> のだから、その呼吸を妨げなければ、カビの問題は防げるようにも思います。良
>> 質の土が確保できたとしても、やはり土壁はカビが生えやすいと思われますか?
>> また、土壁の場合でも、やはり断熱材、気密シートなくしては、内部結露・表面
>> 結露が生じると思われますか?ちなみに、私の印象では、昔の土壁の家が寒かっ
>> たのは、意外に壁面積が小さく、断熱性ゼロの建具の部分が多かったので、局所
>> 暖房に頼らざるを得なかった点が大きいのではないかと感じています(これは結
>> 露の問題ではなく、熱ロスの問題ですが、土壁面積が大きければ、熱拡散率が低
>> いので、暖房が効いた後は結構経済性は高いのではないかと推測されます)。

>>

カビ胞子は、いつでもどこでも空気中に多量に存在し、
栄養と湿気、酸素があればどこにでも生えます。
土壁を否定するつもりはありませんが、
他の素材よりその特性上生えやすい事は事実です。
表面を漆喰のような強アルカリで覆えば、その部分は
繁殖しにくいのですが、裏面、内部は無防備です。

一般公開している民家に行った事がありますか?
文字だけでなく実際に体験してみてください。
民家(土壁の家)独特の匂い(かび臭)があります。
日本人の住居は古来からカビと共に暮らしてきておりました。
梅雨のある気候上、どんなに土壁を乾かしても、
その時期の土壁にはカビの生えやすい条件が揃います。
しかしそれをふまえても価値のある素材と私も
思って降りますが、いいことばかりではないという意味で
お話しました。
ちなみに
熱容量は少なくない土壁は、暖房時の安定性に有利に働きますが、
熱抵抗値がとても少なく、高断熱レベルでは数十センチの壁になります。
これらは、式から求められるもので、推測ではありません。
断熱性能は、熱抵抗値(熱貫流率)に比例(反比例)します。

高気密高断熱の実践者で有名な南雄三氏の自邸は
土壁の高気密高断熱で屋根緑化まで施しております。
ただ、氏も人工的な暖房室内には、一般的にどうやっても
人工的な素材で覆うことを否定できないとしております。

住宅は価値観が大きく、この事を論議してもすれ違いは
埋まりません。ただいえることは、バランスです。
バランスの悪い家は、その寿命が短いといえます。
高気密高断熱は、断熱性気密性の住宅の性能の一部です。
そのほかにも大事な性能はたくさんありますが、
古い民家はこの性能の一部を欠いたため、再生しなければ
ならないことが多くなりました。
立派なケヤキの差し鴨居、土壁の民家調の家で、20年前に
アルミサッシに変えて気密性をあげた家でも、
寒いことが最大の理由で改築にいたる依頼を受けました。

乱筆、乱文になりました。お許しください。

オーブルデザイン 浅間

オーブルデザイン 浅間様

この度は2度にわたり、小生のご質問にご丁寧にお答えいただき誠にありごうとざいました。おかげさまで私の理解もかなり進んだと思っております。ただいま、海外に滞在中のゆえ、なかなかご紹介いただいた文献を入手して勉強することができないのですが、帰国後はじっくり勉強を進めていく所存です。

しかし、高断熱高気密を批判する自然派・中気密擁護派の人たちはあまりにも誤解が多いということだけは確信できました。防湿層の漏れがなければ断熱材の隙間があっても結露は生じないこと、木の呼吸や適度な湿度などは高気密化で決して疎外されないこと、施工ミスを高断熱高気密自体の欠陥と混同してはいけないこと、これらの点は非常に誤解されているように素人ながら感じております。また、ご指摘いただいたように、しっかりしたデータに基づいた議論が少ないというのもその通りだと思います。ご教示いただいたように、ちゃんとした証拠や実験結果にもとづいた議論でなければだめでしょうね。そのうえで、どの工法を選ぶかは施主の決断だと思います。

ただ少なくとも言えるのは、暖房という人工環境をつくる以上、高断熱高気密は、省エネということだけでなく、表面・内部結露を避けるために避けられないということですね。私もその点は否定できないし、中気密というのであれば、そのレベルを明示し、本当にそれで結露問題が生じないという根拠をちゃんと施主に示す責任が設計事務所にはあるといまでは思っております。色々と失礼なご質問もあったかと思いますが、ご容赦下さい。今後、再びメールをお送りするときは、実際に設計をお願いするときに限らせていただきます。貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。

末筆ながら、貴社のますますのご発展をお祈り申し上げます。