基本設計の重要性

丘の上のT邸。ずいぶん前からそこにあったかのような素材感がポイント。 クリックすると大きな画像になります。

丘の上のT邸。ずいぶん前からそこにあったかのような素材感がポイント。 クリックすると大きな画像になります。

kihonsekkei

プロローグでお話ししたとおり、基本設計から新しくオーブルデザインでスタートした。

さて、住居の良さは、その立地条件でほとんど決まると言ったのは、尊敬するフランクロイドライト※である。
そしてその良い立地条件を生かすのは、基本設計だ。私は基本設計で建物の良さが90%決まると思っている。設計者は、その基本設計に、自分の力の全てを注ぎ込む。だから基本設計は、設計事務所が代表する設計者しか行わない。(実施設計は事務所全体で行うことが普通である。)
しかし一般のハウスメーカーは、その基本設計を、入社したばかりの設計者や、新人の営業マンが行う。ハウスメーカーの支店長や設計部長は行わない。確かに四角く分譲され、敷地いっぱいに建てる家の場合はそれでも良いが、住まい手の生活をより快適にするためには、建て主さんから発せられる情報を的確に察知し、基本設計に活かさなければならない。そのためには、やはり多少の人生経験と自分の家を建てた実績が必要であると思う。

今回の立地条件は、大変恵まれている。というか、そういう土地条件でご購入されたのである。
北側方向が日本海に面する土地で、海までの間は多分建物は建たないとおもわれる丘の上である。
このような景色であるが、土地と同じ軸どおりに建築軸を計画すると、海とは言っても、あまり景色の良くないほうの景観も窓から見えることになる。できれば少し左の方角が良い景観である。そこで建物の軸どおりを11時方向に回転させ、家の中から海を見た場合、一番景色の良い方向を見るように計画した。
このような軸を振る事は、公共建築など大きな計画時に有効な手段で、今回の提案が建て主さんに支持していただけるかは不安があった。
しかし、説明を聞いていただき、直ぐにO.K.がでた。

次に、既存の民家の骨組みをできるだけそのままあらわし、残すように計画した。
当初、簡便な構造変更を優先したため、2階のバルコニーは、多少出入りの悪い計画となった。ここで建て主さんが強くその部分をご指摘になり、出入りしやすいように!との一言で、構造を新たに構築し、複雑にもなりつつも、修正した。それが下の図面や写真である。
出来上がってみると、確かにこの方がこの土地を生かしきっているプランである。やはり家つくりは、2人3脚で、施工が始まると3人4脚で進むことが一番良い。(私の未熟なところを建て主さんがご指導して下さる。何とありがたいことであるか。)
※ フランクロイドライト
20世紀にアメリカで活躍した建築家。日本での代表作に旧帝国ホテル(現在は愛知県明治村に移築)があり、実物を見学してきた。幾何学造詣を得意としており、日本人にファンが多い。大手ハウスメーカーの三井ホームなどは、このフランクロイドライト
の家に似せたデザインが多い。