TEXT 1999.3
私の父は、痴呆症が発病してもう直ぐ5年ぐらいになる。父の面倒のほとんどを一緒に暮らす母がやり、私はサポートすることで3年間過ごした。バリアフリー住宅。高齢者住宅などといわれて、数多くの住宅が建設されるが、実際体験してみると、まだまだ熟成していないことを実感する。これは、実際使う立場の建築物になっていないからだ。通院している病院や高齢者施設を含めて、今の高齢者施設には、極めて単純な疑問があるからだ。
疑問
1.高齢者の施設であっても、玄関に腰かけて靴を脱ぐ形式(椅子とか)になっていない。
高齢者は、靴下の厚いものを履いていたり、足の浮腫みがおきやすい為、靴を上履きに履き替えにくい。我々(30代)でも手摺につかまって履きかえる方が楽なのに、病院、医院、施設で、履き替えの補助椅子を見たことがない。ほとんどの患者さんは高齢者であるにもかかわらず・・・・。なぜだろう??高齢者の自立を促すのであれば、尚のこと履き替え補助は必要だ。小児科医院(病院)のトイレに、子供用の便器が設置されていないことも多くあるが、使う立場でものを考える建築になっていない。新潟県では長靴を履く期間も多くある。長靴の脱ぎにくいこと。かならず体がふらつく。 腰掛がないのは不思議だ。
2.段差解消より、家中暖房を!!
高齢者(痴呆)の介護は、24時間目が離せない。動き回るし、勝手にどこかへ行く。しかし家で転ぶことは少ない。段差がとても多くある家なのに・・・。父も祖母も祖父も段差だらけの家に住んでいたが、転んだことはほとんどない。段差解消には車椅子も使えるようにとの配慮だが、我が家の高齢者は、車椅子を使う機会はなかった。
一番望んだことは、「戸を開けたままできる家」。「扉がない家」だ。すると暖房や冷房しにくくなるが、これは高気密高断熱技術を使い、家中暖房冷房することで解決できる。高齢者住宅基本は、介護者にもやさしい家がとても大事で、開け放しても暖かさに問題ない家は、介護者の負担を軽くする。高齢者施設のほとんどが、全館冷暖房が整っている。これは利用者はもとより、ケアサービスする人が、より快適にできるための条件だと思う。