2024年建築学会 学術講演梗概集から10 制振装置

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2024年建築学会論文梗概集の紹介の10番目は「構造の分野」で、最近普通の建て主さんにもその話に出てくる「制振装置」の報告となる。

制振装置の評価は大変難しい。木造住宅でもよく耐震と制振は違うということ言われる。確かに厳密にはちがうが、いずれも柱と梁の軸組木造構造に部材を追加し何らかの水平力が加わったときに局部で変形し、その変形等の運動エネルギーを熱に変えることであり、その原理と仕組みは大体同じ。一方免震構造は別物で、木造部分に手を加えず、木造構造とは別の装置で運動エネルギーを熱に変え大地から水平力が伝わることを少なくしようという装置(入力を抑える)である。よって耐震、制振共に台風でも効果が得られるが、免振装置は基本的に台風に対し特に耐力をもたない。

さて今回の研究は、3つの違う装置(制震3つと耐震1つ、何もない柱と梁で1つの5とおりの装置)を持つ軸組に水平力を加えてその変形や加速度を実測している。

耐震は耐震部材で1.5(2.5)倍の低強度の片筋かいということに注目。ラーメンとはただの軸組のみ(固有振動数は2Hzという柔らかい構造)だと想像してほしい。

写真右下の斜めにある黒い部材がオイルダンパー式の制振装置。

水平力として実際の地震の入力波で行っている。

いつものように結論を先に示すと、筋かいのある耐震壁が最も変位がなかったが、今回は制振装置の評価であるため、軸組だけのラーメン構造と比較しており、54%低減させることができたとある。

しかし最も筋かいとしては簡易な片筋かいの耐震壁でもラーメン構造より70~80%の低減効果があたっと図3では読み取れる(El Centro1940 ,Taft1952EWは効果が薄い)。

つまり変位は筋かいの耐震壁が最も少なく、次に制振装置が上下4か所に入った試験体であった。実務者から見ると、今回の片筋かいの設置費用は多くても1から2万円で可能な簡単なもの。一方車用オイルダンパーが入った装置は設置に5万~10万(4個で)はすると思われる。費用対効果をみれば筋かいを単純に壁に入れるほうが理にかなっている。まぁだからほとんどの家が耐震壁による耐力壁なのであるが・・・。

制振装置が優れるのは最大応答加速度が筋かいの耐震壁より半分以下になっていることである。

また制振装置の壁は固有周期も長くなりゆったりとしたラーメンに近い揺れになる。但し地震波によっては筋かいの耐震壁も長い周囲になる場合がある。

筋かいを使った耐震壁の欠点は、最大応答加速度を入力の2倍になっていることもあること。これによって2階が揺すられる速度が大きくなるとの事。この辺りは固有の振動数との共振もあるので一概には言えないと私は思う。

アンカーボルトだけ締めなおすが、作り直すことはしない試験体に、何度か続けて試験するうちに筋かいの耐震壁のほうは周期が長くなる変化を見せるがこれをもって繰り返しに強い特性があるとの事。

さて制振装置の評価は難しいが、まずはこのようにどこのメーカー製でもない制振装置に対し単純に比較するのがわかりやすく、制振装置だけを使っても地震に強い家はつくれないことがわかる。また制振装置の接合部には集中的に応力がかかっていると文中にもあり、強い制振装置一個を入れるとそこで破壊されること、及び偏心力も生まれるので、1個で強い制振装置は難しい。一方現在の木造建築のように仕口が金物でがっちり固定された建物より、伝統工法のような仕口部での変形が大きい特性の建物のほうがダンパーの効果がある書かれている。よって既存の耐震補強にはマッチしていると思われる。

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