今年のまとめ 基礎から逃げる熱と床下の多湿環境
  更に夏型逆転結露

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建築技術2017年1月号の記事。

まず今年も研究テーマは床下にありました。

特に基礎断熱の熱の逃げ方や床下内に外気導入した場合又は、通風で夏期を過ごした場合の床下は多湿空間になり、数年経過するとカビの問題が起こります。

基礎の熱の逃げ方は、未だ北海道を中心とした布基礎における熱の移動が主体で、べた基礎内断熱の熱の移動については少々?がつくと思っております。

これは国が定めた25年基準(28年基準ではなく)の↓マニュアルには、

のように基礎から逃げる熱の計算式(U値算出式)記載があり、そこでは私が1年前(2016年の暮れ)に申しあげた熱橋によるスラブ内の熱の移動が考慮されていない式になっております。

超高断熱の家ほど熱橋となる基礎内断熱のスラブ部分。この概念が上の式には入っていない。

「緑の家」の実測からスラブから熱の推測↓

驚き!スラブ中央部から逃げる熱を熱流計で実測。その4 まとめ
そろそろまとめます。学術的な事でなく、実務的なことでのまとめです。 条件は・・・ 新潟県の砂丘地及び水はけがよく、建...
驚き!スラブ中央部から逃げる熱を熱流計で実測。その5 補足   床下暖房は省エネでは無い!
今年の最初の連載・・・「驚き!スラブ中央部から逃げる熱を熱流計で実測」は4のまとめで終わりました。ただわかり難いとのこと...

それで今年はこの部分の熱の移動を中心に実測を行っております。

楽しい結果が出てくるのではないかと思っております。

建築技術2017年1月号の記事。

また・・・

逆転結露と言われる内部結露の問題が、夏の冷房空調では問題が起きない事は、以前から学会で数多くの実測やシミュレーション結果でわかっておりましたが、最近の夏型結露はなんと外壁が受ける雨がかりが原因とわかってきました。

つまり・・・

外壁に容易に雨がかかり、それが通気層内に入った場合(胴縁で遮られて釘穴を通して壁内に伝わる場合もある)、熱い日差しで壁内が蒸されて周囲の木より沢山の湿気が壁内に放出され、それが夜間ある部分で冷やされたときに、又は多量の湿気を周囲の木等が吸湿することが間に合わないので内部結露を引き起こす事がわかってきました。よって夏型逆転結露を防ぐには次の3つを満たすこと必要です。

  1. 正しく機能する通気層を確実に設ける
  2. 木の外壁では屋根を外壁から出来るだけ延ばして雨がかりを防ぐ
  3. 防水性の高い外壁では、防水性が維持出来るようにメンテナンスする

ことになります。

現在通気層は殆ど建物(住宅)で設けられておりますので、それがしっかり機能すること(通気の流れが阻害されない)に注意していればOKです。防水性の高い外壁(金属や表面処理されたALC、モルタルなど)は防水性が維持出来るようメンテナンスする事が重要です。木の外壁の場合は古来から行われている屋根の出(軒の出)をしっかり延ばすことが重要で、これらは何れも基本中の基本の仕様で、このような所謂「無難」である設計施工方法なら、夏型逆転結露は恐るるに足りません。

建築技術2017年1月号の記事。

また最近の大きな問題である屋根の野地板の結露も同様で、基本中の基本の

  1. 屋根形状の単純化
  2. 劣化の軽減等級3の規定より数割以上大きい小屋裏換気量確保
  3. 直下天井面の防湿の徹底

これらを行うことで野地板の夏型結露を防ぐ事が可能です。これらも「緑の家」では当たり前のことですね。つまり無理をしない外観(屋根形状)で、且つ小屋換気をより多くし、天井の気密化もおこなうという事です。小屋裏の無い屋根断熱では正しく屋根通気層を設ける事が基本ですが、棟換気との正常な繋がりが特に重要です。

さて何時もトレンディーな話題を提供してくれる南雄三先生監修の例年の建築技術1月号ですが、今日は2018年版が出版されます。それも今回は湿気等数多くの研究をされている本間義規先生(宮城学院)との共同監修となってその期待はMAX・・・。是非お買い求め頂ければと思います。

建築技術2018年1月号内容紹介

【特集】
わかっているつもりだけの結露
監修:南 雄三(住宅技術評論家)+本間義規(宮城学院女子大学教授)
協力:松岡大介(ものつくり大学建設学科准教授)
結露についてわかったつもりでいても,結露の謎は多い。結露の実害はどのようなものがあるのか。実害を避けることは難しくなくても,起こってしまった実害に対処することは難しい。結露のメカニズムと害を知り,結露を防ぐための対策と,結露を予測するための計算方法を解説する。

I.いまなぜ結露なのか
いまなぜ結露を取り上げるのか│南 雄三……78
空気と湿気…わかっているつもりでも謎だらけ│南 雄三……80
結露の実害とは│南 雄三……81
結露を防ぐには│南 雄三……82
結露を計算する│南 雄三……84
新築の結露対策と既存の結露対策│南 雄三……86
結露にもいろいろある│南 雄三……88
次世代省エネルギー基準の防露施工概要│南 雄三……89
II.わかっているつもりの結露
結露のメカニズムとは?│本間義規……92
なぜ乾球温度と湿球温度で相対湿度が読めるのか?│本間義規……94
水分の由来に応じた内部結露とその特徴│安福 勝……96
III.結露の実害とは
カビとは何か? カビの実害とは?│鍵 直樹……98
かびとこけと藻は違うもの?│中嶋麻起子……100
外壁の汚れと結露の関係とは?│松岡大介……102
錆と結露の関係とは?│本間義規……104
過乾燥は防げるのか?│開原典子……106
IV.表面結露
生活上発生する水蒸気は換気で排湿できるのか?│田島昌樹……108
夏型結露のメカニズムとは?│小椋大輔……110
V.内部結露
冬の内部結露に対する通気層の役割とは?│松岡大介……112
EPSや木質系断熱ボードに透湿性塗料を塗った外張断熱工法は蒸し返しがあるのか?│本間義規……115
調湿系断熱材は防湿層が不要なのか?(室内側防湿層がなくてもよい条件とは?)│伊庭千恵美……118
VI.夏の逆転現象
夏の内部結露(逆転現象)のメカニズム│齋藤宏昭……120
VII.温度差換気と結露
2階で結露する理由とその対策とは?│本間義規……124
VIII.開口部の結露
二重サッシの結露はどうすれば防げるのか?│林 基哉……126
カーテンや障子などの補助部材は窓の防露にどう影響するのか?│小早川 香……128
雨戸・網戸は窓の結露防止に役立つのか?│菅原正則……130
IX.床下の結露
床断熱の結露の危険とは?│藤田浩司……132
基礎断熱の結露の危険とは?│藤田浩司……134
X.付加断熱の結露
付加断熱の結露はどう起こるのか?│本間義規……136
付加断熱の非定常計算とは?│本間義規……138
XI.金物の結露
釘頭は結露するのか? 実害はあるのか?│土屋喬雄……141
羽子板ボルトやアンカーボルトは結露してもよいのか?│石山央樹……144
XII.調湿
調湿のメカニズムとは?│小椋大輔……146
内装材に調湿性があれば表面結露しないのか?│小椋大輔……148
調湿性のある壁は熱も出入りするが,どれほどの熱量なのか?│小椋大輔……150
XIII.結露の計算
内部結露の定常計算法とは│松岡大介……152
内部結露の非定常計算法とは│佐伯智寛+齋藤宏昭……156
表面結露の定常計算法とは│松岡大介……160
定常計算法と透湿比抵抗判定はどちらが厳しい?│松岡大介……163
XIV.新築と既存の結露対策
内部結露に影響する新築と既存住宅の雨水浸入リスクと下地材の乾燥について│宮村雅史……166
新築での結露対策と既存での結露対策とはどう違うのか?│齋藤宏昭……168
XV.対談
結露はどこまで科学されているのか│本間義規×南 雄三……170

↑本の紹介からの転載。

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