構造用合板耐力壁の耐震チェック

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最近の合板には白矢印の文字が追加表記されている。

最近の構造用合板にようやく印字された文字「自動釘打ち機を使用する場合は、空気圧を適切調整すること」であるが、これはどうも建て主さん向けではなく、作り手に忖度している。

「自動釘打ち機を使用する場合は、空気圧を適切調整すること」が何を示しているかというと、「釘のめり込みはいけませんよ。」なのだが、それが直接書かれると、構造用として所定の釘打ちが決まっている場合は、めり込んだ釘ではNG。構造用でなければめり込みも特に問題はないのでこの表現でよいのではないかとのご意見もあろうが、それだったらその上で印字された釘の種類とピッチと倍率の直下に印字する必要はない。当然直下に書かれているので構造的使用に限定され、なら「釘のめり込みはいけないよ」でOKなはず。

左は構造として合板を使った場合で、右は構造外で使った場合。釘の打ち込み方が全く違う(非耐力壁の釘は多少のめり込みOK)。このことが柱の両端部金物を守ることになる。

また一般の方及び構造計算をご自身の手で行ったことのない人はわからないだろうが、構造材として使う合板と非構造材の合板貼りを同じように釘打ちしてはいけない。壁の強さと場所を特定して柱の両端部の金物を強さを一か所ずつ決めるので、非構造材合板を構造材合板と同じようにして釘を打つと、最悪柱が土台などから外れ、一気に耐力が無くなり建物大変形につながるので、私たち技術者はその事に注意して現場の釘打ちを確認している。これは構造用合板だけでなく、建材合板等他の板状耐力壁全般に言える事である。このあたりが建て主さんも含め一般の方ではまず理解できないところであろう。

広島南区の家の耐力壁検査で広島県に伺ってきた。

さて一昨日と昨日は広島で建築中の「緑の家」の耐力壁検査にスタッフMと二人で伺ってきた。筋かいの耐力壁と比べ、合板耐力壁のチェックのほうが時間と神経を使うため、比較的大きいこの広島南区の家の場合は2人で行うほうが集中でき且つ安全に行われると判断した。やはり2人で行っても2時間はかかり、一人で行った場合は集中できる時間を考えると5時間以上かかると思われるから、妥当な判断だった。

大壁で貼る構造用合板の場合は、このように窓以外全面に合板となる。

合板による耐力壁の場合は2つの施工方法があり、真壁による耐力壁と大壁により耐力壁がある。今回は合板の価格の下がったころの設計のため(現在は再び上がり気味)大壁の構造耐力壁となっている。

お決まりの吹き抜けのコーナーサッシ。準防火地域でも効果的なら計画する。

通常この段階になるとサッシが取り付くはずなのであるが、今回はシロアリ予防剤を全ての構造材及び構造材に接する補助材にも散布するので、サッシがあるとその噴霧薬除却に労を要するため散布後に一斉に取り付けるとの事。地域条件が変われば家の工事も仕様も変化する良い例である。

シロアリ予防といえば昨日紹介したシロアリ対策の基礎貫通スリーブも既に仕込まれている。

こちらはエコキュートへの給水給湯管のスリーブ。

今回の小屋裏は和小屋でいつもように桁上合板で固めている。排湿用の穴もありこの小屋裏全体もシロアリ予防剤が散布され、穴下はホウ酸がたっぷり入っていセルロースファイバーで満たされる。

雲筋かいは妻側合板で妻側はしっかりあるので桁方向のみでも十分。何よりメンテナンスがしやすい無難な小屋裏となる。

「緑の家」はとにかく「無難」を目指す。今回も桁上合板が全面にはられ、だれでもこの中に入ることができ、なんといっても安全に歩きまわれる。建て主さん曰く「ここにも照明があるとメンテしやすいかも」とのことで、確かにその通りだとおもう。その一方床下内と比較しその使用頻度を考えるとそこまで必要ないとのことで照明はなくなった。この床足場があれば、雨漏りおよびシロアリメンテではとても無難な仕様になるだろう。この点は屋根断熱では小屋裏空間がなくなるので、この天井断熱より無難性は落ちる。同じコストなら空間デザインとメンテナンス重視の二者択一を迫られた場合、メンテンナンスを重視するというところが「緑の家」の特徴。

脚立さえ用意できればいつでも小屋裏全体を見回ることは可能。

そもそも雨漏りなんかさせなければよいし、シロアリもこんなところには来ないという考えもあるだろうが、所詮人の考える事や行うことはミスが絶対ないことはなく、また生物も日々進化すると思うので、だれでもメンテナンスしやすいことは良いことで「無難」といえる。

無難とは言いつつ、どうしても必要と思われる仕様は取り入れるのが「緑の家」でもある。それが今回は光庭となる。

光庭が右手の屋根の欠けた部分になる。この後太陽光発電パネルが設置される。
ブルーシート部分に外壁ができ、完全に3階建ての隣家からの視線をシャットアウトする。よってここから見て隣家の窓は全く見えなくなる。

室内窓から見ると、2階の窓でもしっかりと隣地からの視線を完全遮断し、カーテンのいらない窓が出来上がる。これは住宅密集地では最も有効なプライバシー確保の手段であり、ここは耐風梁計算や家の凹んだプランの構造的デメリットを補正するために、水平面剛性を14KN/mに上げてでも確保したい仕様(プラン)となる。これも基礎が高く床が高い2階建てなので可能な事である。

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