法的な工事監理は要、そして換気の設計と工事監理

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

上の写真はある2棟の「緑の家」の耐力壁検査に伺った時の生のチェックリストである。いずれも伺う前に施工会社さんの自社検査を受けた後に、私どもで検査した時のもである。赤字が是正項目であり、現地で付箋なども付けている。

まず法的な工事監理とは、確認申請時にその書類に記載される建て主さんが指名した工事監理者が行う工事監理のことである。延床100m2を超えるの建物では建築士しか工事監理者になれない。逆に言えば義務が発生するのでNG施工を見逃すと一定の責任を負う。

上の写真はNG部分の一例だが、指摘後に既に是正がしっかり行われて正常な施工になっいるのは当然である。さてこのNGが問題なのは検査前日に「この部分とこの部分を見ますよ。私共が伺う前に必ずチェックしてください」と伝えているのにこのような状況になる。これが現場の現実である。施工会社さんも問題のある施工会社ではなく、逆にこれ以外では大変よい工務店さんでもあるので、私共と関連のない施工会社さんはもっと酷いなのであろうと想像できる。つまり建築の専門であるの工事監理者が見るといってもこの施工状態で、もし素人な方しか行かない第三者となる工事監理者が見ない現場だと・・・どうなるのだろう。

合板又はMDF等で耐力壁をつくる場合は、30坪の家一軒で2000本以上の釘を打つが、逆を言えばたった2000~3000本である。このくらいのチェックに2~3時間。この2時間を惜しむ必要はない。一般的な木造住宅の大工さんの延べ施工時間は約1000時間なのだから、0.2%の時間比率しかない。一方この耐力壁の重要性は現場製作箇所では最重要構造の施工箇所であり構造的重要度が占める割合は私感ながら25%であろうと思う。つまり基礎関連が50%、この耐力壁が25%でその他が25%だろうと考えているくらい構造耐力では重要箇所を、業務の0.2%しか使わない事で25%の重要構造チェックを行うので、本来なら大変効率が良いはずが現実はされていない。

次に換気の工事監理だが、先日のブログで私共の使用する換気量測定器を紹介したが、換気量を測定することを生業としている会社さんでは、高価な住宅専用の風量測定器を使う。最も有名な測定器は下のモノ。

30年ほど前から販売されており、価格は確か数十万であるが実績も多く、高断熱高気密の事を知っているならこのメーカー名を知らない方はモグリとさえいえる。この機器は広島南区の家で施工を行った永本建設の持ち物で、シールから2003年に購入されているようで、流石である。

この場所は25m3/hsで計画されているが、数値は24~27m3/hと表示。手持ちの簡易測定器も25m3/hを示した。これを使う場合はグリルのまま測るのがよい。

で、この測定器をお借りして「緑の家」の風量測定器と比べると、25m3/h~30m3/hではほぼ同じ風量を示した。これで簡易計測器でもきちっと特性を把握すれば、ほぼ正しい風量が測定できることがほぼ証明された(吹き出しグリルの圧損と簡易風量計の圧損が近い箇所がこの風量なのだろう)。上の高価な機器でも校正を定期的に行わないと狂いが生じやすい熱線型だが、この機器は年数こそ20年以上経ているがほとんど痛みはなさそうで、同じくらいの数値を示すことから測定器両方がおかしいことは確率から考えて低いだろう。よって両方ともある程度確かな風量数値と思ってよいだろう。

熱戦のセンサーは複数でこのようになっており、何しろ軽く、機器自体に圧損がなさそうな構造が良い。

このように簡単に風量を測り、調整できるのは換気計画が良いからである。

その換気計画だが、今回測定した広島南区の家では2階にSAが6つ集中していたため、2階の天井にSAチャンバーを取り付け、圧力一度ここで整え、その後たこ足で分散して配っているので、経路長や曲がり等の圧損に差が出にくく風量調整は行いやすいように計画。

2階天井にある巨大な点検口内に設置される空調チャンバー。これが今回の空調計画の肝。
空調計画は必ず設計者が行う。7本のダクトが刺さるチャンバーBOXを2階の天井に埋め込む。
下から天井を見上げる。チャンバーには150φ+6本の100φダクト計7本が接続される。

しかも天井裏に這わせたこのダクト7本は、いずれも留め付け固定を行っていないので、手で抜くだけでとれるという30年先のダクト取り換えも比較的簡単にできるように計画している。

天井裏に固定無しで置きっぱなしのダクト配管。風量が35m3/h以下を100φで配るので、固定しなくとも当然動きはなく振動も音も出ない。固定されないいわゆる「さや管状態」が取り換えの自由を約束する。

一方全てを目視できる一階床下内のダクトは下のとおりとても複雑で、できる限り圧損を少なくするような曲がりをとるために金物固定をした経路となっている。しかも今回はご要望で空気清浄機をOAに組み込み新鮮な空気をさらに浄化しているのも特徴。そのような機器が多数ありダクトが複雑でも床下内設置ならご覧のとおり余裕の配管で、メンテナンスも上方から楽にできる。

OAから空気清浄機(中央機器)のダクト、RAのダクト、EAのダクトが交差しているが、この床高ある床下収納では余裕の配管。換気扇本体はこの右手にある。

設計計画時に計算した想定ダイアル位置は4.3前後。これが完成風量測定後の調整ダイアル位置も4.3前後とピッタリとあう。これが技術職の味わう計算値と現実値が同じくなるうれしさである。当然正しく施工して頂いた永本建設(株)の監督さんには感謝である。

この複雑な計画で計算と実測がぴったりと合ううれしさは設計者の喜びである。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする