構造用合板の耐力壁

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とても好ましいお手本のような合板耐力壁の釘打ち(こちらは真壁)。

昨日月見町の家の面材(合板)部分の耐力壁検査を行ってきた。こちらの現場の大工さんは連続してパーフェクトの施工を行っているが、今回はさらに好ましい面材耐力壁の釘の打ち方であった。

隅に増し打ちしてある釘。これは面材耐力壁のお手本。

耐力壁の実物破壊試験を実際見た人ならわかるでろうが、構造用合板を使った耐力壁を、極限まで力を加えると(いわゆる破壊)最初に降伏するのが、合板の隅の釘である。この釘が抜け始めてほかの釘部分が抜ける。よって隅の部分の釘を割り増しするだけで、「粘り」のさらに上がる耐力壁が出来上がる。この「粘り」が強いことが合板耐力壁としてとても好ましい。つまり壁全体を強くするだけでは今度は柱と梁等接合部に負担がかかり、この接合部が先に破壊されれば、一気に耐力が0になり倒壊するきっかけになるが、接合部さえ確かなら変形が大きくなっても粘ることで倒壊を防げる。このような釘打ちの考え方は制振装置等補助的耐震装置を導入する前に行う面材耐力壁の基本である。

合板9mmで倍率2.5(N50@150以内)の面材耐力壁(真壁)

これだけ綺麗に釘を打ち込むこちらの大工さんから少しどうしてめり込みが生まれるのか教えてもらった。すると一刀両断の一言・・・

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「結局釘を打つ大工さんと現場監督さんが、めり込み等ないその大事さに気がつかないし、面倒だからであって決して釘打ち機のせいではないとのこと。」

最近釘は下のような空気銃のような機械で打ち込む。手で打つことはほとんど稀。

MAXのホームページから転載。

この釘打ち機で下地の釘打ち効率は飛躍的に上がったことは事実だが、そのため下地ではないはずの面材耐力壁まで下地扱いで雑に釘打ちされることになった。

そもそもこの釘打ち機のマニュアルには・・・

連続打ちは「下地用途」であるとはっきりと記載されている(青いアンダーライン)。また単発打ちは釘頭を面材に面いちに合わせたりすると書かれている(黄色いアンダーライン)。面材耐力壁の釘が下地かというと、それは違う。面材耐力壁は構造部材なので下地ではない。下地とは仕上げ材を固定するためだけの部材を指すので、構造材ではないし、「面いちうち」が必須だから単発打ちが原則。ところがほとんどの大工さんが屋根合板を連続打ちで釘を打つ。しかし最近の屋根合板(野地板)は、水平面を強化する構造材であるため、下地材ではない。連続打ちはめり込みが発生しやすくまた打ち込む位置がぶれやすい。

話は戻るが、「釘のめり込みをなくすために行うことは、まず釘打ち機の圧力を最低にして、それでもめり込むならコンタクトトップをはめて使う」・・・そうである。

レバーやダイヤルで空気圧力を最低に調整する。

メーカーの取説にもそのように書かれており、

つまり釘をめり込ませない方法はあるのに、やはりめり込むことを許容するその気持ちが原因と思う。そもそも構造用合板だけではなく、モイス、ダイライト、ハイベストウッド等でもめり込み釘は厳禁であるはずだから、それをこのようなガンが使えるように機械メーカーが工夫をするのは当然である。

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さてこちらの現場では一部手打ちでN50を打ち込んでいるが、手打ち用の釘にはN50 の証拠たる文字が釘頭にない。でも間違いなくN50の箱から出したとの事。

「不安ならこちらで調べてみますよ」

と言って釘を数本持ち帰ってきた。そして調べると・・・

N50の釘は上のような規定でつくられている。N50でないFN50では胴径dがN50より細い。
N50の連結釘には50と釘頭に刻印がある。胴径d=2.7mmと規定ぴったし。
刻印がない手打ち用釘も胴径d=2.7mmで規定通り。
釘頭はD=直径6.6mmと規定通り。流石N50の連結釘。
手打ち用の釘頭はD=直径6.4mmとわずかに小さいが許容寸法±0.66mm以内で規定内。

この胴径と釘頭の直径がこの釘の耐力の肝となり、この2つが規定通りであるため現場で使われている釘はN50で間違いなさそうである。

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