QPEX(キューペックス)という非常に優れた安価なソフトがあります。このソフトは北海道の室蘭工業大学の鎌田研究室で開発され、建設会社や設計事務所が、高気密高断熱で計画した家の熱損失係数Q値や暖房費をシミュレーションできる大変優れたソフトです。しかしソフトは使い方を間違えるとただの机上の空論になりますので注意が必要です。
QPEXは私も利用しており、これをつくりだして頂いた鎌田先生始めそのスタッフ、また新住協さんには敬意を払いたいと思います。だからこそ間違った使い方で評判が落ちないようにいつも次の点に注意をしております。
以前も少し触れましたがこのソフトを使った時に普通の建設会社さんや設計事務所が間違えやすい所は、シミュレーションした家の生活方法や周囲の環境が因子として入力されない事です。
Q1住宅を造るために造られたQPEXは、熱損失係数と共に窓から入る日射を加味(暖房エネルギーとして加算)し、暖房費をシミュレーションします。
Q1住宅とは、暖房費が次世代省エネ基準の断熱性能で使用される暖房費の1/2(本州では1/3)以下になる家が目的です。非常に合理的かつわかりやすい家造りです。そしてQPEXはその目的を達するツールとして使われます。しかし生活スタイル、生活条件、周囲の環境因子が違うので実際の暖房消費エネルギーと必ずしも一致しません。
生活スタイルと生活条件は設計者がコントロールできないの仕方無いのですが、周囲の環境因子は設計者が一番わかります。しかしこの事を間違える方が多分いらっしゃると思います。それは・・・
Q1住宅を造るために造られたツールのQPEXは、熱損失係数と共に窓から入る日射を加味し、暖房費をシミュレーションします。ところがこれを建設会社さんは鵜呑みにして、このツールで計算すれば暖房費が1/3になると思い込んでしまう事が問題ですし、そのように説明している事を見かけます。先に申し上げたとおり、このソフトは窓から入る日射を勘案してます。よって南窓はカーテンがない方が殆どの場合は暖房エネルギーの削減ができます。そこでソフト入力条件でカーテン無しとすることが多いと思います。よってレースカーテンや普通のカーテンを実際閉められると日射が計算通り期待できなくなります。また西窓や東窓からも日射を期待してますが、冬の低い高度の太陽では、お隣に家が並んでいる場合は、1階にはまず日は差し込む事はありません。この部分はHPのコラムに記載しましたのでご覧ください。
「野中の一軒家」であれば、このソフトのとおり日射熱が家の中に入り、結果暖房費が削減されますが、都市部の家ではトップライト以外何らかの日射阻害があります。ですので暖房費削減が「野中の一軒家」のとおりなるはずがありません(常識的生活で)。新潟県の都市部では一般的に60坪、大きくても100坪、都市部では45坪の敷地は珍しくありませんし、住宅地の道路は6mが普通です。すると家同士はほぼ向かい合わせで、隣との隙間もなく、窓の先に窓があったりします。ですので窓にレースのカーテンは必須です。また関東圏では防犯上家の中が見える事を極端に嫌います。留守中や夜は雨戸を閉め、昼の在宅時にはレースカーテンで視界を遮ったり、面格子がついています。
多くの工務店や建設会社さんは、実生活や家の建設される周囲の環境条件を考えません。私を含め暖房費マニアや超高断熱マニアは、エコや省エネのためなら、近所から見られようがカーテンは開けっ放しでがんばれます(特に男性。女性は防犯上心理的に無理)。通常は見えるところに隣家があればカーテンを閉めます。全ての人が「近所から見られる事に対し平気」という感情を持ち合わせていないのですね。また天気が良ければ良いほど閉めたがります。直射日光は眩しくて、冬でも日差が直接当たっている所は暑くなるので「感情的」に閉めます。これを全否定できません。「Aさんの家は開口部から日射が入るのでQ値1.6でも暖房費6万/年しかかからないよ」とはいいきれないのです(無論言い切れる条件の家もあります)。
拙宅の家(夫:省エネマニア)でも3月20日の晴天日は南側窓にはカーテンが・・・窓は3カ所も窓が開けられていた。
ですので希望する断熱性能(熱損失係数)は、窓条件を建て主さんと良く会話をしながら理解してもらう事が重要です。できない場合は、悪条件で安全側に考える事が良心的と思います。
高い性能を求める家ほど設計者は全体を把握する思慮が必要です。こんな便利なQPEXソフトを正しく活用し良い家造りに励みたいと思います。