提言13 「日中の通風(風通し)では室温は下がらない」その2

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図1 測定期間中の全体のデータ。

図1はその1で示した測定結果である。屋外温度測定するのは難しいが、実測したデータに緑色の気象庁の長岡市の気温データを重ねてみても大凡同様の変化をみせ、直接日のあたるコンクリートで覆われた南側の外気条件を考えると正確に実測されているようだ。

無断熱の家においてエアコンを使用しないで如何に涼しく家の中で過ごせるか・・・

通風するのがよいのか、締め切るのが良いのか?

さて詳細に図1をみると様々な事がわかるがそれらを下にまとめると・・・。

当たり前だが、

暑い空気は室内に入れない。

図2 「て・こあ」に不在時の2018年8月1日~8月3日の最暑日を含む室内外の気温。概ね朝7時に外気は室温より高くなり、夕方5時に外気が低くなる。

図3 「て・こあ」に人が常時在中の2018年8月14日~8月16日の最暑日を含む室内外の気温。概ね朝7時に外気は室温より高くなり、夕方5時に外気が低くなる。これは図2と変わらず人の在中とは関連が薄い事がわかる。

何を当たり前のことを・・・とのお叱りを頂くだろうが・・・

この原則は重要であるが、忘れてしまうこともある。

外気温度が高ければ窓を閉める。室内温度が外気より高ければあける。

では実際に日射遮蔽された室内が外気より高くなる時間を知っているだろうか?

断熱材の全く無い昭和30年まで多く見られた建築様式である「て・こあ」において、晴れた真夏日での家の中が外気より暑くなるのは夕方以降であり、夕方までは窓を閉めきった家の中の方が気温が低い。つまり窓を開けないほうが真夏の暑さを和らげることになる(図2、図3)。

測定期間中の最暑日の内外温度。朝7時にから室内が外気より温度が下がり、夕方5時頃に外気が室内の温度より低くなる。この日は「て・こあ」での活動はしていない日。

冷気を作れるところは湿気放出物質と日のあたらない大地

図4 これは「て・こあ」の風呂釜がある空間。風呂釜は大地である地面に小砂利を敷いて置かれている。外気が34度時であってもこの部分は26度のまま。サーモグラフィーでは絶対温度表示がプラス3度で表示されるようだ。

どんな家でも電気を使わないで冷気が得られるところがあり、それは湿気を放出する部分である。

その代表例が家の下の露出した大地(日射が直接あたらない場所)。

コンクリートなどによって塞がれている大地は積極的に冷気を作る事ができないが、

土などの場合は大地から常に湿気を放出して気化熱によって冷やされる。さらに建物中心部であれば年間平均気温(14度から17度)に近づくことになる。

次に冷やす事ができるのは・・・わら床の使われている本畳や土壁である。これらが気温の上昇とともに湿気を放出し、パージ熱分とそれ以外に若干であるが気化される水分が冷気を生み出す。

土蔵がひやっとするのは理由

ある有名な古民家の土蔵をサーモグラフィーで覗いてみた。これはその3で紹介する。

新潟県のスタンダート土蔵は・・・屋根が2重になっている。これは間違いなく日射対策だとおもわれる。

土蔵がひやっとする理由は2つ。

土壁の土壁厚さは10cmを超える。こうなるとこの土壁は断熱材となる。実はここまでは一般に語られるのであるが、冷やす部分がなければ、数日後には外気と同じ気温になることもある。では何故ひやっとするのか・・・。

1.土蔵内部が蓄熱体が多い事で日平均気温(昼は外気より低く夜は外気より高い)になり、更に断熱材となった厚い壁、浮いた屋根が屋外からの輻射熱を防ぎ壁・天井の表面温度が日平均気温に近づき、体温より低くなるのでひやっとする。特に夏季は服装が薄くなり且つ屋外から中に入ってくるとその比較で強く感じる。2.また露出した大地が家の中にある事と、使われている素材が吸放出できる自然素材だから。特に床が大地の場合は表面温度の低下によりその効果が大きい。

熱バッファーのある建物

ここでいうバッファーとは材料による熱バッファーと、空間における熱バッファーである。

材料の熱バッファーではタタミ、土壁など湿気を良く吸込み吐き出す素材のこと。最近はこの藁床が使われたタタミが無くなり断熱材や板が入ったタタミにとって変わられたことで、床ではまず湿気のやりとりを行わない。加えて厚さ3cm程度の土壁もなくなり、湿気の出入りを行う壁がなくなったので、湿気を介在とした材料の熱バッファーがなくなったことで外気と短時間で同調しやすくなった。

また、天井が高い部屋がなくなり熱だめによる一時的に暑い空気を上部に貯める空間バッファーもなくなった。

ご覧のとおり天井が高いところに熱い空気が溜まり下部は冷えたままが重要。また紙障子一枚が外部の輻射熱を防いで暑くなっている事もわかる。サーモグラフの表示温度は全て3度高めになるので、この図からは概ね3度引くと30度から35度の範囲となっている。当日は気象庁発表で36度の日。

此方の天井の高い古民家も天井部分に熱気がある。上下の差は5度。

郊外の空調しない家は夜は開けることがよい・・・。

図6 活動日において最暑日を含む8月14日~16日露点温度。白棒が外気の露点温度が高いときの量でグレー棒が室内の露点温が高い量。気温と違って決まったサイクルはなく概ね夜間に外気露点温度が家内より下がる。

これもあたりまえであるが、

「郊外の住居」では外気温より室温があがる17時以降は窓開けがよい。屋内の湿気量は図6の露点温度が示すとおり、外気の絶対湿度が高い時間の殆どが日中であるが、気温と違い明確に決まったサイクルではない。更に外気の露点温度があがる日中は、白棒が示すように室内の露点温度より大きく上がる=絶対湿度が高い。一方室内の露点温度が高いときにでもその差はわずかである。つまり室内の湿気量は開口部を閉めきっていても大きな暑さを感じる要因にはなりにくいと言える。

最暑日を含む真夏日の日中は窓を閉める

まとめであるが・・・

最暑日がある7月、8月において猛暑日に近い気温が予想されるときには窓を開けるより窓を閉める方が家内部の気温が低くなる。つまりこの時は・・・

「日中の通風(風通し)では室温は下がらない」

と言える。

念のためもう一度申し上げるが、

その1で定義したとおり

通風とは風通しの事で、この場合の通風は家の中が暑いので窓から風をいれ屋外の空気で室内の空気温度下げる事をさし、同時に体へ風をあてることで気化熱量を増大させ体温を下げ易くすること。ここで扇風機がエアコンと違い空気質を変える装置ではない団扇の延長であり、大正時代から約100年間以上利用されてきた事を考えると、気化熱促進は通風でなくとも良いと考える。よって通風の効果とは室内の気温を下げること。つまり家の中が外気より高い時のみ有効であると定義する。

であり・・・窓を閉め切ると風による気化熱促進は図れないので、扇風機の使用が必要である。実際「て・こあ」では扇風機を使用するとある程度快適に過ごせるのである。

つまり通風とは・・・夜間に行う行為だといえる。一方で防犯上の理由で夜間に通風が行えるかというと・・・相当厳しいことが最近の治安では言え・・・

・・・

・・・

つまり・・・このような民家でも夜間はエアコンによる冷房に頼ることになる。

ということ。

実際「て・こあ」も2階の就寝できる部屋のみしっかりとエアコンが設置されている。

日中に通風で涼しくなる(室温が下がる)との宣伝は・・・どんな条件の家なのだろう。

その3に続く。

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