旧笹川邸は再び訪れる必要があると思っている。それも今度は雨の日がよい。
軒樋が一般的になったのはいつの頃だろう?軒樋の設置により一般の住宅も飛躍的に土台廻りの耐久性が延びたと私は考えている。
軒樋がまだ難しかった頃(竹でも代用はできるが、耐久性はなく数年で交換)、上のようなお金持ちの建物は、その作り方で軒樋がなくとも耐久性がある造りだった。
それは基壇とよばれており、基壇の役目は建物の重量を支えること、地面からの湿気を抑制しつつ風の通りを良くする事と言われるが・・・私はさらに雨ハネを外壁におよばさない大切な工夫であるといえる。
コンクリートが発明される前にはどうしても雨が跳ねるところに木を使わざるを得なかった。この時、屋根の出を2mくらい取れれば雨が当たらないのだが、これには相当なコストとお金がかかる。そこで考えたのが基壇を雨よけにすること。
実はこの名残は今でも犬走りという表現で時々見かける。
この犬走りを効果的に使っているのが下の「緑の家」である。
雨の跳ね返りを基壇もしくは犬走りの側面で効率良く防ぐのである。だから犬走りはその際の位置がとても重要で、上のリンク先の「緑の家」では現地においてミリ単位でその位置を決めた。
100年前の普通の民家の「て・こあ」でも同様・・・。
基壇はあるが、上がり段を設けた時に軒樋が設置されていたらしく、それがまた外されたことで、上がり段の雨のはじき水が戸を腐らせていた。
最近の建築でのいぬ走りは、軒樋があることと基礎がコンクリートで高さが取れることで、その役目は湿気押さえと基礎の汚れ防止に役目が変わった。しかし基礎の低い時はその犬走りの位置は少し考えて決めたほうがよい。
このような智が集約された建築物を見ることで改めて気づかされる。それが楽しくて古い建物を見に行くのである。柱が太いとか、立派な座敷だと感じる事も大事だが、このような建物は庶民感覚ではないところは「凄い」だけで良いが、些細な事でとても学べることがある。
「緑の家」では基礎が普通の家の2倍以上高いので基壇はもちろん犬走りも必要無いが、何故犬走りが有効なのか、何時有効なのかは、結局「緑の家」の高基礎にもつながる。超高断熱高気密だけ良ければ・・ではNGであろう。
あと・・・この写真↓
ぱっとみて雰囲気があっていいねーと思われれば古い家がわかる方。
写真ではなくこの場所に立てばすぐわかるが・・・
こんな感じでとても歪んでいるのだ。
こんな板ガラスはもう手に入らない貴重なもの。「て・こあ」でもまだ残っている歪んだガラス戸があるが、今年の雪で数枚割れてしまいどんどん少なくなってきている。木は似たような物がまだ手に入るが・・・ガラスは大事にしたいと思う。