天然素材(木)と図面寸法

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2019年4月25日10時加筆。誤解を生む表現があり太字を追記しました。

近年無垢材の階段は珍しい・・・。しかしスリッパを履かない「緑の家」では足裏が触れる箇所だけに無垢の触感には価値がある。

大野町の家の階段は無垢材の杉の指定。階段材はすり減りにくい松や堅木の方が一般的にお勧めであるが、今回は私も個人的に勧める杉の無垢材が建て主さんの指示。

「緑の家」では無垢材を窓枠、ドア枠、床などの手に触れやすいところに多用する。手に触れやすいところに使うのには理由があり、これは22年前(平成9年)の事務所設立以来変わらないこと。

そんな無垢使いの「緑の家」であるが、その設計図書(いわゆる図面)の中には下のような仕様説明が20年ほど前からある。

造作材(窓枠、ドア枠、床などの構造材ではない仕上げ材)は図面に指示された寸法より-2mmまで許容する。

ちょっとびっくりするでしょう・・・。

図面に書き込まれた寸法より2mm(いわゆる約一分)も小さくてもよいとある。

これは実は天然素材である無垢の木を効率よく使う秘訣なのである。

この写真は5年前に自身で貼った杉の無垢床。この絹のような艶。詳しくは2014年2月25日のブログ。

自然素材である無垢の木は、工業製品の集成材の木と違いそれぞれ一本ずつの特徴が違う。また同じ木でも湿気の多い梅雨時期と乾燥した春の寸法が違うのである。そんな木を一律「100mm」でそろえて使用すると記載すると、良質の木のみ集め更に施工季節よって寸法かえる考慮しなければならない。また節の無い良質枠材を取り寄せたのに小さな傷をつけてしまったとき、かんなで2回削れば傷が全くなくなる等の時、この許容寸法があれば削って材料の無駄をなくすことも可能。無垢の木は工業製品の集成材より相当高いこともあり、カウンター材など大きい数法の木の時には集成材の10倍の価格になることもある木を無駄なくつかうコツが、この許容寸法なのである。

何で浅間は自身で施工しないのにそんなこと考えるのか?

と疑問に思うひともいるはず。

この杉の階段は5年前に自身で設計はむろん墨付け、カット、小穴付き、組み立てた。詳しくは2014年2月25日のブログ。

私は昔から無垢の木が大好きなので自分で無垢の木を加工して食器棚や床を貼ったりもしている。外壁や塀、階段も自身の手で加工してつくる。だからこそ木を効率よく使うことを知っており、それが天然素材の無垢の木を安価に使えるということになる。

このコーナー柱は人が触れたり寄りかかったりす場所にあるので、無垢の杉材にしたかった。無垢の杉材の肌触り、色の変化はどんな人も感動するほど素敵。今回はこれが一本柱の緊張感を感じさせる。

新コーナーサッシのこの柱にも杉の無垢材をつかっているが、こちらの構造材も-2mmまで寸法を許容する。無論そのように構造計算のときに寸法入力するのである。

そして・・・

隙間は後ほど埋める部分もあるが、この写真の木は完成時にも全て見える部材となる。

その柱の上にも無垢の木のスノコ・・・。この小さなスノコ材ならきちっとした寸法を指定するが、幅の大きい枠材、面積の多い床材、カウンター材、階段の踏み板材などはやはり-2mm(厚み方向のみである)まで許容するのである。

となるとある問題が生じる。それは図面に全ての寸法記載ができないのである。家内部では既に決まった寸法内において部材と部材の組み合わせで造られるので、ある部材の寸法が1つ変われば接する部材の寸法が変わり、それが伝播するのである。そうなると現場での手がとまり、いちいち設計者の指示を仰がなければいけなくなる。

「緑の家」ではそれを避けるため、大事な寸法のみ記載し、変わってもやむない寸法は故意に書かない。書かない寸法は現場で決めてもよいとのことにしている(CAD内ではしっかり0.1mm単位で書かれているが)。これは巷でも行われているが、設計事務所としてその範囲が大きいのである。ビルなど箱物であればそれは当たり前で、現場が始まり実際の材料の「あて」ができたときに全ての枠図(実寸図)など作成し寸法決定するが、住宅レベルでは主要な又は複雑な部分の枠図は書くが全ての箇所は書かないことが普通。そのため加工するときには大工さんが板図程度で加工することもあり、厚さはプレーナー、超仕上げ回数がその材料で変わることもある(枠は4枠同じでないと問題が生じるが)。つまり現場で寸法を変えているところがある。集成材のような安価な材料の時は、寸法はきっちりと図面に書き込まれるほうが現場は楽であるが、無垢の木の時は現場で寸法を決めることも必要なのである。そのために図面には必ず逃げ寸法(遊び)があり、その一つがこの許容寸法なのである。

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