現在熊本県に計画中の「緑の家」の基本設計を行なっているが、積雪がある新潟県と富山県の「緑の家」の計算の後だっただけに、拍子抜けするほど難しくない耐震計画である。
普段から初基本設計の段階で数日かけてラフの構造計算を行なっているが、上図はその熊本県の2階のプランである。熊本県では構造計算を行なう時の条件Zは0.9が国で指定されているが、数年前に大きな地震があったので自己判断でZ=1に10%引き上げて構造計画をすると・・・内部の耐震壁はなくて良い結果。図では真ん中に壁があるが、これがなくとも計算上は耐震等級3で耐風等級2を取得できる。九州では耐震性より耐風性が必要なところが多いが、この地域ではほぼ同じくらいの力が働く計算結果となる。今回は勾配天井がご要望だったので、その棟木通りとなるこの場所には念のため屋根まで耐力壁を設けてるように計画した。
一方先週構造計算を行なった富山県のある家は、積雪荷重が1.5mになる所での計画。ご希望は勾配天井だったが、2階内部の主要なところに耐力壁を設ける事が出来なかったので、登り梁による勾配屋根から和小屋に変更。それでも耐震等級2しか取得できない計算結果になった。
また先日ご紹介した新潟県の豪雪地である越路の家では、耐雪3mで耐震等級3を取得するために、ありとあらゆる内部の壁を耐力壁として、ようやく耐雪3mで耐震等級3をクリアーしている。また同じ新潟県でも耐雪1mの地域での構造計算は、勾配天井(登り梁)で耐震等級3をぎりぎりクリアー。
このように積雪荷重が如何に大きな影響を与えるのかわかる事例である。それでも積雪3mが屋根上にある時には地震は起きない想定をしており、つまり雪の荷重は3mに対して35%しか考慮しないので、大凡1m屋根に雪があるときに耐震等級3をクリアーする計算となる。逆にいえばたった1mの雪荷重であれほど多くの耐力壁や水平面剛性を必要とすることに驚く。
雪がないときの新潟県の耐雪2mを超える家の耐震性は(耐震等級2以上の建物に限る)、雪がないときになら震度7でも無傷でたえる事ができるかもしれないと思わせるようである(仕上げのヒビ以外)。これだから免震や流行の制振機構を組み込み必要はないともいえる。