木造建物は一年で耐震性が変化しているとの面白い研究があったので紹介する。
以前ご紹介したとおり、建物はそれぞれ個別の固有振動数があり、古い木造建築物で軸組工法は概ね3から6Hzであることは下のブログで紹介した。
一般的に木造建築では固有振動数が高ければ剛性が高く、耐震性も高いとなる。この振動数が季節によって変化するとこの論文では記してあるから面白い。
まず実測した建物概要したのとおり。
最近の建物と違い土壁が使われている建物とのことで、当然軸組の仕口は木同士の昔ながらの接合部だろう。
但し柱寸法をみると特別な豪邸ではなく一般的な民家で、土壁の厚さも少し厚い程度の裏塗りがされた建物であろう。
下は実測結果である。
確かに夏期と冬期では固有振動数が0.15Hz違い同じ建物ではないような結果になる。
湿気が多くなる夏期はヤング率が下がる傾向があるはずなのに、逆に振動数は増えていることから、木材が湿気で膨張し接合部ある仕口がしっかりかみ合わさって揺れが低減されたとみるべきとのことである。またここにポイントがあるが木材に含まれる湿気の遅れも含めて考える必要があるとの結論で、私もまったくそのとおりで、冬期だけをみればRH(相対湿度)が最も下がる2月よりも2、3、4月頃の振動数が少ないのが現れている。一方5月から8月までほぼ同じ振動数に止まっているのが少しわからない。でもこのような研究は面白く、古い建物は夏にくる地震が冬にくる地震より強く抵抗できるかもしれない。