
昨日圧雪が数十キロ続き厳しい路面状況だった雪の上信越道を走破し長野県小県郡の青木村にある「緑の家」へ耐力壁検査に伺った。この「緑の家」のUa値は0.21で断熱等級7をクリアーした耐震等級3の長期優良住宅である。

まず「緑の家」の話の前に、上の写真をご紹介したい。こちらはある建物※にある筋かいである。※この建物は公益法人が運営し税金も投入されているので写真で掲載する。
近年は構造関連の話題が多いが、構造は家の根幹でここが最も重要だと以前から構造最優先が平等と訴えているからである。

その矢印部分をアップにすると・・・

ご覧のとおり令第46条及び昭56建告第1100号の筋かいで、もし45×90の筋かいなら節が大きくて端にあるので実質の断面が足りない。この大きな節が断面を貫通し残された断面は45×60しかない欠点のある材料となる。堂々とこのように見えがかりで使用されていることに、やはり軸組み構造の認識はまだまだダメということになる。これは一つだけでなく下の90×90のたすき掛けも同様。探せばまだあるだろうが、ここへはそれが目的ではないのでここで終了。

つまりこれが現在の標準的な筋かい施工だと思って頂ければと思う(当然NG)。

さて話は「緑の家」であるが、耐力壁検査で筋かいの材料はパーフェクト。先回は流石に残念だったがリベンジがしっかりできた。その一方今度は単純ミスが何点かありそこはしっかり是正をお願いした。それがなかったらよかったのに残念である。

今回は雪の少ない地域(それでも設計積雪量59㎝)だったので、母屋間隔が1820にもなる(新潟は910程度)。そこで雲筋かいも少なくなりがちになるので、棟木下にはダブルで雲筋かいををいれ強化して小屋裏の一体化を図る。細かいことであるが、構造は慎重になってもよい。

現地には9時40分に到着して検査終了は11時15分くらい。スタッフと2人で確認しているので一人なら3時間以上になる。
その後現場を11時30分頃出て帰りの通り道の上田市内のあるところに立ち寄り、そこで「あるもの」を受け取った。

この箱に入っていたもので箱はいらないので現品をそのままカングーに積んで事務所に戻った。あるものとはこの箱に書かれてあるとおり当然「椅子」である。このメーカーさんはこちらもある先生の設計をさせて頂いているときにふと知った徳島にある椅子工房。様々なご縁があると実感する。
今度また詳しく紹介させていただくが、とても気に入った椅子なのであるが、標準ではオイルふき取りがされている。これだと何らウレタン塗装と変わらない手触りでまるで樹脂に触れているようで全くなじめない。「緑の家」では木はできるだけ「素」のままで使いたい。特に精密な木製品ほどその肌触りは無塗装が好きなのである。そこでわがままをメーカーに言って「無塗装」の特注品を2脚つくって頂いた。当然そんな普段つくらない物にはメーカーから条件が付く。何かというと「納品後の保証は一切ないということ及び塗装工程が減っても価格は変わらない条件なら製作可能」ということで、当然迷うことなく二つ返事で依頼。ちょうどその工房では11月からこのロット造るとの事で納期は最短の2か月で納品されたのである。なぜ保証はないかとうことは聞かなかったが、想像するに、このような精密加工の木は湿気の伸び縮みに大変弱い。梅雨時の多湿空間では塗装膜で湿気を防ぎ木の膨張を防ぐことは大事なのであろう。しかし事務所内は空調管理を年中行っているので、その心配がなく木を予期せぬ変形をさせない環境であると考えており、そこで二つ返事となった。
今回のことで当たり前のことだが椅子は座らないとわからない。どんなに有名な椅子でも自身に使い方、好みに合わなかったら良いものとは言えないことを実感した(ある有名な椅子は私には大柄で主張が強すぎた)。実はオーブルデザインでは家の内外あらゆるものの設計を行うが、椅子の設計だけは行なわない。一般的に椅子は必要な耐力を最小部材でつくって軽くすることが重要。これにはその各部の納まり精度が超職人の域で思考でき、かつ材料の吟味(同じ樹種でも部位産地等で違う特性)ができないと設計ができないのである。つまり設計=製作という一貫したしかも緻密なプロセスが必要なので、現在の当事務所のやり方(フリー施工者)での設計は難しいのである。