業者は教えてくれない、耐震性と垂直積雪量(設計積雪量)の重要なこと

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これは新潟県のある長期優良住宅を取得した「緑の家」の耐力壁位置図である。この「緑の家」は設計積雪量が1mで耐震等級3の性能をもつ。この建設地域は1mの積雪が最低の垂直積雪量として決められているが、この建物を垂直積雪量が2m以上が標準の三条で建てようとすると・・・

当たり前だがNG!

耐震性は一般的に許容応力度設計という構造計算で確認するが、この計算を行うと耐震等級3はおろか耐震等級2にも届かず、ただ単に建築基準法ぎりぎりの耐震等級1になる。

つまりこの家は三条市に建てようとすると長期優良住宅を取得出来ない。但し、但し・・・三条市で定める垂直積雪2m以上を、ある特例によって積雪を1.8mまで減じ、雪下ろしをすると言う「約束」ができれば耐震等級2をギリギリクリアするので取得できる。

何が言いたいのかというと・・・住宅の性能表示は原則地域によって変わるので、必ず建設地域の積雪表示と耐震等級の表示はセットで行うことが、ユーザーにとって誠意ある表示方法となる。

それほど積雪地域(新潟県全域)では、垂直積雪量に対する設計積雪量※が重要な性能表示だと言える。
※当ブログが設計積雪量としているのは垂直積雪量以上に積雪荷重を設定してもよく数値は設計者が任意に決めるので、設計者が想定する垂直積雪量を設計積雪量と呼んでいる。

建物を建てる時の垂直積雪量は下の県規則(新潟県建築基準法施行細則)で決められている。その条文は↓にある通りだがそれをを読むと、

垂直積雪量は知事が定めた垂直積雪量以上として・・・・

とあるとおり原則は「以上」であり耐震性を最優先する「緑の家」でさえ用いる垂直積雪量は最低の基準である※。よってより安全な設計は垂直積雪量以上の設計積雪量でもよい。しかし不思議なことに多くは「更に」この原則外で行われる。それは上で述べたある「特例」である・・・。
※耐震性は雪等の重量にによって大きく左右される。

その特例とは、住宅のほとんどが上の第5条「政令86条第6項の雪下ろしによる1mへの低減」でありそれによって一律垂直積雪量1mで設計される。しかしこの条文を読むと、

「十分な維持管理が行われ・・・」

とありこの条文が規定された昭和の頃は、雪下ろしという習慣と共に直ぐに作業してもらえる人材も多数いたが、現在の環境では住人による雪下ろしの習慣はなく、作業員の確保も難しいので現実的には難しい。

仮に、来年突然三条市に2mもの雪が降った時に、はたして雪下ろしが行えるだろうか? 雪下ろしには雪を屋根から降ろしたときに堆雪させるスペースが必要であるが、最近の住宅はそんなスペースを考えて家を配置することは少ない。また、総2階建てが多くなり、屋根まで届く梯子を常備している家も少なくこの2つでも住人による雪下ろしは現実的ではないと思われる。一方業者を頼むことも難しい。考えればわかるのだが、そのような状況になった時には近隣一帯がみな同じ状況なので、業者は手一杯で人手が足りることはまずない。一刻を争う雪下ろしは自身で行わなければ難しいと冷静に考えればわかる。つまりこの特例に該当するのかはなはだ疑問である。

垂直積雪量2.5m以上が規定された長岡市に建つ設計積雪量2.5mの「緑の家」

また見附市や長岡市などの豪雪地では垂直積雪量が2mを超えているので、その地域では設計積雪量を2m以下での減計画は望ましくないとまで書いてある。

では実際に長岡市で建築される住宅は全て2mの耐雪住宅であろうか?

違う・・・。多くの住宅は2m以上の耐雪住宅ではない。ではなぜ2m未満で建築が可能なのか?

それは構造計算しなくても住宅を建築できる現行の法律にある。そこには「構造計算しない住宅は、仕様規定だけによって建築が可能」なので、設計積雪量を明記または宣言しなくてもよいのである。ではどうのようにして積雪時の安全の確認がなされるのであろう。そう、多くは「感」による設計積雪量とし、それで安全だと思って建てている。

つまり・・・

設計積雪量2m未満の住宅は構造計算していない「感」なのである。もし構造計算していれば、長岡市なら2.5m以上設計積雪量以外の場合には↓のプレート表示義務がある。

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法で決めた垂直積雪量未満で設計を行った住宅は上のプレート表示義務が発生する。構造計算はしているのにこのプレートがなく垂直積雪量未満の時は不法行為となる。

雪の少ない新潟市周辺で建設された家が耐震等級3を取得していても、それをそのまま三条市で建築すると、通常耐震等級は最低の1となる可能性が高いことを再度重ねてお伝えする。

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