筋かいは悪くない。

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最近ある現場の耐力壁検査に伺ったが、そこで業界の当たり前をみた・・・。

いくら木材屋さんが大丈夫と言っても建築士の基準ではNGの筋かい材料。取り変え予定。

話は少し戻るが・・・数年前に起こった熊本の大地震で比較的新しい建物でも大きな被害を受けていることがわかった。現調の初見では、筋かいでつくられた家でその筋かいにおきてはならない損傷で耐力壁が予定どおり機能せず被害に至ったことが報告された。そこで筋かいは駄目、面材耐力壁がよいとの流れが一旦はできたが、一年後の詳細調査結果では筋かいが悪いのではなく施工と材料が原因が多く、更に設置位置(構造設計段階)で問題があったと事実上の初見の訂正だった。

施工者自身が工事中に載る垂木材では材料のNGはほとんどないし。あっても自身ではじく。

この原因中で見落としがちなのが「材料」である。屋根に使う垂木なら大工さん自身がその上に載るので、材料が仮に悪いと施工中に折れて命にも関わることになるため、その材料選定には慎重だが、筋かいは大地震が起きた時のみ力が加わる特殊な部材であり、工事中に自身に直接降りかかる素材では無いので、何故駄目なのかの明確に判断ができない。判断する根拠がないとそれを支給した木材屋さんに強く意見を述べることはし難い。本現場も木材会社が建て主さんのご指定だったので、材料検査は強く言えないようであった。一方工事監理者の私はそんなことは関係なく、規定外の物は規定外と判断するのが業務で、新たな節の無い材料に取り替えをお願いした。

過去どの現場においても(初めての工務店さんは100%)筋かいの材料がオールクリアーだったことはなかった事がない。このような材料問題は木造業界の特に無垢木材の品質の闇の部分だと思う。そもそも現在は構造材のほとんどが「乾燥材」であるが、つい25年前は「未乾燥材」が80%使われていた。しかし当時からも構造材は乾燥材が原則使用とされていたが、木材業界で乾燥材は「集成材」だけしかほぼなかった。つまりほとんどの木造住宅は未乾燥材でつくっていた(拙宅も未乾燥材で105mmの柱が乾燥した現在は99mmである)。そんなときに阪神淡路大震災がおき、軒並み古い木造住宅が倒壊。その原因の一つに未乾燥材も上がっていた。その数年後その地震を教訓に品確法(2000年施行)ができ、未乾燥材が名実ともにNGとなり乾燥材の流れがここ15年くらいでようやくできた(「緑の家」が26年前から集成材が標準なのは集成材しか乾燥材がなかったためである)。筋かいもその構造材の一つだが、未だに節が欠点になることで座屈がおき折損することを想像できていない(当然欠点となる節がないことが法で規定されている)。これはその倒壊した現場(筋かいの座屈折損)をみていないからだとおもうが、見なくとも想像する訓練をうけているのが作り手の施工者だし設計者であるはずだ。つまり筋かいが悪いのではなく「人」が悪いし「人」とは個人ではなくその業界を指す。

さて・・・巷でも筋かいを使っている現場は多いと思うが、このように筋かいの材料が悪くて取り替えたという話は聞こえてこないが、これはたまたまあり得ない確率で私だけがババをひいているのだろうか・・・。

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