毎年恒例の建築学会の論文梗概集で気になった論文を紹介する。最初は床下冷房に関する事である。
この分野では第一人者である本間先生(F.A.)と林先生の発表される論文。そして興味深い「床下冷房時のカビの危険性」である。いつもありがたい研究を発表して頂き本当に感謝している。
ある東北の保育所に設置された床下冷房を行う床下の浮遊真菌量の実測である。床下の構造は一般的な住宅の床下と違い、スラブの上にウレタンを吹き付けてあること。また夏期の夜間の冷房は次のグラフから行っていないか、サーモスタットによりコンプレッサーが停止しているようである。
上の実測結果のとおり、夏期のエアコン設置場所に近い床下の吹き出し口付近はRH(相対湿度)95%を超えていてかろうじて結露はしていないが、夜間でもRH(相対湿度)は80%を常時超えている。一般的に考えてこの状態が1ヶ月続けば、抗真菌剤でも塗布していない限り、木材に付着したカビは胞子から発芽して菌糸を成長させるだろう・・・と私は思う。しかも吹き出し口なのでそれ以前の床下内部のRH(相対湿度)が気になるがその測定はない。
この論文の目的は「床下の浮遊真菌量の実測からの評価」であるため結論は下の通りである。
真菌量は夏期および冬期共に当該時期の外気より低く、その点では安心できる。しかしいつも申し上げているとおりこの建物のまだ新築後5年しか経過しておらず、私の推測が正しければ木材共に天然由来の抗菌成分がまだ残っているので爆発的な真菌類の増殖はないと思われるが、10年以降抗菌成分が消滅しはじめ同時に埃などが床下に蓄積したときに不安があると想像する。また保育所は夜間人がおらず冷房がストップでき、連続した高湿時間は一日の半分であるが、住宅の場合は夏期の夜間も冷房を行うことになるので、更に厳しい状況になると思われることからやはり床下冷房は危険性が多い。これは床下冷房に限らず、冷気を貯めてしまう構造の空調方式では必ず起こりうる問題である。冷気は建物にとって「毒」となるので早期拡散し、冷たくなる部位をできる限り造らない事が原則と私は思っている。
コメント
換気マニア様
まず最初にコメントをこちらに勝手に移しました。
さてこの論文によるとこの建物は保育所であり、園庭を普段からよく利用するため外部開口部が開けっ放しになっていることがよくあるそうです。よって冷房効率が輻射主体であれば効率がよいだろうと考えて床下冷房を採用されたとのことです。尚、冷房機器の床下隠蔽の理由はありませんでした。
何で無理矢理床下に納めないといけないのでしょうか。
空調室を設置すれば過度に冷たい空気を床下に送らずに済むと思うのですが。
狭いのが原因なのか日本人の性分なのか、どちらでしょうか。