日経ホームビルダー2019年3月号から その3
構造 スキップフロアー

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日経ホームビルダー2019年3月号では屋根の劣化の特集以外に木造の構造に関する特集もあった。その中で何か取り上げている「スキップフロアー構造の難しさ」を案内する。

まずスキップスロアーのおさらい。

図のように2階の床高さが大きく異なる建物がスキップフロアーとよばれ、住宅の場合は車庫上に居室があるときの見られるスタイル。

上図は9年前に設計した「緑の家」であるが、半階ずつ違う高さの手本のようなスキップフロアーだった。車庫は地面と同じ高さに床があり、その上に2階を造ると一般部分の2階より1000mm以上低く造ることができる。このため縦方向の変化を楽しみたい又は用途がある人には、良い設計手法である。

しかし・・・

スキップフロアーの構造計画は格段に難しい・・・。

この「緑の家」の場合も、用途が中2階を必要とする事だったので構造計算を3パターン行いその安全性を確認した。当時基礎まで含めた自動構造計算ソフトはなかったので、基礎構造などは手計算で3度行いその時間は通常の家の2~3倍となった。

最近はスキップフロアーに対応した構造計算ソフトもあるので構造計算は比較的容易になったが、基本設計時における構造計画は特に簡単になるはずも無く、耐力壁の配置が制約される事で間取りの自由性は失われるため、ここ8年は計画する事がない。今後もよほどメリットが無ければスキップフロアーは避けると思われる。それほどその間取りにはスキルがいる。但し構造計算しない人は今も安易にスキップフロアーを計画するだろうが・・・安全性は?である。

さて本題になるが、日経ホームビルダー2019年3月号では木造構造の第一人者である佐藤さんがその解説を行っている。安全性の確認の方法は国のマニュアルにあるが何故床に大きな段差ができると急に耐震性の確保が難しいかについては記載がないが、佐藤さんの説明には明確な記載がある。人は理由がわからないと疎かになるので一般の人向けに簡単に理由を説明する。

一般的に耐震性は耐力壁で担保している事まではイメージできるはずで、この耐力壁の高さ方向が大きく違うと問題が起きる。

下の図で同じ耐力の輪ゴム2本を想像してほしい。

A、B共に耐力は同じで1kgまで破断はしないが、Aは1kgの力で1cmに伸びるがBは1kgの力で2cmでAの2倍に伸び、変形の特性が違う。

両方合わせてで2kgまで耐えられる輪ゴムであるが、この2本を束ね2kgの重りを下げた場合2kgには耐えられず1kgを超えると破断する・・・

現象としてはAが先に破断してBも破断することになる。

下図のように2kgの重りをぶら下げると

同時に変形がおこり・・・Aが破断し、

続いてBも破断する。

これは当たり前だがAが1cmに伸びたときに破断しない限界に達するがBはまだ伸びきっていないのでBが1kgをささえることはできない。このためAが更に伸びようとするがAは1cm以上のびると破断する。Aが破断するとBに2kgの力がかかるのでこちらも破断する。
建物も同じであり地震力に対し、耐力壁が均等に変形をおこすようにしないと輪ゴムのように破断する。スキップフロアーになると耐力壁の高さ方向が大きく変わるのでこの変形に対する耐力が変わり問題がおこる。また均一に水平力が伝達できないことも大きな問題となる。

実務上からみて国の基準書である「木造許容応力度設計」に添ってお伝えすると・・・

一般的に流通する梁せいが390mmなので床の段差が360mmを超えるとスキップフロアーの構造計画が適用されると考えている。床面の高さの違う場合は、それぞれの床の区画でその安全性を構造計算によって確保し、更に全体でも安全性を確認する。それぞれの区画で安全性を確認する場合は、その境界となる耐力壁を重複して計算する事が出来ず、所属する区画ごとに分ける。ここが難しく、この境界付近に耐力壁を多く配置しないと安全性が担保できない。耐震等級1レベルではたいしたことないが、耐震等級2からはその計画にスキルが必要となる。

実はこれは平面にも同じ事がいえる。仕組みは違うがこの平面形で基本設計時に注意しないと構造計算を3パターンする事になる。これは次回に。

実は平面が複雑な形状であるとスキップフロアー同様に構造計画は難しく、構造計算も3パターン行う必要がある。

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