定説を覆す。土縁はむしろ夏のためでは・・・。その2

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江戸時代の浮世絵(『あつまけんしみたて五節句』部分 三代歌川豊国 画)

江戸の気候とネットで探していたら上の浮世絵が見つかった。

この浮世絵には手動型扇風機が描いてあり、よく見ると屋外につながる部分は描がかれていない。

普通構図から考えると縁側が見えていた方が夏らしいのにそれを書かないのは・・・。

つまり戸が閉まっているのでは・・・それは、

外風(通風)を期待していない=間戸を積極的にあけていない

かも?風による気化熱冷却はこのような扇風機があればとりあえずOK。

と思わせる絵である(妄想かも?実際はわからないし、雨戸を閉めた時の暗さはどうするか?)。江戸時代の夏は今より冷夏と言われるが、それでもこの着物の重ね着は夏らしくもない・・・。

さて・・・「土縁は冬のためよりむしろ夏の為」ではと思ったのは旧笹川邸を観察した時である。

この土縁は下の間取りでいうと青の部分である。

方位から考えてこちらは冬の雨風があたり難い南を主とした土縁である。

一方赤い部分の縁側は土縁と土庇はない。こちらは逆に北西を向いており冬期に雨風が最もあたる部分。普通に縁側があるだけで土縁でない赤色の部分は下の写真。

赤色の縁側。北西に面するので冬期はこちらに雨風があたる。よって雨戸下部は板張りで上部が障子貼り。

であるから・・・下の説明による辻褄が全くあわない。

このように有りのまま素直に見ると、本当に土縁は冬期の雪によって紙障子が傷むことを防止していただけとは到底思え無い。

所が・・・

今回浅間の提言「土縁はむしろ夏の為」としてみてみると・・・どんぴしゃあてはまるのである。

赤色の縁側は、北西なので青色の東南に比べ夏でも日射は入り難く暑くなる要素はすくない。これは「て・こあ」で実測済み。

一方東南側でも土縁でない所がある。

しかしその場所はお殿様がお見えになったときにつかう間で有るため、真夏に暑かろうが、普段季節の良いときのことを優先させることは当たり前である。真夏の一番暑い時にお殿様がいらっしゃる事はまず無いと思われるし、幾ら涼しくても雨戸を閉めておくわけにも行かないだろう。来賓部分は居住部分ではないので他の優先事項となる。

ではその土縁の効果は・・・

先ずは土縁で無い方・・・は、

下の土縁をもつ空間との温度分布に注目されていたい。こちらは間戸が閉まっている空間で床は木であり、床が一番暑くなる。(新母屋南西廊下部分 ↓のピンクゾーンにある廊下)

1~3まで27℃~28℃。この空間は戸が閉まっているから冷却効果が少し効いている。

続いて土縁のあるほうは・・・

こちらは間戸全開であり床は土(地面)と木の床の混在。多少日が入っても土の床が一番温度が低くなる。庭も同様に土は低い温度分布である(上図青色の矢印の土縁持つ廊下)。

戸が全開であるため概ね26℃・・・と1℃低い。

えったった一度?旧笹川邸の見学者用の設えなので、ありのままのこれがこの日の実測結果である。間戸が開いていれば外気に同調するのであまり土縁の気温は下がらないが一度低ければ予想どおり。

しかしその直ぐ隣にある床下を測ると・・・

24度くらいの地面温度。外気にさらされているがそれより土の温度冷却能力が高いらしい。

これは間戸を閉じて使えば数度下がる事を感じさせる。

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「て・こあ」も土縁があることに気づいた。今まで玄関だとばかり思っていたが、これは間違いなく玄関と土縁の融合した空間・・・。その土縁で7月30日のフェーン現象で外気39度になった時の温度は・・・

玄関と一体となった土縁。真南に向いているので7月下旬から8月は強い日差しが入るのを簾で遮蔽中。冬期は雪が特に吹き込む方向ではないのにコンクリート床の土縁がある。

「て・こあ」の土縁はコンクリートになっているので・・・

土縁の床が土でなくとも床の温度が一番低くなる。日射は簾で遮蔽されているが床部分には直射日光が一番多くあたる。

外気が37から39度の時間に、床面が32度で大凡外気を表すガラス面が37度、断熱材のない天井が37度である。

一方土縁の紙障子一枚隔てた内部は・・・

床面が31から32度、紙障子面が34度となっており、土縁が南側の熱気を防いでいることがわかる。コンクリート床の土縁でも結構な遮熱効果がある。

真夏で猛暑日ほど土縁の効果が表われる・・・。土縁はやはり夏の為でもある・・・ではないだろうか?

どうですか?建築関係者(設計者)ならワクワクするでしょう。

これは定説に追加されるはず・・・。

土縁は・・・
猛暑日は無論、真夏日でも間戸を閉める事で家に冷たい場所を作り、家内の温度上昇を防ぐ効果が有るので、新潟県の「裕福な建物」では土縁を積極的に計画した。

・・・と。

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