今後もリノベ(古い建物補修)は要注意か?

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近年は、様々な情報が簡単に入るためその情報を厳選すればそれはまるで自身で体験したことのように想像できる。今回はこの令和6年能登半島地震でも様々な情報が発信されている。今回気になったのが下のリンク・・・

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02706/011800051/?n_cid=nbpnxt_mled_km

この建物は国の重要文化財であるし、且つ2007年の能登半島地震(当地は震度6強)では半壊して2011年に耐震補強して一般公開がされている市の建物である。その建築物が容易に倒壊した。

市の耐震改修方針を認めた国の重要文化財である建築物の倒壊は、多分木造の構造関係者特にとって驚きではない。耐震改修の目指した目標値が低かっただけである(一部しか補強をできなかったのでそんなものである)。どこまで耐震補強されたのか観覧者への明示があったのだろうか。現法の耐震基準を満たすとか、その1.25倍以上とか・・・多分無いと思う。少なくとも私が今までみた建物文化財は、そのような明示を見たことがない。

住宅の安易なリフォームやリノベーションに対し<br />・・・その2 既存不適格建築
このブログを読んでいらっしゃる方は、「緑の家」ではリフォーム・リノベーションがないと思われるだろう。 そう・・・そのと...

もう何度も何度も「緑の家」のブログ内で安易なリノベやリフォームは危険とさんざんお伝えしている。それが想定どおり実証されただけである。それなのに巷はこれからは「リノベやリフォームが中心だ」なんて推進している団体もある。それ自体は悪くないが・・・

私たち建築士が現法律で耐震等級2以上の評価を構造計算で取得するためにはアンカーボルト一本からの計算を行っている。当然そのアンカーボルトの根拠になる基礎も(ある程度)構造計算をする。また柱の根元(柱脚)についても一本一本計算してその接合部が壊れないこと一つずつ確認する。リノベやリフォームでそんなことは出来ない。当たり前である。基礎なんて作るまでに配筋検査を最低2度現地で行い、それでもおかしな箇所があれば直してからコンクリートを打ち込むのに、過去に作られた建物のその確認を誰が保証してくれるのだろうか。多分そこには触れないでいるのが実態である。また今回の地震で明らかになったとおり、建物の基礎の前に地盤である。現在の新築住宅では地盤が健全かどうか完璧では無いにせよスクリューウエイト試験で、まさに建物直下の地盤強度を確認するが、既存の建物があったならどうやって建物直下の地盤調査をおこなうのだろうか?簡単だ・・・建物直下の地盤調査は行っていないのである。行おうとしたら建物を曳家で一回動かして調査後に再び曳家で戻す・・・。そんなコストをかけてリノベーションなんて出来ないと思っているから建てる側は地盤のことは触れずに上物だけ耐震補強することになる。しかしその建てる側は、新築なら地盤調査が必須で、それがあってこその上物があると理解して日常業務を行っているが、リノベやリフォームになるとそれにはほっかむり・・・これを本当に耐震補強と呼んでよいのだろうか・・・。耐震補強と言えば一般の人が聞いたら本当に耐震補強で建物が倒壊しなくなると思い込んでしまう。だからこそ「うそ」はつかないで、最低でも「地盤と基礎の事は保証できませんが、上物だけ強く出来ます」と先に伝えなければならない。しかし建築士から見たらそれは建物が強くなったと言わない。建物の一部だけが補強されたバランスが取れない建物と言うことになる。

またTVに出演する建築関連の研究者も無責任なことを発信する。ついこの間、輪島市で7階建て建物が倒壊した原因は、上物がほとんど原型をとどめていることと、足下から沈みこんで転んだように倒れているので、「液状化が原因」と言っていた。まだ原因調査も行われていないが、少なくとも一般的な液状化が原因だと思えない。建物自体はその会社のHPよると、新耐震基準の前の築51年の建物(1972年)である。つまり概ね震度5強(現在では概ね震度6)まで倒壊しない基準のころの建物である。しかし今回の地震は震度6強であり、倒壊してもやむ得ないほどの古い建物の基準であったし、このくらいの建物で当時は多分PC杭かRC杭(現場打)で少なくとも10m以上まで支持層に届くように杭を作っている。液状化の層を悠々超えないと支持できるはずもない。その一方で中間部分で杭が損傷して折れて(せん断破壊)支持できなくなった可能性もあるが、根拠が無ければまだ調査前なのでTV等での公の発信は控えるべきである。

では・・・浅間は何でもかんでも新築にしろ!と言いたいのかと言われそうだが、そこも前から伝えるとおり、一戸建て住宅なら現法に満たない耐震補強でリノベ、リフォームを行ってやむないが、必ず正しい耐震情報(現法に合致か否)をオーナーにお伝えすることである。一方実は私にはある想いがありそれは・・・

「誰もが出入りできる建物でとりわけ公が管理している建物は、重要文化建造物であっても入館者(利用者)にわかるようにその耐震性の明示が必要。できれば同意も表明できるシステムであるとよい」

である。日本は地震国でどこでも地震がおきることはほとんどの人が周知している。近年国は防災拠点(学校、公民館、体育館など)となる建造物の耐震化を進めており、現在は97%がその耐震化を終えている。一方防災拠点でない公共建築物で現法不適合の建物は未だ多くある。多分冒頭の建物はこれにあたる。

再び断るが、私は公共が管理する全ての建築物を耐震性の高い建築物にすることは必要ないと思う。しかしその耐震性能は広く明示されるべきだと考えている。例えば上で紹介した重要文化材の建築物では今回の能登半島地震が元日で閉館時だったからよかったものの、もし集団観光で拝観していたら大変な惨事になっていた。 

日本文化は良いところが大変多いが、時には時代にそぐわないことがあり、例えば「災害時の責任は曖昧でよい」と言う部分は少し改善する必要がある。それが公共建物耐震性の非明示から積極的明示義務化である。 明示だけでよく全てを高耐震化する必要は無い。

仮に、仮にであるが・・・「この建物は現法の耐震基準を満たしてないが文化的価値があるので、それらにご納得頂ければ拝観ができます」   

と表記があっても私なら奈良の東大寺(公共ではないがわかりやすい事例として)なら拝観させて頂く。その一方小学校の修学旅行で奈良の東大寺建物内に入る場合、やはりそのことを理解した保護者の同意が必要だと思う。そんな平等な情報チャンスを与えてほしいと願う。(子供は安全だと思って入るし東大寺なら自身で責任をとれる大人になってからでも遅くは無いし、その方が発見が多いかもしれない)。

このようにすれば自ずから耐震基準は上がるはずであるし、納得の上で災害に巻き込まれるほうがまだよい。                                      

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