COVID-19とダクト換気セミナー

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
タイムリーなセミナーである。

オーブルデザインでのCOVID-19へのスタンスは、この7月28日のブログでお伝えしたとおり、指定感染症の取りやめかランクダウン(緩和)である。COVID-19がもたらした日常生活への影響はこれからが本番。経済と自由な活動停滞で多くの人に影響を及ぼすと考えている。一方このCOVID-19で少し改善した事は、様々なセミナーや講演会が事務所でタイムリーに視聴可能なことであり、上のセミナーも視聴できた事。

様々な最新の知見を得るには主に東京に行かないと今までは得ることが出来なかったが、それらは今ほとんどがWeb公開又は動画配信されている。遠方で二の足を踏んでいた講演やセミナーも拝聴が可能になり大変ありがたい。

「行くことに躊躇する程度なら本当に必要ではないのでは?」

とのご意見もあろう。しかし人の思考はある些細なきっかけがトリガーとなることもあり、そのトリガーが何なのか自分ではわからない。私が32年前に高気密高断熱住宅を造り始めたきっかけは期待していなかったセミナーへの参加からであった。そのセミナーを聞いて「これからこの技術で家を造ることが大衆の家である」と確信した場面を今でも思いだせる。

分岐点のタイミングは些細なことがきっかけでありそのため、少しでも引っかかる事を感じられればやはりそこに参加したいのでこのリモート化はありがたいの一言である。

さて・・・そのセミナーであるが、ダクト換気では国内で一番知見が多い北海道の主催であり、本州ではこのダクト換気において一般的には5~10年ほど経験が遅れていると考えられる。

今回のセミナーは題名のとおり、住宅のダクト式24時間換気システムの設計と施工である。冒頭福島先生が「数年前、既存住宅のダクト式換気システムがキチッとメンテナンスできておらず衝撃を受けダクト換気システム全般に疑問をもった」との発言から始まり、それでも今このセミナーが行われることはやはり北海道では熱交換換気をしたいのでダクト式換気システムは必要だろう・・・と私は受け止めた。

北海道という気候では、冬期マイナス10度は普通にあるが、この空気が法律で定められた30坪の換気量である概ね120m3/hも入って来たときに、どんなに不快になるかは想像出来る。仮に温度差換気分0.1回分を引いて100m3/hでも同様で、100m3/hの空気は相当冷たい。常にエアコンが冷房弱で動いていると思えばよいだろう。しかも問題はその温度がマイナス10度であるため下に沈み込みが早く、足下冷気になりやすい。実は「緑の家」で熱交換換気を全棟に採用したのは6年前であり、超高断熱仕様にしてからすでに4年経た時である。全棟採用の前には熱交換なしの第一種換気を併用していた。気積(空間)が大きいリビングや寝室付属のクロークがあれば熱交換なしを使い、個室のようなスペースが小さい所は熱交換有りとした。理由は至って簡単で、個室で熱交換無しで25m3/hの空気が入ってくると、足下が冷たくなるのである。ベットの上なら顔が冷たい・・・。これは実際このような超高断熱住宅の快適さに触れないとわからないだろう。24時間どこでも22度の拙宅でも枕元に給気口があるだけで真冬は顔が冷たく感じる。しかも拙宅は第三種換気なのでこの給気口から入る空気は少なめの15m3/hくらいでも感じる。

「緑の家」のオーナーさんからも住んで少ししてからご意見を伺うと同様であったため全室熱交換有りの換気システムに変更したのが6年前である。

セミナーの講師が

「家が寒いとクレームになるが、換気が機能しておらず空気質が悪くとも一切クレームにならない。これが換気設計・施工の緩さを物語っている。」

確かにそのとおりである。結露が起こった段階で初めて換気していない事に気づく。それまでは一切空気質が悪くとも問題ないとのこと。

ただ・・・セミナーでは汚れているダクトの写真があったが、これがどの部分のダクトかは説明がない。ダクトには多少汚れて良い場所がありそれは下の通りである。

「う」の汚れてほしくない場所のダクトをファイバースコープで内部をみた写真が下の写真(「緑の家」の5年目)。

SA口からファイバースコープを入れて写真をとる。
5年経過したノーメンテナンスのフレキシブル断熱ダクト内の写真まだ埃はない。黒い粒子は断熱材の研究で明らかになったものと同じ空気中のPM粒子らしい。

さて・・・

このセミナーのポイントは、次の1から6のとおりであり見出し以外は私の実例を申し上げたものである。

1.完成したら給気量を必ずチェックしなさい。

どんな状況でも風量チェックは必要。設計風量があって初めて完了検査も終わる。

ダクト換気扇は風量測定が必須である。出来れば第三種換気の給気量も測定したい。そもそもどのくらい給気量が必要か知らない設計者もいるのではないだろうか。

2.本体メンテナンスを考える事は必須

本体はこんな広々した所に設置してあるのでメンテナンスが簡単。

床下収納内に換気扇本体があるとメンテナンスが最も良好。騒音も機器の取り替え時も全く困らない理想的な場所。しかし2階建てになるとダクトが長くなるのでそれ相応の工夫が必要になる。

3.ダクトもメンテナンスができるように配慮

ダクトが交換できるように配慮された「緑の家」

上の写真はある「緑の家」の換気扇ダクトである。オーナーさんがダクト交換が簡単にできるようにとご要望があり、SAに使うダクトは取り外しができるように扉をつけたり床に蓋を付けたりしている。

4.ダクト径は100Φ以上を使用しないとメンテナンス、風量調整が不可

一般部分はスパイラルダクトで曲がり部分に機械音を吸音させるために使ったフレキシブル断熱ダクト。

ダクトの径は100Φ以上が基本。掃除するにもその回数も100Φなら安心できる。50Φや75Φは少し汚れがつくだけで圧力損失が急激に増え、それを掃除するための回数も増える。

5.ダクトはスパイラルが最もよいがフレキシブルがNGではない

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: DSCF1275.jpg

このことが今回一番の収穫である。最近の風潮はダクトはビルのダクトと同じ堅牢で抵抗のすくないスパイラルダクトで行うことが良いと言われる。それには異論がないが、住宅のような小さく無駄の少ない建物に対してスパイラルダクトで行う事は現実的ではないと常日頃から思っていた。それをこのセミナーではずばっと言ってくれた。理想には近づけたいがそのため多大なコストがかかるなら割り切りも必要である。

6.フレキシブルダクトは将来の取り替えが簡単なら実用的なダクトである。

断熱フレキシブルダクトのほとんどが消音ダクトも兼ねている。このためどんなにスパイラルダクトだけで施工可能でも、1から2mくらいを断熱フレキシブルダクトにすると風切り音とモーター音が劇的に軽減され、ほぼ無音の空調になる。

まさしく・・・「緑の家」はその実践状態である。

ダクト取り替えの易さはコストとの兼ね合いなのでそこはバランスで決めたい。

まずは風量測定をきっちり行う事がダクト換気の第一歩だろう。

ところで・・・

パネルディスカッションでコーディナーターが

「全館空調(冷房)には反対。24時間つけっぱなしが前提であり、夏期にはカビが生え大変なことになるので、個別冷房で良いと思うが反論があればどうぞ」

と言われたので思わず

「はい」

と手を上げたくなったが、今回のZOOMは挙手機能がないようなので無理だった。

仕方ないだろう。このセミナーは北海道で開催されている会なので、主に北海道の家のことだと想像できる。しかしWeb配信が今後もあると誤解を招くことになる。少なくとも今朝の温度分布をみれば一目瞭然である。地域によって環境は大きく変わることは誰も否定しないので、現在の気候では東北以南ではエアコン冷房が必要になる。

北海道だけ別の低い気温と言うことがわかる。これなら夜間は窓を開ければ眠れる。

日中はある程度気温が高くても我慢できるが、夜中は無理。
熱帯夜が数日間続くと多くの人は体調を崩すことになる。しかも熱帯夜がある時は日中の温度もあがるので家のエアコンは24時間利用するのが新潟以南の過ごし方である・・・かな。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする