約束よりずいぶん遅れたが、毎年恒例の建築学会学術講演梗概集から興味がある論文を取り上げたいと思う。最初は「緑の家」が大量に使う無垢材の見え方についてである。
自然光下では朝晩の太陽光は赤みが強く、日中は真っ白に見えることは周知のとおり。上の事務所の写真でも朝日を浴びているときには白い壁もオレンジ色に見える。また無垢材もその光源で見え方が変わるが、室内灯がLEDになった今、その演出性と色温度の種類が無垢材にたいしてどの程度影響ががあるかの実験を行った論文である。このような人が感じる印象は、数値化されにくく評価する人によって左右されると思うが、今回の評価者は今後将来家を建てる確率が高い大学生であるので、参考にしてよいと思う。掲載の図は全て冒頭のPDFからの切り取りである。
実験した無垢材は比較的メジャーな材種であり、チェリー、ホワイトオーク、ホウ、ヒノキ、ウォルナット、コルク、スギである。このうち「緑の家」がよく使うヒノキとスギ、そしてホワイトオークとコルクがあるのはありがたい。
評価は5種あり、上図の表1にあるとおり。Q3の好ましいとQ5の高級感の評価は最も個人差が大きく曖昧なるがそれでも参考になる。
結果は下の通り。
Q1の杢目がはっきり見えるかどうかであるが、いずれの樹種でも色温度※があがると評価は高い。面白いのは高演色より普通のほうが評価がわずかによいか変わらないこと。Q2の再現性が高い(自然光と同じ感じに見える)ではまず高演色と普通で評価が変わる。高演色では色温度が5000Kと比較的真っ白系で評価が最も高い。一方普通演色LINE型照明では3000Kと5000Kで評価が高いが、スポットライト型照明では4000Kの評価が最も高い。そして問題のQ3の好ましいかどうかでは、樹種によって評価がバラバラになる。例えばLINE型高演色照明ではスギ、ヒノキでは4000Kで最も高く同じLINE型でも普通ではヒノキは3000Kから5000Kで評価が高い。これだけの範囲で評価が高いことは他の樹種では見られない。Q3はやはり感情的な要素がはいり樹種によってバラツキが大きい。しかしいずれの評価でも「ホウ」の木は色温度が低いと評価が著しく低くなる。この論文ではホウの色味は白色系の灰色が混じったような色。このため赤系が強くでる低い色温度より白っぽく見える高い色温度の評価がよいとされている。
※色温度で裸電球は概ね2700K付近で、それから白っぽくになるにつれて色温度は上がり、白っぽい蛍光灯等は5000K付近となる。「緑の家」では3000KのLEDを多用する事が多い。
こう見ると「緑の家」の定番ヒノキはLINE型の3000Kから5000Kまで幅広く好印象が得られる。日本人が最も愛する樹種の一つであり流石である。またスギはスポット型の照明器具で且つ演色性にかかわらず3000Kから5000Kまでよい評価である。さらに実験方法では小さな木片を使っているため、実際の広い面積を覆う床材に使用する場合では、最も照明の色温度に左右されにくい無難な樹種といえる。またウォルナットもスギよりわずかに劣るが安定したよい評価となっている。一方ホウは色温度が5000K以上では評価が突出して高い不思議さがあり、椅子など家具では人気の高いホワイトオークは意外と評価が全体的に低い。
最後に図10は色温度の全体の評価であるが、4000K~5000Kの色温度が評価がよいし、高演色の光は赤みのR9の波長が強くでていることで、赤みを強調するとのこと。
論文原本ではもっと詳しい記載があるので、ご興味ある方は全文を読まれるとよい。全文をご希望の方は学会から収録DVDを購入するか、私宛にメイルを頂ければお送りする。