今回の能登半島地震で震度6弱5強の新潟市の西区、中央区で液状化現象がおきた。これは20年前の中越地震での長岡市で起きた液状化と同じである。
2ヶ月前に書いたブログで「建築士が考える耐震性」のテーマで3つ書いているがその最初のブログのこの部分で、「地震に強い家を造るにはまずは地盤の良いところにつきる・・・」としているが、今回もそのような事が如実に表われた。
このブログで何度も申し上げているとおり、旧新潟市の7割以上は海抜面3m以下になる低地で(海抜面下もある)その昔は湿地帯であった。明治以降干拓を進め、信濃川に短絡路となる大河津分水、関屋分水を完成させ現在の新潟市繁栄の礎となっている。このおかげで50年間致命傷となるような大洪水はおきていない。しかし60年前に起きた新潟地震では初めて「液状化現象」が認知され、性能表示が始った25年前から住宅でも対策を施している。今回も液状化の起きた「緑の家」では地盤改良(柱状改良)を行っているため建物本体に大きな影響はなさそうであり(精密調査は1月中に行う予定)、壊れたのは20年前の中越地震と同様に外構に限定されそうだ。実はこの外構部分のみ被害時に地震保険に入っていると残念なこと首を傾ける変なことになるのである。下のある地震保険のQ&Aをご覧頂きたい。
当然普通に考えれば地震保険で給排水管や外構の保険がでると考えがちだが、上の地震保険の説明では、
「建物の主要構造部に被害がない時の外構の部分(給排水を含む)は保険の対象とならない」
とある。つまり液状化が発生しても建物本体は地盤改良等によって正常に保たれる可能性が高く、建物が傾いていないで正常な場合、被害が建物外の外構(給排水設備も含む)の場合は保険対象とはならないのである。※「緑の家」では液状化が起こりそうな場所(≒地盤がわるいところ)では全て地盤改良を行っており、このため液状化が起きても建物本体は問題ない(中越、中越沖地震の実績において)。このため高額な地震保険をかけ仮に外構だけに被害が出た場合は保険金は受け取れない。よって日頃から「地震保険は必須ではなくよく考えてご加入ください」と申し上げている。
※既に加入されている方は保険会社に確認された方が良い。
道路との接続に影響が無い場合、多分被害の額は30万円~50万(10万は砂利復旧)だと思うが、地震保険に入っていても受け取れない可能性が高い。
では・・・
この外構の液状化に対する対策はないか?との疑問がおこると思うが、現在のところ戸建て外構専用の液状化対策の方法はほとんど聞かない。但しもしそれでも対策をしてほしいとなれば、配管を含む外構の表層改良(地面から1.3m以内の土に改良材を入れ固める方法や砕石層を厚くして排水しやすい地面に置き換える)で効果はあると思うが、この方法は市街地で個別に対処するには難しいし、庭木も限定される。つまり地面の下1.3mから0.3mまでが堅い土に置き換わるので樹木が育たないようになる。また市街地では近隣と隣接するため、建物周囲の600mm程度を1.5mも掘ったときに近隣の地面に影響を及ぼし、最悪近隣の家が傾く原因になる。よって分譲地開発の時に団地一斉で行うか、少し広い土地の真ん中に建てて、掘削をしたときに近隣に影響が出ないようにするほかない。そこまで経費をかけて対策するより、数十年に一度大きな地震が来たときに修繕した方が安価になる場合が多いので、積極的な対策はないのだろうと考えている。消防署や病院、避難施設、その駐車場等では災害時の拠点となるので、コストをかけても外構の液状化対策は必要だろうと考えるが、一戸建て専用住宅で必要かといえばこれは建て主さんの判断になる。
また蛇足であるが、自身の家や土地だけ液状化対策で無傷であったとしても、その周囲は液状化が起き、下水道の本管が使用不可となり、結局は家のトイレや風呂も使えなくなるとしたら、その家での生活はもはや難しい。
とどのつまり・・・液状化対策はまず土地を選ぶことが第一でありそこに必ず戻る(2004年から申し上げている)。土地が良ければ近隣周囲もよくその周辺では液状化の災害はなく下水道や断水も心配が少ない事になる。そこで新潟市内が住宅の建設地として悪いかといえば、液状化対策ばかりが住宅建設地の選定条件ではない。様々な自身の価値判断で決めているはずなので、優先順位の問題となるだけである。
当ブログ内で液状の話題を書いた記事は多数有るのでご興味があれば下に検索した内容をおく。
コメント
KDR様
ありがとうございます。修正しました。
新潟市西区、中央区は震度5強でした(念の為)